第49話 レイラ嬢の入学
第三王子改め平民ウルムくんの
そうして秋が過ぎ、冬が来て三週間の冬季休暇が始まったんだ。僕は最初からレイラ嬢と一緒に箱庭で過ごす事を決めていたんだけど、レミー嬢にティリアさん、サーフくんにロートくんも一緒に過ごしてくれる事になったんだ。
そしてもう一人、新たな仲間が出来たんだよ。
「
アーミア嬢が僕たちの仲間になったんだ。それは、アーミア嬢のご両親からの手紙で始まったんだけど……
【拝啓
初めての手紙で失礼致します。私はアーミアの父でハラルド・タイシンと申します。国王陛下より子爵位を賜っております。実は私はデッケン子爵と懇意にしておりまして、この度デッケン子爵よりハイヒット侯爵家の派閥に入らないかと誘いがございました。あ、誤解の無いように申し上げますと、デッケン子爵とは神契約を交わして、聞いた事については一切外部に漏らさないと誓っております……】
って感じではじまった手紙を頂いたんだけど、ご息女のアーミア嬢を是非とも仲間に加えて頂きたいって書いてあったから、レミー嬢とティリアさんに相談をしたんだよ。
そしたら二人ともがアーミア嬢を仲間にする事に大賛成したから、僕はレイラ嬢にも話をして、それからサーフくんとロートくんにも伝えて賛成を貰ってからアーミア嬢に聞いてみたんだよ。
「アーミア嬢、お父上から僕あてに手紙が届いてね。それでもしもよかったらなんだけど、僕たちと親友になってくれないかなって思ったんだけど、どうかな?」
そう言ってアーミア嬢をお誘いしてみたんだけど、なんとアーミア嬢が泣きだしてしまったんだ。
「うわっ!! な、泣かないで。無理強いじゃないからね、嫌なら嫌って言ってくれていいんだから!?」
僕はアーミア嬢が僕たちの仲間になるのが嫌で泣き出したんだと思って慌ててそう言ったんだけど、どうやら違っていたみたいだ。
「ち、違うんです、クウラ様! 入りたくないんじゃなくて、誘って頂けたのが嬉しくて!!」
その言葉に僕はホッとしたんだ。
「そうだったんだね。良かったよ。それじゃ、僕たちの仲間に入ってくれるなら隠し事は無しにしないとね。今からみんなと一緒に僕の寮の部屋に来てくれる?」
そう聞くとアーミア嬢はみんなの顔を見回してからコックリと頷いてくれた。
で、僕の部屋でいつもの儀式(遮音と遮視)をした後にアーミア嬢を僕の箱庭に招待したんだ。で、先ほどのアーミア嬢の不束者っていう場面に戻る。
「初めまして、アーミア様。ワタクシ、クウラ様の婚約者でレイラ・ハマースと申します」
で、アーミア嬢と初対面なのはレイラ嬢だけだったから、レイラ嬢が挨拶をしたんだけど何故か挨拶が固いよね。それを受けてアーミア嬢は
「レイラ様、いつもクウラ様から素晴らしい婚約者様がいらっしゃるとお聞きしておりました。
なんとっ!! まさかのライ師範の婚約者だってっ!? そんな事は一言も言ってなかったけど……
って僕の考えが分かったのかアーミア嬢が種明かしをしてくれたんだ。
「婚約をしたのは最近でございます、クウラ様。父とマルメイおじ様との間でお決めになり、また
恋する少女らしく頬を少し赤く染めてそう言うアーミア嬢にレイラ嬢が抱きついたよ。
「アーミア様、ご婚約おめでとうございます!! ワタクシからのプレゼントを是非ともお受け取り下さいませ!!」
んん? さっきの固さが無くなって随分と明るいレイラ嬢になったよね。まあ、何にせよ仲良くしてくれるのはいい事だよね。なんて思ってる僕を見て、レミー嬢とティリアさんが首を横に振って呆れていたそうだよ。サーフくんから聞いたんだけどね。サーフくんからはこうも言われたんだ。
「クウラ様、もう少し女心についてお勉強なさった方がよろしいかと存じます……」
うーん、何故だろう? まあ、サーフくんの言うことだしあまり深く考えなくても良いよね。
こうして新たな仲間であるアーミア嬢も冬季休暇中は僕の箱庭で訓練しながら過ごすことになったんだよ。
アーミア嬢は元からかなりな実力があったんだけど、うちのハニワたちとの訓練で斧に開眼してしまったんだ。
バトルアックスを職人ハニワが作ってプレゼントする程にね……
「有難うございます!! 鍛冶ハニワさん!! 家宝にします!!」
嬉しそうに受取っていたけど僕が後でライ師範に怒られたりしないよね? それだけが少し心配だよ。
こうして有意義な冬季休暇も終わって最終学期も何事もなく過ぎていき、十日間という短い春季休暇を終えて僕たちは二年生になり、そして!
遂にレイラ嬢が王立職能学園に入学したんだよ!!
やったね! これで寮から学舎までだけど、前世では体験出来なかったカップル登校が出来るよ!
レイラ嬢の家は伯爵家だから寮も個室だし、何よりもレミー嬢の隣なのが分かって僕もホッとしたんだ。まあ、寮の部屋は大体親の爵位が同じ同士を近くに集めてるみたいだしね。
それと、ティリアさんはアーミア嬢と同室になったんだって。何でもアーミア嬢が寮長をしてる先生に掛け合って部屋を変えて貰ったらしいよ。
それを聞いたサーフくんはロートくんと同室になろうとしたらしいんだけど、ロートくんから拒否されたそうだよ…… 何でもサーフくんは寝相が悪くて、夜中にベッドから転げ落ちるらしいんだ。その音がうるさくて安眠出来ないから同室は嫌なんだって言ってたよ。
そして、僕は今、念願のレイラ嬢と手を繋いで学舎に向かって歩いているんだ。今日はレイラ嬢の入学式だからね。
僕たち在校生は一日前に始業式を終えて新しいクラスも分かってるんだ。
今回は僕は二年一組で、レミー嬢とアーミア嬢は同じクラスなんだけど、サーフくんは二年三組、ティリアさんとロートくんは二年二組にと別れ別れになっちゃたんだ。
まあ、放課後には同じメンバーで集まるんだけどね。
で、僕たちが二人で仲良く歩いているとグレータくんの取巻きだったグーズラくんとグロースくんとあともう一人…… えっと、モ、モブオくんじゃなくて…… なんて名前だったっけ? 忘れたけどその三人が立ち塞がったんだ。そして、
「おい! ランク
っていきなり言われたんだけど、すかさずレイラ嬢が反論したんだよ。
「皆様、初めまして。ワタクシ、クウラ様の婚約者のレイラ・ハマースと申します。皆様のお顔は見たことがございますわ。確か皆様のお父様は男爵位だったかと存じますが…… ワタクシのお父様は伯爵位、クウラ様は侯爵位でございます。王立職能学園で先に一年も勉強なされた皆様はまさか爵位についてご存知ないのでしょうか?」
レイラ嬢のその言葉に何も言えなくなった三人は「クソッ! 覚えてろよっ!!」なんて捨て台詞を吐いて去っていったよ。何しに来たんだろうね……
まあ、そんな事があったんだけど入学式も無事に終わってレイラ嬢は一年一組になったって教えてくれたよ。
さあ、これから楽しい学園生活を送るぞーっ!!
って僕は思ってたんだけど、大きなお邪魔虫がやって来るなんてこの時は思ってもみなかったんだ……
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