18.スパッと決断、そして世に解き放たれた…

 ディグルさんとターセル君からの言葉を受け少し自信を持てた。


「あ、そうだ!ポーションのことをハルト君たちが話しているのを聞いて疑問が湧いたのですが…」

「俺たちが話してたことですか?」

「はい。ハルト君が街にポーションを買いに行くと言ったとき、リサちゃんたちは街に売っていなかったと言いましたよね?」

「はい。森へ行く前に私たちみんなで探しましたが、どこのお店にも売っていませんでした」

「私つい最近、治癒と回復ポーションの材料となる魔草花を商業ギルドにたくさん納品したのですよ。失敗しなければそれぞれ150本は作れる量です。それなのに足りないのが不思議で…やはり冒険者が多いのでその数では少ないのでしょうか?」

「レイさん採取もすげぇんだな…」

「もうあたい驚くの疲れたよ…」

「それはおそらく薬師ギルドのせいね」

「薬師ギルドですか?」


(そういえば薬師ギルドを訪ねたことがないから、どんな人たちなのか知らないな)


「あいつら自分たちがポーション作れるからって偉そうなんすよ」

「いえ、ね?作れるのがすごいのは分かっているのよ?でも彼らはそれを笠に着てやりたい放題なのよ」

「ポーションは冒険者だけじゃなく街の人たちだって使う。安くはないが、それでも何かあったときの為に家に1本は置いとくのが普通だ」

「治癒魔法などではいけないのですか?」

「治癒や回復魔法を使える奴は冒険者になるか教会に所属するのがほとんどだ。で、その教会で金払えば使ってもらえるが馬鹿高いんだ。しかも魔法の使用者によって効果に差が出るから当たり外れがある。貴族なんか金持ってる奴らには腕のいい魔法使いを必ずつけるがな」

「冒険者のなかでも頼めば治療してくれる人はいるわ。ただ、あまりやりすぎると教会に目をつけられちゃうのよ」

「別にやっちゃだめって法律で決まってるわけじゃないのにさ〜」

「目ぇつけられたところで何かされるってことはほとんどないが、できるだけ面倒事は避けたいからな。冒険者意外に治療するときは隠れてやることが多い」

「なるほど。それで皆ポーションを使うのですね」


 まぁ、医療行為がお金になるというのは分かる。

 だけど他人ひとがやることに口出すなよと言いたい。

 顧客が減るのは人を寄せるだけの魅力がないからだと分からないのかな?

 いや、分かっているから邪魔をするのか?

 まぁ、何にせよそういう人たちはどこにでも居るということか…


「そうっす。で、薬師ギルドが調子に乗るってことっす」

「ポーションが足りない理由は冒険者が多いからだと思っていましたが、それだけではないのですね?」

「ああ、あいつら作らねぇんだよ」

「え?」

「あいつらにとっては数が少ねぇ方が都合がいいんだ」

「数が少ないってことは貴重ってことっす。それを作れる俺たちすげぇって言いたいんすよ」

「それにそっちの方が楽だしな」

「たくさんあると価値が下がるでしょう?銀貨1枚で売っていた物を金貨1枚で売るには数を減らすのが効果的なのよ」

「作る数は減るし、お金は入るし、偉そうにできるし?あたい、あいつらほんと大っ嫌い」

「なるほど。そんな姑息な手を使わねば威厳が保てぬのですね?というか周囲からそう思われながら生きるのは私は恥ずかしいですが普通はそうでもないのでしょうかねぇ」


(いかんせんこの世界の普通が分からないからなぁ…)


「…レイさんけっこう言うっすね…」

「では、冒険者や街の方々にポーションが行き渡っていないということですね?」

「ああ、街の人は騎士団や俺たち冒険者に気ぃ遣って買わねぇんだ。値段が高くて手が出せねぇっつうのもあるが」

「俺たちが怪我しただけで今日みたいに心配してくれる人たちです」

「街を守ってくれる人たちに少しでも多く手に取ってもらえるようにって僕たち冒険者や騎士団を優先してくれるんです…」

「それでも騎士団や冒険者にすら数が足りてねぇんだよ」

「今はみんなダンジョンや森に入る回数が減ったわ」

「それに今日の俺たちみたいに怪我を治せない冒険者も増えたんですよ」

「あたしはレイさんのお陰で今ここに居るけど、本当だったら死んでたはずです…」

「冒険者や騎士団が活動を抑えればその分、物が出回らなくなるし森の魔物が増えちゃうわ」

「…!?だから今日クリムボアがあれほど!?」

「あのときは僕たち運が悪かったんだって思ったけど、今考えればそういうことですね…」

「その現状を薬師ギルドの方々は知っているのですよね?」

「ああ、売ってくれって泣いて頼む人すら鼻で笑ってるよ」

「なんですかそれは!??…あ、すみません。つい…」


 今日冒険者ギルドへ行ったとき、やたら怪我をしている人が多いなと思っていた。

 あれが日常だからいちいち治さないのかと思ったけど、どうやら違ったようだ。

 治さないんじゃない、治せないんだ…


 それに街の人たちが気を遣って購入しないだって…?

 普通はそんなことできないだろう。

 誰だって自分や家族が大切だ。

 それは悪いことなんかじゃなく当たり前のことで…それなのに冒険者や騎士団の方々の為に我慢するというのか。

 どうしてそんなことができるのだろう…同じ状況に立ったとき、私にそれができるだろうか…


「そんなことを言ってる暇があるなら薬を作ればいいものを…ふっ…そうでもしないと威厳が保てないんだったか…」

「れ、レイさん?どうしたっすか?」

「いえ、なんでもありません。領主様は動いてくださらないのですか?」

「いや、領主は充分やってくれてるよ。薬師ギルドに頭まで下げて、自ら森へ足を運び魔物と戦ってな」

「それすらあいつらは嘲笑うんすよ」

「領主なのに恥ずかしくないのかって、必死に頭下げてそれでも貴族なのかって」

「はぁ?どこに笑う要素があるというのですか!?民を思い戦う方が恥ずかしいですって!?自分たちの方がよっぽど恥ずかしいではありませんか!!…あ、また、すみません」

「ふっ、俺もそう思うよ。あんなすげぇ領主他にはいねぇ」


(つい熱くなってしまった………ふむ)


「ちなみに薬師ギルドの方々は戦闘の方はお強いのでしょうか?」

「え?レイさん何する気っすか?」

「いえ、私はポーションが手元にたくさんありますのでそれを商業ギルドへ持って行こうと思うのですよ。ちょうどギルドカードを持っていますしね」

「それはみんなめちゃくちゃ助かるっすけど…」

「あいつらが黙ってるわけねぇなぁ」

「ええ、彼らはお金を数えるのが仕事のようですし、収入が鉄貨1枚減っただけで騒ぐと思うのですよ」

「お金を数えるのが…ぷふっ、レイさん言うね〜」

「ふふ。すぐにポーションの出所は分かるでしょう。人を人と思わぬ方々です。収入とわずかな威厳を減らす原因となった私に手を出してくる可能性が高いかと」

「充分ありえるな。そのちっぽけな…ふっ、威厳を守ろうと動くだろうな。それであいつらの戦闘力が気になるんだな?」

「ええ。あ、強いからといってポーションを卸さないということはしませんよ?ハルト君たちに街の案内は頼みましたが、それはどちらかと言えば観光目的。特にこの街にとどまる理由はありませんしね」

「え〜?レイさんどっか行っちゃうの〜?それはあたい嫌だなぁ」

「そっすね。せっかくこうして話せるようになったのに離れるのは寂しいっす」

「ふふ、ありがとうございます。私も寂しいですよ?」

「ぷっ、あんた赤くなってるよ?」

「うっせぇっすよ!?」

「ふふふ、私もレイさんともっとお話したいわ」

「まぁ、あいつらの戦闘力はカスだ。それでも裏で何か手を回すかもしれねぇな」

「ふむ…ちなみに彼らはクリムボアを倒せますか?」

「無理だろうな。つぅか戦ったことねぇんじゃねぇか?」

「それほど弱いのですか?それなのに人々は見下すと?」

「この街に限らず薬師ギルドの人たちはそういう人が多いわ。ただ、この街の薬師ギルドの場合その態度は他の遥か上を行くわね」

「ああ、ここは森やダンジョンで潤う街だからな。ポーションを使う機会が多いんだ」

「それにフォールの街は他の領と接してないから口出ししてくる人が少ないんだよ」

「なるほど。弱い者でも集えば自分たちが強くなったと錯覚しますものね。更に目の上のたんこぶがないとなれば、自分たちが街の支配者だと勘違いしてしまうのも頷けます。だけど戦闘力は低い…知能も低い…ふむ…私に何かしてくる場合は裏から来るしかなさそうですね」

「ぷっ、知能も低いだって!…ぷふっ…きゃはははは!」

「レイさん、さらりと凄いこと言いますね…ぷっ…」


 となると考えられるのは暗殺。

 この身体は毒も麻痺も石化もほとんど効かない─というか、色々やってたら耐性がついた─

 それに意識さえあれば魔法で治せる。

 ちなみに全身麻痺や石化をしても意識はあるのだ。

 飲食物を警戒する必要はないな。


 襲撃に関しては魔力感知があれば背後を取られることはないだろう。

 いや、それをかいくぐれる人がいるかもしれない。

 それならやり方を教えてほしい…いやいや、そういうことではない。

 纏う魔力は常に強化しておいた方がよさそうだ。


 あとは…え?あとは何をすればいいんだ?

 というかやることと言ったら魔力強化だけか。

 まぁ、最悪心臓を一突きされたとしても機能が完全に停止するまでわずかに時間があるので治せる。

 それに転移で逃げることも可能。

 あれ?森でも同じようなこと考えたな…


 私の目的は師匠の友へ届け物をすること。

 それが済めばあとはパテルさんと島でのんびり暮らすのもあり…え?楽しそうだな。

 1,000年を超える寿命を持つ者たちにとって少しばかりの遅れは無いも同然だろう…たぶん。

 そもそも配達人が来ることを知らないしね。


 薬師ギルドに追われても別に困らない。

 あの島は師匠たちが隠したのだ。

 特級ポーションを作れないような人たちには見つけられないだろう。

 というか、最低でも500年は見つからなかった実績がある。

 パテルさんには後から話すことになるのでそれだけが気がかりだが…まぁ、彼にとって薬師ギルドなんて道端の石ころ以下だろう。

 大丈夫そうだな。


「うん。即死でない限り大丈夫そうです」

「…マジっすか?」

「ええ、襲撃だろうと毒物だろうと問題ないです」

「マジっすか…?」

「あんた同じことしか言ってないよ?」

「まぁ、ヴィンスの気持ちは分かるぜ」

「レイさんはすごいわねぇ。でも襲われる心配は少ないと思うわ」

「そうなのですか?」

「ええ。悪い人から精霊は離れていくのでしょう?」 

「確かに精霊の動きで判断は可能ですが、素早い動きで背後を取られるということもあるかと…」

「あの森の奥に数時間で辿り着ける人の背後をとれるかしら?」

「え?それぐらい簡単なのでは?」

「あそこでのんびりできていたということは、もちろん周囲の警戒は充分できていたのでしょう?」

「はい。あのときは2kmほど先までしか警戒していませんでしたが、その範囲内であればどこに人や魔物がいるのか分かっていました」

「「「「「「「「2km…」」」」」」」」


(あ、kmじゃ通じない?)


「kmとは距離の単位でして、だいたいこれくらいが1m。あ、メートルも距離の単位なのですが…」

「いやいやいやいや、何言ってるっすか!?」

「だから言葉は通じてるっつうの!」


(通じてんかーい!さっきから紛らわしいな。私が馬鹿みたいじゃないか!)


「えっと…」

「はぁ…レイさんと話してると驚きすぎて疲れるっす…」

「え?それは申し訳ございません…」


(なんてことだ…こんな非常識な人間と話すなんて疲れるよね…そっか…そうだよね…やはり私には普通の人間は演じられないな…まぁ、できるとは思っていなかったけど…というか普通に無理だよね。うん、諦めよう)


 これはいいきっかけなのかもしれない。


 普通であろうと演じ全てを隠そうとするほどに気力も体力も削られていくだろう。

 それを行ってもどうせすぐに普通でないことはバレる。

 無駄な努力に終わると分かっていることをわざわざする必要はない。

 だったら始めから非常識で少し変わった人間だと認めてしまえばいい。

 それに、例え上手く演じられたとしても精霊が見える時点で世の視線は集まってしまう。


 自分は精霊が見えることを隠すつもりはない─というか隠す以前に既に知られている。

 通常、己の目に映らぬものを信じ続けるのは難しいだろう。

 見えなくともせめてそこに確かに存在していると私を見て分かってもらえれば、人はより精霊を尊び慈しむようになるのではないだろうか。

 それに次の世代に語り継いでくれる人も増えるはずだ。


(どうせならば非常識を逆手に取ろうか…)


 おそらく私は既に皆にとって不思議な存在だろう。

 それが多少非常識だろうと違和感がないどころか妙に納得できるのではないだろうか。

 精霊が見えることについても同様だ。

 変わり者だから見える、見えるから変わり者…

 全て含めて私はそういう人間なんだと思えるのでは?

 相乗効果?とは少し違うか…しっくりくるというか…不思議な方が不自然ではない存在というかなんというか…


 正直街を移り一から全力で普通の人間を演じ切り視線を集めぬ生活を送りたいところだが、精霊の為となるならば頑張ろう。

 カレンさん達の話を聞くに悪感情を向けてくる人は少ないと考えられるのでいくらかマシだ。


 そうなると隠す必要があるものは何だろうか…

 島の存在、魔力操作、転移陣、収納、鑑定、復元魔法…辺りかな?

 後半はなんとなくだ。

 というか自分と他との違いが未だ分からぬままだったな…どれが普通でどれが異常なのか…

 まぁ、大抵のことは“あー、あの人ならできるよねー”でいけるだろう。無理かな?


(パテルさんに聞いても人のことは分からなそうだしなぁ…ま、困ったらそのとき考えよう)

 

 面倒ごとはできるだけ避けたいが、期待はできないだろう。

 むしろそれすら楽しむのもありかな?

 心配事と言えば襲撃や誘拐について。

 まだ人の強さを知らないので自身の戦闘力に関しては不安が残るが、最終的に自爆覚悟の特攻ののち、転移だ。

 転移を使用してもその考えに行き着くより先に精霊が助けたと考えるのが普通だろうからそこの心配はない。

 フォールの森のあそこまで1人で行けるのは凄いようなので弱いということはないだろうけど。


 自分のことや非常識なことをわざわざ声を大にして言うつもりはない。

 そうしなくとも私がどのような存在なのか勝手に判断してくれるだろう。

 寄るもよし、離れるもよし、見るも…よ…し?


(可能であれば変人呼ばわりはしないでほしい。せめて非常識と言ってほしいな…無理か…)




***




《ハルト視点》


 ヴィンスさんがあんなことを言うもんだからレイさんは俯きしょんぼりしてしまった。


「!?違うっすよ!?そういう意味じゃないっすよ!?」

「そういう意味とは?」

「あ…いや……違うっすからね!?」

「何が違うのでしょうか…?私が非常識だから皆さんを疲れさせてしまうのは事実でしょうし…」


 あーあ、レイさんかわいそう。

 確かに非常識だけどさ…


「あー、ヴィンスがレイさんいじめてる〜」

「いじめてないっすけど!?レイさん違うっすよ?ね?」

「では先ほどの言葉はどういう意味なのでしょうか…?」


 その上目遣いは卑怯じゃないかなぁ!?

 はっ!ヴィンスさん!?


「あんたまた鼻血出すんじゃないよ?」

「…い、いま耐えてるっす……」


 頑張れ!耐えるんだ!!


「ヴィンスさん!?また血が出そうなのですか!?大丈夫ですか!?」


 はい、お疲れ様でした。

 そうやってレイさんが顔を寄せるからですよ?


「…ちょっ…近づかないでくださいっす……」

「あ…すみません…つい…」


 あー、その言い方はちょっと今のレイさんには…

 ほらね、うん。震える小動物が出来上がってしまったじゃないか…


「ち、違うっす!血が…そう血がレイさんについちゃうっすから!!」

「そんなこと気にしていたのですか?大丈夫です。血には慣れていますから。それよりご自分を心配なさってください。あ!ポーションいりますか?ちょっと待ってくださいね。えっと…」

「助けてあげた方がいいのかしら?」

「ったく、レイさんポーションは必要ない。ヴィンスは大丈夫だから落ち着け」

「え?ですが…」

「あれは気にするな」

「大丈夫よ。そういう体質なの」

「そうでしたか…鼻血が出やすい方っていますものね。私が治せればいいのですが、体質は変えられませんからね…」


 ヴィンスさんが鼻血出す理由なんで分かんないの!?

 え?自分の顔の良さ自覚してない?なんで!?


「まぁ、なんだ…ああ、森…そう森での話だったか」

「そうね。レイさんは2km圏内にいる人や魔物の気配が分かるのね?」

「はい。だからハルト君たちがこちらに向かって来ているということにも早々に気がついていました」


 マジかよ!?レイさんすごすぎ!


「そうなんですか!?すごいですね!!」

「ふふ、ありがとうございます。ただ、魔物を引きつけているのかそれとも魔物に追われているのかまでは分かりませんでしたので助けるのがギリギリになってしまいました。気がついたときに確認に向かうこともしませんでしたし…すみません」

「僕たちに謝る必要はないですよ!」

「そうそう!分かっても普通はあたしたちを助けないですよ!だから謝らないでください!」

「そうですか…ありがとうございます」


 そうしてふわりと笑うレイさんはかわいかった。

 ヴィンスさん大丈夫かな?ま、もう彼のことは諦めよう。


「まあ、それに関してレイさんに非は全くねぇな」

「はい。そのようで安心しました」

「つぅか、そんなすげぇ人の背後取れる奴ぜってぇいねぇわ」

「そうなのでしょうか?世界にはどのような方がいるか分かりませんからねぇ」

「いないと思うけどな〜。普通に」

「皆さんは普段どのようにして周囲の警戒をしているのですか?あ、話せる範囲でかまいません」

「俺たちは獣人だからなぁ、他の種族より鼻がきくんだ。あとはなんだ?慣れか?」

「そっすねぇ…なんとなく気配がするって感じっすかね」

「ハルト君たちはどうしているのですか?」

「俺らは基本的に普通に警戒しながら進みます。足音を気にしたり、新しい戦闘の跡はないかとか、そんな感じです。コリンは目と耳がいいので助かってますね」

「うん!あたしそういうの得意です!」

「気配って言ったらターセルかな?私たちのなかで1番分かるのは」

「うん、そうかもしれない。ハルトもだと思うけどね」

「へぇ、皆さん素晴らしいですねぇ。経験がものを言うのですね」

「レイさんはなんで気配とか分かるっすか?」

「んー、魔力に敏感なんですよ。この身体」

「…びんかん…?…からだ……」


 ヴィンスさんなんで顔赤くするの?

 レイさんなんでそんな言い方なの?

 俺がけがれてるの?


「これわざとじゃないわよね?」

「ああ、違うと思うが…」

「この人、世に出して大丈夫?」

「……やばいっすね…」


 同感です。すぐに食われるぞ?

 あ、そっか警戒が得意なんだっけ?

 え?ほんとに?警戒できてる?

 魔物より世の中の野郎どもを警戒しなよ。


「分かりにくいですよね?なんと言えばいいか…んー、何もしていなくても身体が勝手に感じてしまうので説明が難しいですねぇ…」


 レイさん!?もういいから喋らないで!お願いします!!


「あれ?皆さんお酒に酔いましたか?顔が…」

「そうね。みんな酔っちゃったわね」

「…ああ、ある意味な……」

「そうですか。美味しいですものね、このエール」


 なんでそんなにのほほんとしていられるの!?

 大丈夫なのか!?それで明日を無事に迎えられるの!?


「あ、なんの話でしたっけ?そうそう薬師ギルドの方々に襲われる可能性が…え?」


 こえぇぇぇよ!

 4人の眼力やべぇだろ!?さすが高ランク冒険者!!

 つぅかレイさん!?

 このタイミングでそんな言い方しないで!!

 もう喋らないで!ね??


「ど、どうかされましたか?」

「いえ、ちょっとね?危険なにおいがしたものだから。もう大丈夫よ?ふふふ」

「そうでしたか…皆さん鼻がきくっておっしゃってましたもんね。私は気がつきませんでした。すごいですねぇ」

「まあ、とにかくだ。あいつらがレイさんに何かできるとは思えねぇってこった!!」


 ムリヤリ話終わらせたよ!?

 だがそれでいい!!

 さすがです!尊敬します!!


「そうですか。冒険者として日々戦う皆さんがそう言うのであれば信じられますね」


 …でも大丈夫かなこの人?誰でもすぐ信じちゃうタイプじゃないよね?

 変な壺買わされたりしてないよね?ね?

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