第5話 子羊たちは眠らない

「ねえ、別のDVD見ようか?」

「うん」


 DVDをセットしてベッドに二人で並んで座る。恵人けいと慈代やすよのいい香りが気になる。

 慈代は恵人に身体をくっつけるように近づいた。そして頭を恵人の肩に乗せるようにしてつぶやく。


あずささん……ずっと来なければいいのに……」


「え?」


「そうじゃない?」


「……」


「恵人君はそうじゃないの? 梓さんに来て欲しい?」


 慈代は恵人の顔を覗き込むように見つめ、スッと顔を近づけ唇を合わせた。


 恵人の鼓動が聞こえてくるようだった。

 慈代は唇を合わせたまま、恵人に身体を預けるように両腕を恵人の首の後ろに回した。


 うつろな目線で、恵人を見つめる


「梓さんの方がいい?」


 恵人が首を振る。


 そのまま二人はベッドの上に横になった


「私……梓さんより恵人君のこと大切に思ってると思うよ」


 恵人も慈代を抱きしめ、そして、もう一度唇を合わせる。


「慈代さん……」


「『さん』はいいよ」


「一つしか違わないんだよ……二人の時は、慈代ちゃん……」


「慈代ちゃん……」


 恵人の口から、言いたい言葉が出ない。


 慈代が優しく言う。


「いいよ……したいことして……いいよ」


 二人は身体を合わせ愛し合った。

 慈代も恵人も初めてだった……

 慈代は恵人を受け入れ、目を閉じた……

 二人は一つになり……

 恵人は慈代に愛をそそいだ……

 やわらかく温かい

 まどろみのなかで

 そのまま二人は抱き合った……


「恵人君……もう梓さんって言わないでね。私の方が、梓さんより恵人君を幸せにしてあげられるんだから……」


 うなずく恵人の小指を取って、


「約束」


 そう言って微笑んだ。

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