17.「懐かしい」とは何か

 同人誌みたいな英雄の逸話シリーズを一旦休憩し、今回は民俗学の根幹的なお話に入ります。これまで民俗学がどうこう語っていた割に民俗学が一体どういうものなのかというのを語っていませんでしたね。


 まず民俗学とは

・民間伝承の調査を通して、主として一般庶民の生活・文化の発展の歴史を研究する学問。英国に起こり、日本では柳田国男・折口信夫により体系づけられた。


 これだけでは「何?」となる方もいるので、ざっくり要約すると、

「これまで失われたもの、これから失われていく伝承を調査し、これまでどうやって民俗が培われてきたのかを研究する学問」なのです。


 これは人間の生活に溶け込んで可視化が難しい問題もありますが、ここは一つ読者の皆様に「なるほど確かにそれはそうかもしれない」と思えるような例題を挙げましょう。


 日本人がほぼ反射的に「懐かしい」「懐かしむべきもの」と思えるものの中に、「茅葺き屋根の囲炉裏がある家」があるでしょう。

 吹き曝しで優れた暖房はなく、囲炉裏に吊り下げた鍋で汁物を作る光景はどこか郷愁を感じることでしょう。かなり近代でも現役で残っていた建築様式でもあります。

 では読者の皆様に聞きます。この「茅葺き屋根の囲炉裏がある家」で育った方はいらっしゃいますか?一度でもそういった家で生活していた方は?

 おそらくかなり高齢な方か、特殊な環境の方しかいないでしょう。日本人が郷愁を感じるのは、幼い頃に聞かされてきた童話や伝承が影響しているのではないでしょうか。


 この郷愁は数世代もすればなくなってしまうかもしれません。ですが民俗学は失われゆくものを惜しむ学問ではなく、また復古させようという学問でもありません。

 その感覚が失われゆくことも、その過程全てが民俗学の研究対象なのです。


 やたらと民俗学やら歴史学やらを詳しく語りますが、私自身は普段はデザインの世界に引きこもっている人間です。昔は学者の道も志しておりましたが、色々あってこうして趣味程度にここで楽しく色々やっている状態です。そんな人も実は多かったりするのではないでしょうか?

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