第78話 転生者集結
俺はエリクの自室にいる。
「エリク、お前……侯爵子息だったのか」
「なんだ、知らなかったのか?」
「同じくらいの身分かと。生意気な口を聞いて申し訳ありませんでした」
エリクに謝罪すると鼻で笑われた。
「王子に対して生意気な口叩いてる奴が、僕に対して敬意払うとかないだろ。アホか」
「それもそうだな」
「で、そんな慌ててどうしたんだ?」
フィオナの発言から転生者がもう一人いるかもしれない事をエリクに話した。すると、エリクが少し考えて言った。
「ありえるな。僕も情報収集して疑問に感じた点がいくつか出てきた。アルノルドが言うには学園に入学する三ヶ月くらい前からアリスの様子が変だと思ったらしい」
「変?」
「性格が少し違うようだ。普通の人じゃ気付かないくらいのレベルらしいが、アルノルドはアリス一筋だからな。後はたまに意味の分からない言葉を呟くとか」
「意味が分からないとは……?」
「それはアルノルドが知らない言葉だから覚えていなかった。でも、仮にアリスが転生者ならわざわざ心の中に入らなくても元に戻るかもしれんな」
エリクの言葉に何故だろうと首を傾げた。
「アリスはアリスであってアリスではない。しかも前世の記憶を思い出した日もまだ浅い。アリスの能力を封じ込めるための精神干渉だが、アリスは能力に対して思い入れはさほどないだろ。前世の記憶を突つけば正気に戻る可能性が高い」
「なるほど。奥が深いんだな」
「でもどうやってアリスに接触するかだが……。冬休み中はクリステルが高頻度でアリスの元を訪れるらしい」
「見つかったら絶対警戒されてアリスを隔離しかねないな」
「それなら良い考えがある」
突然背後から声が聞こえて驚いた。振り返るとそこにはアレンがいた。
「え、アレン様、いつから?」
「『侯爵子息だったのか』ってとこかな」
え、それって初めから……。だからエリクは俺と二人きりなのに標準語だったのか。
エリクの方を見ると呆れた顔をされた。焦っている俺にアレンが顎クイしながら言ってきた。
「何度言えば分かるんだ? フィオナの許可はもらったみたいだが、俺の許可を取り忘れていたぞ。お仕置きが必要かな」
アレンは笑っているが目が笑っていない。俺も闇魔法で吊し上げられて、誘拐犯達の言うえげつない拷問とやらを受けるのだろうか。俺は涙目になってアレンに懇願した。
「痛いのは嫌です」
「優しくしてやるから安心しろ」
エリクが誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
「お前、それ
◇◇◇◇
数日後、アレンの部屋にて。
エリクがソファに座りながら俺に言った。
「いきなり、前世の記憶があるのかって聞くなよ。警戒されて話さなくなる可能性があるからな」
「そうなのか?」
「そのまま聞く気だったのか……。僕が探りを入れるからクライヴは普通の会話をしてくれ」
「了解」
俺とエリクはアレンの部屋でアリスと接触する予定になっている――。
クリステルは頻回にアリスの元を訪れている為、アリスの屋敷に直接行ってクリステルにバレたら警戒される。そこで、アレンが提案した。
『クリステルの誕生日パーティーを狙え』
王城ではクリステルの誕生日パーティーが開かれる。様々な貴族やらお偉いさん達が一堂に会し、盛大に開かれることになっている為、クリステルはアリスと接触することが出来ない。
その隙をついてアリスをアレンの部屋に連れてきて話をする事になっている。他の部屋でも良いのではと思ったが、アレンが防音やら人払いやら様々な魔法を自室に付与しているため、この部屋が一番安全らしい。
連れて来るのはアレンの仕事だ。転移でパッと連れて来るようだ。闇魔法って便利だなと、つくづく思う。
――という訳で、今現在、大広間では誕生日パーティーが開かれ、俺とエリクはアリス待ちだ。
ぼーっと待っていると、突然アレンとアリスが現れた。
「待たせたな。アリスを連れて来たぞ」
「アレン様、ありがとうございます」
「上手くやれよ」
俺がアレンにお礼を言うと、アレンはすぐさま消えた。一応アレンも王族、パーティーは長時間抜けられない。
アリスがどういう状況なのか判断できず、オロオロしている。そんなアリスに俺は言った。
「こうやって話すのも久しぶりだな」
「えっと……アークライト先輩? どうして私この部屋に?」
「体育祭の時の謝罪もしたかったし、色々とな。迷惑だよな」
「いえ……正直驚いてますが、大丈夫です」
それから何気ない会話を続けていく内に、アリスにも笑顔が時折見えるようになってきた。そして、エリクが爆弾を投入した。
「やっぱりこの国は顔の良い人が多いよな。攻略対象なんてキラキラしてて見るだけで目が痛くなる」
「そうなんですよ。初めてアルノルドに会った時なんて……え?」
さすがエリク。自然過ぎる。そして続けてエリクが聞いた。
「やはりな。日本か? それとも別の国?」
「日本です」
アリスが混乱しながら続けて言った。
「え、でもフィオナが転生者で、悪役令嬢回避する為に、あれ? まさかフィオナじゃなくて……」
「俺だ」
「じゃあ分かってて、義妹のフィオナとラブラブに……」
その軽蔑した目はやめてくれ。アリスといい、エリクといい、前世の記憶を持っている人は義妹と恋仲になることに偏見を持ちすぎだと思う。追い討ちをかけるようにエリクは言った。
「ちなみに、アレンルートとステファンルートにも入ってる」
「うそ、アレンはヤバいわよ」
アリスもゲームをしっかりやっていたようだ。しかし……。
「アレンは違うって。俺は男だ。絶対違うから」
「はいはい。そんなことよりアリス、今から言うことよう聞きや――」
必死に否定する俺をよそに、エリクがアリスに全てを話しはじめた。これで、アリスが元に戻れば聖女の力が復活する。久しぶりに神様、仏様、女神様に祈りながらエリクの話を一緒に聞いた。
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