20.同人誌みたいな逸話ってあるんだよ【9】

 今回は前回も書いた通り「廃帝」について話していきましょう。中国史は4000年の歴史がありますから、たまには人間としても為政者としても終わりすぎている人間がいるものです。


〈正直酒に酔っててもそんなことしねえよ〉

 中国史に出てくる偉人達はそのほとんどがおくりなという称号を後世の人間がつけています。そのため、本名と通っている名称が違うことも多々あり……

 この諡という風習は、生前の活躍や逸話によって名付けられます。しかし。この中で特に異例、一つの王朝に一人出るか出ないかという諡が「廃帝」です。

 「廃帝」は読んで字の如くとしか説明しようがありませんが、当時の人間も後世の人間も「テメーの名前なんぞ残してたまるか」と総意で皇帝であったことを抹消されるレベルの皇帝を指します。

 その美しさから蘭陵武王の諡を賜った高長恭こうちょうきょうがいる北斉の王朝も廃帝が出ています。

 廃帝の名前は平家物語にも連なっており、平家物語の終盤に「秦の趙高、漢の王莽……」と引き合いに出されるほど。

 調べてもいいですが人間的に終わりすぎているので自己責任でお願いしますね。

 さて、廃帝の話題を出してしまったのは私ですから私も紹介した方がいいですよね……誰が一番このアカウントに無害だろうか……

うーん、まあ蘭陵武王と同じ王朝から来てもらおっか……あの一族酒入るとみんな碌でなしなんだよなぁ……


 蘭陵武王のいとこにあたるところに、高殷こういんという男がいました。もちろん、ここで紹介しているので諡は廃帝です。

 ですがこの男は正直被害者側です。この皇帝の父である文宣帝がある日、高殷を呼び出し、その手で囚人を斬るように言い、それができなかった高殷は拒絶したため壮絶な虐待を受けたそう。そのせいで精神障害と吃音を患いました。

 この父親、めちゃめちゃやばいやつで、囚人達に細い竹で編んだ蓆を与えて、三十五丈(約八十四㍍)の高台から生死を賭けたダイブをさせたリアル鳥人間コンテストを開催したらしく。

 囚人達に放った言葉が「跳ばなければ、この場で殺す。首尾よく着地できれば刑を免じて死ぬまで朕が面倒を見てやる」

 もちろんみんなヤケクソで飛びます。生き残ったのはごくわずかですが、その生き残りをあろうことが牢獄に閉じ込めて餓死させました。いや、死ぬまで面倒を見るとは言ったけどさぁ……見てるけどさぁ……

 しかもなんちゃって鳥人間コンテスト眺めながらケラケラ笑っているという、人間として終わりすぎてて「今時創作でもなかなかいねえよ」という強キャラです。息子がグレても親は文句言えねぇよ。


 いかがでしたか?この世のものとは思えない鬼畜の所業です。(というかこれはごく一部なのでこの人の行いだけでもまだまだあります)中国史は結構時代の最先端どころか数世紀先を行ってることもあるので、調べるだけでもかなり面白いですよ。

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