第4話 白花のアイデア
なんてことをしたんだ。
一時間目の現国の授業中、ポーカーフェイスで何事もないかのように教師の説明を聞くフリをしているが、頭の中で悩ましく頭を抱えながら苦悩する。。
今朝のことである。黒蜜さんの家に食材を持って突撃した私は、素早くキッチンを掃除し、手軽な朝ごはんを用意したのだった。
特にこれといって仲のいい相手ではないのにだ。
…。
気でも触れていたのだろう。
昨日、黒蜜さんと対面した時、きっと私は密かにショックを受けていたのだろう。
正確に言えば期待を裏切られた…とでもいえばいいのだろうか。勝手に期待している分、私が悪いのだろうけど、それでもそう感じたのだ。あれだ、好きな芸能人が不倫していたり、捕まってしまったときと似たような…いや、違うか。
とにかく、そういう感情を密かに抱いたのだ。
私の中で彼女は完璧な優等生だと思っていた。だが昨日の黒蜜さんは完璧な人間とは程遠い人間だった。ヤンキーみたいだった。それがショックだった。
どん底に落ちるような人ではないと思っていた。
言ってしまえば、完璧超人。人間とは思えない精密な機械のような、そういう人間を超越した天使のような存在だと私は認識していた。
そのことに気付いたのも昨日のことだ。
あの汚部屋。そして体のあざ。ヤンキーのような容姿。
なにもかもが私の思い描いていた黒蜜さんとは正反対だった。
昨日はそのまま、彼女に何があったのか突き止めるようなことはしなかった。それは本人が話したくなった時に聞くのが正解だと思ったからだ。
ただ正直その後、私は悶々としながら一夜を明かした。
彼女に何があったのか。いや、親とのトラブルなのだろう。
だが、あの汚部屋といい容姿といい、私の知っている黒蜜さんではなかった。
あれは一体どういうことか。自暴自棄なのだろうか。
あんな完璧な人でもああいうことになるのだろうか。
いや、むしろそういう完璧な人ほどなるのだろうか。
気になって気になって仕方がなかった。
なぜそうなったのか…謎を解明したかった。推理の謎を解き明かしたくなるようなそういうものに近いのかもしれない。彼女の謎を解明したかった。
不純な動機だと思われてもいい。私は謎を謎のままにはしたくなかった。
満足に寝ることも出来ずに早めの朝食をとろうとしたときだった。
ふと思った。
黒蜜さんは朝ごはんを食べているのだろうか。
私の思い描く完璧超人の黒蜜さんは、おしゃれな朝食を用意しているイメージが湧くが昨日の黒蜜さんは朝食をとるどころか昼まで寝てそうなのが容易に想像できた。
…。
本人が話したくなった時まで待つ。
それまで謎は解けない。
それはいつだろう。
いつわかる?
いつまで待てばいい?
私はトーストをオーブンに入れかけて動きを止める。
待つ必要はないのでは…。
そう、私が聞くのではなく黒蜜さんが話せるような状態にすればいいのでは。
そうすれば私が突き止める必要もなくなるし、そもそもそういう風に仕向けることを誰も咎めはしないだろう。
ただ、黒蜜さんを強制するのはよろしくない。
これは…いいアイデアなのでは…。
ふと湧いたアイデアを目の前に私は冷静になる。
…。
なんでそんなことをしなくてはいけないんだ?
一瞬の考えを冷静な私が諭す。
だが、私はその疑問に明確な答えを持っていた。
――――黒蜜さんと仲良くなりたい。
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