ダンジョン攻略
「なんだ、ここは?」
クルトは階段から下の様子をうかがう。
ただ暗くてあまりよく見えない。
「どうみても隠し階段だね」
ユナがはっきりという。
――もしかするとこれが何もない場所で調べると現れるという階段なのだろうか?
本当に何もない場所から当然現れたのだから驚いても仕方ない。
ただ、見つかってしまった以上調べないと、もしダンジョン等であった場合、魔物たちが地上にあふれかえるスタンピートが起こりかねない。
でもクルトの戦力は……。
爆弾聖女。
木の棒勇者。
農業聖女。
弱小貴族。
どう考えても隠しダンジョンに挑むパーティーではない。
入った瞬間に返り討ちにされるのが目に浮かぶ。
ただ、見なかったことにもできない。
そうなると金を使い、冒険者等を呼び寄せてダンジョン攻略に当たってもらうのだが、これもすごく金がかかる。
財政がマイナスである今のアントナー領にそれだけの余裕はない。
運が良ければダンジョン産の素材などで一攫千金が狙えるのだが、それができるのはほんの一握り。
討伐証明の魔物の素材なんて大半が粗大ごみ行である。
防衛費と割り切るしかない。
でも金が……。
クルトは頭を悩ませ、そこでイルマが先ほど使った臭い付き爆発薬に目をつける。
「……イルマ」
「ど、どうしたの? ま、まさかこんなところでボクの体を求めるつもり? ボクには研究という彼氏がいて……」
「さっきの薬、余ってないか? あと、量産してくれるとうれしい」
クルトの言葉を聞き、イルマは彼が何をしようとしているのか一瞬で把握する。
「それならなるべく奥へと送りこめた方がいいね。入り口は……、蓋はするけど出入りできた方が都合はよさそう」
「な、何の話?」
イルマと違い、ユナは事情が把握できずに困惑したままきょろきょろあたりを見ていた。
「こういうことだ」
クルトは受け取った爆発薬を階段の奥へと放り投げる。
そして爆発音が聞こえると同時にイルマが階段に蓋のような大岩をおいていた。
「錬金術ではないけど、この程度は余裕だね」
「むしろそっちの方が才能があるんじゃないか?」
一応初級しか使えないながらもイルマはほぼすべての属性魔法を使うことができる。
ただ、錬金術に関してだけとことん才能がないだけなのだ。
それなのに彼女は錬金術師になりたがっているというなんとも皮肉の聞いた話である。
「えっと、さっきの爆発する薬……だよね? なんでダンジョンで爆発させたの? それにダンジョンに蓋までして……」
「まぁ数日後には結果がわかるから楽しみにしておいてくれ」
首をかしげるユナ。
この作戦がうまくいってくれるといいのだけど。
そう願いながら今日のところはこの場から離れることとなった。
◇◇◇
数日後。
あれからクルトは毎日、階段の下にイルマ特製の臭い付き爆弾を投げ込んでいた。
最近では蓋を外すだけで中からとてつもない臭気が漂ってくる。
それはとてもじゃないが、人の住める場所ではないし、鼻に敏感な魔物ほど被害は甚大であろう。
「こんな中、どうやって調べるの? とてもじゃないけど、長時間いられないよ?」
「あぁ、そうだな。そしてそれは魔物も同じだろ?」
「あっ……」
「見つけたばかりの隠しダンジョンに人がいるとは思えない。つまり、これは一切被害を出さずにダンジョン攻略をする最適な方法だ」
「な、なるほど……」
ただ、この方法にも問題はある。
本当にこの臭いで中にいる魔物たちを倒せているのか……。
もしかすると別のところにもつながっており、そこから臭いが逃げてしまっている、なんてことも考えられる。
さらに臭いを嗅がない、それこそゴーレム系の魔物やアンデッドなんかが生息しているダンジョンだと今やっていることは全くの無意味ということになる。
それを確かめるためには実際にダンジョンへ入るしかないのだが、今臭いが充満してしまった状態だと俺たちも入ることができない。
結局は臭いがなくなるまで様子をうかがうしかないのだが……。
「今日の分だよ」
ドゴォォォォォォン!!
イルマが面白がって花の水やりのように、毎朝ダンジョンへ爆発薬投げを続けていたのだ。
臭いはなくなるどころか前よりもひどく充満していた。
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