第18話 ミレイユサイド
ミレイユと二人の男が立っており、王様はわなわなと手に持った書類を読んでいる。
「お呼びでしょうか、王様」
「これをみろ……ポーションの効果が弱いと報告があがった」
「どういうことですか? 私どもの作った薬の効果は間違いないはずですが」
「だがこうして大量のクレームがきておる、これはいったいどういうことだ!!」
王様が書類を叩きつけると白金師団の男は書類を拾い目を通した。
「こ、これは……? おいお前、以前薬を作っていたといったな」
「は、はい!」
「我々が作ったポーションの効果は間違いなかったはずだ、なぜこんな報告があがっている」
「それが……私たちもまったくわからないのです」
ミレイユは男に詰め寄る。
「わからないだと? お前たちはリッツと共に薬の製造に関わっていたはずだろう」
「え、えぇ……ですが、薬の大半はリッツが製作しておりまして……」
「なんだと? これまでの仕事は全部リッツにやらせていたというのか!?」
ミレイユが声を荒げると男は悲鳴をあげたが、白金師団の男はそれを聞き一歩前へ出る。
「王様、あの男が関わっているというのなら話は変わります」
「どういうことだ?」
「お考え下さい、なぜあの男が関わった薬だけが異様な効果を出していたのか……もしかすると、一時的に効果をあげる薬を混ぜていた可能性がございます。そしてそんな都合のいいものには総じて――毒がある」
「貴様ッ!?」
詰め寄ったミレイユを王様は制止した。
「…………まったく、先代も厄介事を残していってくれたものだ。ミレイユ、お主は小隊を率いて先方の手助けをしてこい」
「……それはつまり、我らに関わりのない戦地へ赴けと?」
「弟子の不始末くらい片付けるのが師であるお主の責任であろう?」
「わかりました……我ら『紅蓮の風』は、その任を最後に契約を終わらせてもらいます」
「ふん、勝手にするがよい」
◇
「――というわけだ、もしここに残りたい者がいれば私は止めん。自分の意志で決めろ」
ミレイユに視線が集まり、一人の騎士が前に出てくる。
「団長が出ていくなら俺たちだってここにはもう用はねぇ。それに、リッツを探すのが先決だ」
「その通り! あのクソ爺にはうんざりしてたとこだしな!」
笑い声が響くとミレイユは騎士たちにお辞儀をした。
「全員、リッツが残してくれた薬は持っていけ。これから先、何が起こるかわからないからな」
「そういえば団長、この任務が終わったらどこに向かうおつもりで?」
「さぁな……リッツがいそうな場所を手当たり次第探すしかないだろう。それに、どこから出たのかわからんが……エリクサーが不老不死などという馬鹿げた出元を探る必要もある」
「だったら一つ提案なんですが、最近近くの国で聖人だか聖女だかが現れたって情報が入りましてね。あのリッツのことだ、物珍しさで見に行ってるかもしれないと思いまして」
「ふむ……人が集まれば何か情報も得られるかもしれないな。よし、とっととこのバカげた任務を終わらせて向かうぞ」
これを最後に、この国からリッツの薬は消えることとなった。
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