第6話 そして二人の時間

 ベッドで抱き合う慈代やすよ恵人けいと


 そのとき、インターホンが鳴った。


「だれ?」


あずささんじゃない」


 慌てて服を着る二人。恵人がドアの方に急ぐ。恵人がドアを開けるより先に、あずさがドアを開けて入ってきた。


「遅くなってごめん」


「いえ……」


 部屋を覗き込むあずさ


 慌ててTシャツを着る慈代の姿が見えた。恵人が慌てて今日のことを梓に伝える。


良太りょうた優香ゆうかさんは来られなくなって……慈代さんと僕だけなんです」


 ベッドのそばに落ちていた下着を慌てて隠す慈代。


 梓は部屋の中の二人の様子を見て状況を理解した。


「あ、そう……そうなんだ。ごめんね。なんか二人のところ邪魔したみたいで……」


「いえ、だって、今日は梓さんの……」


 取り繕う恵人。

 下を向いて梓の顔を見ることができない慈代。


「いいの、いいの、私、誕生日祝ってくれる人いるから……タイミング悪くして。ごめん恵人君。私、今まで言えてなかったけど、付き合ってる人いるの……」

 梓も動揺が隠せない。


「ごめんね。二人のところを邪魔して……タクシー待たせてるから。帰るね」


 急いで走って行った。道行くタクシーを拾い、帰って行くのが見えた。


 下を向いたまま、顔を赤らめる慈代。

「完全に気付かれちゃったね。私たちがそういうことしてたって……」


 頷く恵人。

「でも、いいんです……なんか。梓さん最初から僕に気がないのわかってたし……慈代さんが僕を思ってくれてることも……わかったし……慈代さん綺麗だし……慈代さんのことす……」


 慈代が恵人の言葉を遮るように、もう一度やさしく唇を合わせてきた。やさしく唇を離し悪戯っぽい表情で恵人を睨むようにして言う。


「じゃあ、なんで、今まで梓さんだったのよ」


「ごめんなさい。なんか、慈代さんって……とても……本当に、とても手の届かない人に思えたから……」


 慈代は少し考えるようにして……


「……今は手が届きそう?」


頷うなずく恵人。


「じゃあ、ドア……きちんと鍵して……私がどんな気持ちで、梓さんの相談に乗ってあげてたか……」


「ごめんなさい……」


「うそよ。それは、それで楽しかったよ。でも、これからは、本当に私だけ好きでいてね」


 頷うなずく恵人。


 微笑み合う二人……

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