第1話 すべて解決
オレは特別な存在なんだ!
なのに、どうして世間はそれを認めてくれない。
今日だってそうだ。コピーもとれない派遣OLに「だったら残業してくれ」と頼めばあっさり断られ、課長からは理不尽な理由で
スマホの時計を見る。
23時29分だった。
未読1件。
「ん? なんのメールだ?」
独り言のようにつぶやき、メールを開く。
『先ほどはすみませんでした。もうすぐ仕事が終わりますので、プライベートでお会いしませんか? 深夜0時に野呂神社の本殿前でお待ちしています。えみりん』
これって、店外ならOKってことだよな。
それも野外プレイ。
思っていた通りのエロい女だったようだ。オレも大金取られたわけだし、しゃーねー行ってやるか。
※※※
偶然だが、この神社には最近
20段ほどの階段を上り、立派な三ツ
歩きながら考える。
深夜の神社ってのは、不気味だな。
木々が
薄気味悪い。
オレはいつしか速足になっていた。
ようやく本殿が見えてきた。
さらに近づく。
ん? えみりんじゃない。
なぜか、巫女の衣装をまとった女が立っていた。巫女がオレの存在に気づくと、大きく手を広げ
状況がまったくつかめない。
それでもオレはこの巫女から、目が離せなくなっていた。彼女は
黒髪ロングの姫カット。切れ長の目、すっと筋の通った
そして、幽霊のような蒼白い肌。
「さてここで問題です。あなたはどうしてここに呼ばれたのでしょうか?」
「なんだお前! 上から目線で
オレは巫女を指差した。
「なんとも失礼なかたですね~。なんでも相談箱に投函したのでは?」
見られていたのか? 使えない部下の口車に乗せられて、ここに一緒にきたときのことだ――課長の悪口を
でも、今はこの
なんたって――野外プレイという未知の体験ができるのだから。
「いやらしい。えみりんさんと会って、なにをしようと考えているのですか?」
「お、お前、どうしてそのことを……」
巫女は怪しく微笑む。
すると、本殿の扉が「ギィーー」と音を立てゆっくりと開いた。
中に3人いる。
しかも、オレの知ってる奴ばかり。
派遣OLの
風俗嬢のえみりん。
ラーメン屋店長の
どうやらオレはこいつらに
ただその理由がわからん。
それに、なんの仮装かわからんが、全員狐の尻尾を付けている。
「なんなんだお前たち? 変な仮装までして」
「これは仮装ではありませんよ! 六角商事係長の鍋島直樹さん」
オレの問いに答えたのは巫女だった。
「おい! オレの個人情報を勝手に
「ここにいるみなさんは、すでにあなたのことを知っているのですから
「そんな
「これだから嫌なのです。低級霊の尻尾なしさん」
そう言って、巫女はゆっくりと近づいてきた。
巫女との距離が詰まるほどに、寒気が増し息苦しくなった。
オレは、
「お前……オレになにをした」
「まだなにも」
巫女は
そして、オレの肩に手を触れた瞬間――オレは後方に吹き飛ばされた。
触れられた肩はおそらく
オレは地面に横たわった状態でうずくまる。
しばらく動きを止め、じっと痛みに耐え続けた。
巫女の足音が段々と大きくなり、こちらに近づいてくるのがわかった。
こ、殺される。
「ご、ごめんなさい。なんでもします。だから命だけはお助けください……」
オレはその場で土下座した。
「正しい判断です。本来なら今の攻撃であなたは死んでいるのですよ。憑依霊の助けがあってこの程度で済んでいることをお忘れなく」
よくわからんが、憑依霊ってのは守護霊みたいなものなのかもしれん。
「いいですか、人間社会と同じで憑依霊にも
巫女の言いたいことがようやく理解できた。
派遣OLの高梨杏には1本、風俗嬢のえみりんには2本、ラーメン屋店長の本庄剛には3本、巫女にはなんと9本の尻尾があった。そしてオレにはその尻尾が1本もない。
「は、はい。もう二度と逆らいません」
「よろしい!」
――オレは無我夢中でその場を立ち去った。
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