第4話 二人だけの誕生日パーティー

 誕生日パーティーの日は慈代やすよ、恵人の同級生の良太りょうた、そして、慈代の同級生の優香ゆうかが来ることになっていた。


 当日、お昼ごろに慈代は恵人の部屋に行った。慈代もお菓子と果物を買って持って行った。

 少しして良太から「急用ができて行けなくなった」という電話が掛かってきた。

 優香からも「具合が悪くなって行けない」という連絡がきた。

 なんだか本当に来れなくなったのか、変な気を遣っているのかわからない感じだった。

 三時を過ぎた頃、一通り準備ができた。

 慈代は恵人に「何かDVD借りて来ない?」と言う。まだまだ時間はあったし、時間が潰せるものが欲しいところだった。

 近所にレンタルショップがあったので一緒に行って話題の映画のDVDを二、三本借りてきた。

 お菓子を食べながら二人で見る。


 恵人にとって、これまで、いろいろ相談に乗ってもらっていた慈代は、ただの先輩という感じではなかった。

 二人でベッドの上に座って映画を見る。映画のクライマックスのシーンで主人公とヒロインの女性がキスをする。

 そのシーンを見ながら、お互い何かそわそわするのを感じた。


 恵人にとって慈代は、あずさが卒業した今、同じ演劇部の中で一番好きな先輩女子だった。

 しかも、何かと気に掛け優しくしてくれる年上の女性だ。


 ふと時計を見ると五時過ぎだった。

 梓から電話がかかってきた。

「ごめん。恵人。残業になって……本当にごめん。ちょっと遅くなりそう」

「いいですよ」

「ごめんね。また、連絡するね」


 慈代は会話の内容を理解できた。

「遅くなりそうなんだ」

「うん」

「でも仕事じゃ、仕方ないね」


 二人の間に少しの沈黙が流れた。


「ねえ、恵人君。ちょっとシャワー借りてもいい?」


「え? あ、どうぞ」


「ごめんね。今日はみんなで泊まっていく予定だったから……あ、私、泊まっていってもいいんだよね」


「いいですよ。全然」


「よかった」


「シャワー借りるね」

 バスルームに向かう慈代。


「バスタオル借りていい?」


「どうぞ」


 慈代はタオルと自分の持ってきた袋を持ってバスルームに行く。

 緊張する恵人。バスルームの音が気になる。

 しばらくして慈代が出てきた。


「ありがとう」


「恵人君もどうぞ。恵人君の部屋だけど……」

 微笑む慈代がかわいらしく、色っぽかった。


 恵人もシャワーを浴びる。ついさっきまで慈代が使っていたバスルーム。心臓がドキドキしている。


 バスルームから出てくると慈代が果物を剝むいていた。

「一緒に食べよう。梓さん遅くなりそうだし」


 二人で果物を食べる。特別な時間だった。

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