25.印刷と読み方

 お久しぶりです。少し新しい活動や学校生活などいろいろ忙しかったもので、一度完結させましたが、学校の課題活動で面白い文献を読んだのでまたここに少し書いていこうと思います。

 今回のテーマはまさにタイトルを読んで字の如く。印刷についてです。

 これは少し歴史的な話につながるので、遡って説明していきます。


 この印刷のお話は十字軍遠征まで遡ります。「十字軍と印刷になんの関係があるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。これは同時に解決してみましょう。

 十字軍はローマ教会が勢力圏を広げるイスラムに対抗するため(と言う名目で)突然メッカを目指して侵攻します。この時にめちゃめちゃ酷い略奪もありましたがそれは割愛。メッカは読書家には説明不要でしょうか?キリスト教、イスラム教、ユダヤ教にとって大切な聖地です。

 十字軍が略奪をしたと言う点と、十字軍が結果的に目的を達成できず失敗したと言う点が印刷に大きな影響を与えます。


 歴史の流れをおさらいしましょう。みなさんルネサンスはご存知ですか?知らない人の方が少ないですよね。かのレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロなど、今もなお人気を誇る芸術家を輩出した時代です。

 ではなぜ突然芸術家の活躍が目立つようになったのか、と言う理由がこの十字軍遠征にありました。

 ルネサンスとはフランス語で「再生・復活・復興」を意味する単語です。この意味を理解すれば、「なんらかの理由で失われたものがルネサンス期に復活した」と言うのがざっくりわかるでしょう。


 では十字軍に話を戻しましょう。十字軍は11回も遠征を行った結果、メッカの共同統治権を手に入れました。「11回も遠征したのにこれだけなの?」はい、これだけです。

 ローマ・カトリックが意気込んで「さあ同胞を助けに行こう!新天地で活躍しよう!」と軍を編成した結果がこれです(しかもカトリックは軍を持っていないので神聖ローマ帝国とフランス、イギリスが兵を出してました)。これには「俺たちも新しい土地でチャレンジして富豪になってウハウハ」を期待していた人たちもがっかりでしょう。

 結果はわかりますね?ローマ・カトリックの持っていた宗教的な権威が地に落ちます。


 「なんでカトリックの力が弱くなるとルネサンスになるの?」という疑問をここから解消していきましょう。

 カトリックが権威を振るっていた時代、教会に置かれる宗教画、人物画、風景画といった順番で芸術の序列が決まっていたそうです。しかもカトリックは裸婦などの絵を厳しく規制し、芸術の発展をある意味妨げていました。

 これが十字軍によって権威が弱まり、規制が緩くなった結果、様々な分野で宗教的に規制されていたことができるようになります。

 そこに、十字軍が略奪してきたものが持ち込まれたのです。一度世界地図を読んで欲しいのですが、ギリシャはトルコとかなり近い位置にあります。そのため、ギリシャでの文献や芸術品をイスラムが保管していたのです。


 「イスラム教ってかなり排他的な宗教だと思ってた」という方は、おそらく近代でのテロ組織の活動がそういった印象を持たせているかもしれません。実はユダヤ、キリスト、イスラムの順番で宗教は誕生しているのです。

 聖地メッカが三つの宗教にとって重要な立ち位置であることからある程度わかるかと思いますが、実は三つの宗教が崇拝する神は同じ神なのです。ユダヤはソロモン以前の時代から、キリストは大体西暦から、そしてイスラムは8世紀ごろに誕生しています。

 イスラム教を開いたのはムハンマドという商人で、神の声を聞き、文字の書ける人間に経典をまとめてもらい、コーランができたといいます。

 まず商人であるため、流行のものや新しいものといったものには柔軟です。そのため、イスラム教は早い段階で開腹手術ができたほど。

 イスラム教は自分たちの教義にそぐわないものであっても、技術を受け入れて取り込む活動をしていました。そのため、キリスト教が破壊した技術、文化をイスラム教がある意味保護していたのです。


 イスラム教が持っていた財産を十字軍が略奪して持ち帰ったものが、当時の芸術家たちに火をつけました。新しい題材が目の前にあり、そして教会からの規制はない。時間と予算さえあれば芸術家たちが手を出すのも無理はない。

 十字軍遠征の勝利者は商人と技術者、そして芸術家だったのでしょう。


 では印刷に話を戻しましょう。活版印刷はご存知ですか?鉛で作ったハンコ状の活字を並べ(組版)、インクをつけて文章を印刷する技術のことです。これが大きく発展したのも、ルネサンス期でありました。

 活版印刷の大元の起源は朝鮮であるといいます。しかし活字と漢字は相性が悪く、漢字使用圏ではあまり発展しませんでした。そこからシルクロードで技術がヨーロッパに持ち込まれたとも言われています。

 さて、印刷の話に戻りましょう。みなさんすぐお隣の国が国を挙げてSNSの規制をしていますし、一昔前の日本でもあったことなので印刷物の規制や検閲はわかるでしょう。

 これが十字軍遠征の失敗によって宗教的検閲がなくなります。これには印刷業界もウハウハ。教会好みの本ではなく、大衆好みの本を印刷して利益を得られるからです。

 ルネサンス前の印刷というのはおおよそ印刷と呼べるものではなく、本の文章は人間が手作業で書いてました。ええ、手書き文字です。

 その手描き文字から形態化した特徴を捉えて誕生したのが書体です。まあこのお話を語ると長くなるので「こんな感じでフォントってできたんだ〜」程度でいいです。

 そして、メフメト2世の活躍にしてコンスタンティノス11世の敗北、すなわち東ローマ帝国の滅亡によって、ギリシャの学者達がヴェネチアに流れ込んできました。

 このヴェネチアにかつて存在した「アルダス工房」が印刷業界を牽引していきます。

 アルダス工房の創始者、アルダス・マヌティウスは人文主義者であり、ギリシャ哲学に造詣が深い人物でした。そして、ヴェネチアは商人の国。宗教的な理由で自分たちの利益を損いたくない商人達は元々政教分離をしていたのもあり、ルネサンスに入ると爆発的に印刷で活躍していきます。


 これがルネサンス三大発明の一つ、「印刷」の幕開けなのです。




参考文献

欧文百科書体「イタリア・ルネサンスの活字__オールド・ローマンの成立」

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