第41話 新学期早々……

 夏季休暇も終わって遂に新学期が始まったんだ。僕たちは揃って教室へと向かったよ。


 教室に入るとクラスのみんながザワザワと騒いでた。僕たちが入っていくとみんなが一斉に僕たちを見て喋るのを止めて心配そうに近づいてきた。


「クウラくん、大丈夫?」

「レミーさん! 大変よ!」

「ティリアさん、どうするの?」

「ロートくん、このままだと……」


 一人だけ声をかけられなかったサーフくんが言う。


「アレ? 僕には何も無し? って言うかみんなどうしたの? 僕たちに何かあるのかい?」


 正直言って声をかけられた僕たちも何が何だか分からずに困惑している。

 するとサーフくんの言葉に僕たちが何も知らないと気がついたのだろう。アーミア嬢が一枚の紙を僕たちに差し出してきたんだ。そこに書かれていたのは、


【第三王子ウルムより一学年へ通達する


 これよりクウラ・ローカスに与する者たちは、学園において王族に反抗する者として見なされる事となる。その覚悟がある者はこれまで通りクウラ・ローカスと仲良くするが良い。

 また、同様にレミー・グラシア、サーフ・ビレイン、庶民であるティリアとロートと仲良くする者たちも同罪となる事をここに通達しておく。

 良く考えて行動するのだ。】



 うーん…… 陛下、ご子息が暴走されてますけど大丈夫ですか? 内心でこう思いながらも僕はみんなに言ったんだ。


「とりあえずだけど、みんなが僕たちに関わるのを止めておく方が良いみたいだね」


「いいえ、そんな事はありませんわ。クウラ様はクラスメートですし、この通達には何の効力もございませんもの。だって押印がされておりませんから」


 ってアーミア嬢が言うと他のクラスメートたちもそうだそうだと言ってる。

 それを教室の端の方でグレータくんとその取巻きがニヤニヤとしながら見ていたんだ。ちょっと嫌な感じだよね。 


 その日はクラスメートや他のクラスの子たちも僕たちの側にやって来て、心配しないでとか、こんな通達は無効だとか言ってくれてたんだ。

 けれども翌日……


 僕たちのクラスは他のクラスの子たちから孤立してしまったんだ。コソっと話をしてくれた隣のクラスの子が言ってたんだけど、第三王子を推すゾルデン侯爵からの圧力がかかったそうだよ。それで父親から僕たちに関わるなと命じられたんだって。

 でも、みんなは親から命じられたけれどもこんなのは間違ってると思うから、正すように何とか行動してみるよって言ってくれたんだよ。


 けれどもこの貴族社会だと家長の命は絶対だから、僕たちなら大丈夫だからって言って行動を慎むように言っておいたんだ。


「さてと、どうしようかなこれ?」


「クウラ様、陛下にご相談する訳にはいきませんの?」


 レミー嬢がそう聞いてくるけど僕としては学園内の事だから出来れば自分で対処したいと思ってるんだって伝えたんだ。


「そうでございますか…… それならばやはり通達を無視して、そんな通達はコチラには痛くも痒くもないと見せることが大切かと存じます」


「そうだね。私たちには何の影響も無いって見せるのは大切だよね」


 レミー嬢の言葉にティリアさんも賛同する。でもロートくんが、


「でもそれだけだとクラスのみんなが何も悪くないのに他のクラスの子たちから無視されてるのは直らないよね」


 と問題点を指摘するんだ。そう、今回は僕たちのクラスの親には圧力をかけてきてないみたいなんだよね。でも学園内で僕たちのクラスが孤立してしまうのは困るし……


「うーん…… そうだね。気は進まないけれど直接対峙する事にしようかな。さっさとこんなつまらない事は終わらせて学園内を楽しく過ごせるようにしたいし」


「おっ!! やりますか、クウラ様! ならば僕が先ずは伝令として二年一組に行って参ります」


 サーフくんが何故か張り切ってるよ。あ、そうかユルナに良いところを見せたいんだね。


「うん、それじゃサーフくんにお願いしようかな。第三王子殿下にこう伝えてくれるかな。【学生の身分で権力を使わないと何も出来ないなんて無能の証ですね。僕なら直接対峙して自分の力を誇示しますけど、第三王子殿下には無理でしょうね】って伝えて欲しいんだ」


 僕もちょっと頭に来たから暗いオーラが体から出ちゃったよ。でもこれぐらい良いよね。僕としてもちょっかいを出されるのが鬱陶しく思ってたからね。ましてや権力を使うなんてね。


「クッ、クウラ様…… クウラ様が怒ってらっしゃるわ……」


「クウラくんの笑みが黒いわね……」


「クウラ様は普段から怒られるような事はないけれども、怒らせるとこんなにも恐ろしい……」


 ってレミー嬢、ティリアさん、ロートくんが僕に少しだけ畏怖を感じてるのに対して、サーフくんだけが朗らかに言う。


「分かりました! 万事僕におまかせ下さい!! ついでに僕も言いたい事を言ってきます!!」


 そう言って教室を出ていったんだ。ちょっと心配だから僕は僕の影に向かってみんなに聞こえないように小声で言ったよ。


「ユルナ、様子を見守って上げてね」


『かしこまりました、クウラ様』


 僕にだけ聞こえる声でユルナからの返事を聞いて安心した。


 十五分ほど過ぎてあまりにも遅いから様子を見に行こうと思ったらユルナに抱えられてサーフくんが戻ってきたんだ。


「エヘヘ、ヤラれちゃいましたけど言いたい事を言ってやりましたよ、クウラ様。それで、明日の午前中の授業で第三王子を含む五人対、僕たち五人の模擬戦を申し込まれたので了承してきました。授業自体は第三王子が学園に圧力をかけて了承させるとの事でしたよ」


 その後をユルナが続けた。


「サーフ様は立派でございました。クウラ様が言った言葉を一字一句間違えずに伝えた後に、ご自分の言葉でも言いたい事を伝えました。それに、明日に模擬戦をするならと、模擬戦に出ないやからから攻撃をされても手を出されませんでした。護符タリスマンの効果により大怪我はなさいませんでしたが、一人が卑怯にも魔法を使用してきましたので、私が介入させて頂きました。その少年は今後利き手を使うたびに痛みが走る事でしょう……」


 うん、ユルナ良くやってくれたよ。しかし学園内のそれも教室で魔法を使用するなんて、非常識すぎるよね。僕はもうホントに怒ったからみんなにこう言ったんだ。


「ゴメンね、みんなも怒ってるだろうけど、明日は僕が一人で五人を相手にするよ。サーフくんに怪我をさせて無事に済ませる気はないからね。だから、明日はみんなは応援しててね」


 僕の体から溢れる暗いオーラにみんなは頷いてくれたけど、こんな感情はあまり表に出したくないしレイラ嬢には見せられないなと思ったよ。


 もう少し感情を上手くコントロール出来るようにならなくちゃね。

 でも、明日はもう容赦しないからね、第三王子ウルム。それで陛下からお叱りが来ても構わないよ僕は。僕の友人を傷つけたんだ、覚悟しておくんだね!!


 そう心に秘めて僕は感情を抑えて表に出ないように気持ちを落ち着かせたんだ。レイラ嬢を怯えさせたくないからね。


 全ては明日、決着をつけるよ。


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