第33話 領都観光(二)
お昼の集合に何とか間に合ったよ。
僕とレイラ嬢が一番遅いかなって思ってたけど、どうやらロートくんが一番遅いみたいだ。
まあ、それも実家の商会に顔を出しているからしょうがない事だよね。
そんなロートくんも五分遅れでやって来て、
「すみません、皆さん。お待たせして!!」
って頭を下げるけれども、みんなが笑顔で良いよって言って、遂にサーフくんご自慢のお店で昼食にする事になったんだよ。
何と、それはこの中央広場の西側の建物内で、屋台街になっていたんだ。
しかもだよ、凄いのは入口で入場料の銀貨二枚を支払えば中ではどの屋台でも食べ放題なんだよ!!
僕たちは夢中であちこちの屋台に顔を出しては食べ、また無くなると違う屋台に行きを繰り返したんだ。
この屋台街ではセバスも張り切って食べていたよ。もちろん、ユルナもね。
「凄く良く考えたね。でも銀貨二枚で元は取れるの?」
僕はサーフくんに疑問に思った事を聞いてみたんだ。すると、その答えはエコなものだったよ。
「クウラ様、銀貨二枚は庶民にしてみれば大奮発ですが、それでもこの屋台街に訪れてくれてます。何故だか分かりますか?」
銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚、金貨十枚で白金貨一枚、白金貨五百枚で黒金貨一枚。
金貨一枚あれば前にも言ったけど、四人家族(両親、子供二人)の庶民ならば凡そ半年は暮らせる価値があるんだ。
独身のまだ年若い人たちだと、月の収入は銀貨十五枚〜二十枚。借家住まいだと月の家賃が銀貨三枚〜銀貨八枚ぐらい。その他にも食費なんかを考えると確かに一回で銀貨二枚は大奮発だよね。
職人たちでも月の収入は多い人で銀貨三十五枚〜四十枚ぐらいって聞いてるよ。
それに領地に住むのに各貴族は税金を徴収している。もちろん、その領地の領主の裁量によるんだけど、ビレイン男爵領では村だと月の収入の五分(五パーセント)、街だと月の収入の一割(十パーセント)、領都は少し高くて一割五分(十五パーセント)なんだって。
領都で月の収入が銀貨二十枚の人は、税金として銀貨二枚と銅貨五十枚を役所に収める事になるんだ。
でもこれはビレイン男爵領、ハイヒット侯爵領、グラシア伯爵領、デッケン子爵領での税率で、他の領地だと村でも月の収入の一割〜一割五分、街だと一割五分〜二割、領都だと三割の税率が多いらしいよ。
ローカス侯爵領では母上が存命の時はハイヒット侯爵領と同じ税率だったけど、母上が亡くなった後に後見人の名で税率が上がったそうだよ。村で一割、街で二割、領都で三割になったってセバスが教えてくれたよ。まあ、余談はこれぐらいにして、そのまま説明をしてくれるサーフくんの話を聞こう。
「何故だか分かりますか? それはですね、庶民の方たちに限り世帯人数分の五回利用券を渡しているんです。それにより、一回でプラス五回も来れるという事で庶民の方たちからは大変な好評を頂いております。それと、元が取れるのかとの事でしたが、コチラの料理に使用している素材たちは実は市場に出せないキズモノばかりを集めたんです。あ、キズモノと言っても誤解の無いように言えば、例えば魚ですと鱗が剥がれているとか、頭にキズが入っている。野菜ですと外側の葉に虫食いがある。肉類ですと加工して残った切れ端ですとか。そういった物を素材としてここの屋台店主たちは料理してくれてます。素材に関してはカッシール商会がまとめて購入し、屋台店主たちに格安で卸しております。また、屋台で使用している魔道コンロ、魔道水道の燃料は、竜火石(ルビー)や流水石(サファイア)の加工時に出た欠片を集めて利用しておりますので元手はそれ程かかっておりません。また、我が領地では魚のアラ、野菜くず、肉の筋なども無駄にせずに、肥料加工場を建設してそちらで肥料に加工して、農家に向けて販売致しております!! どうですか、クウラ様、素晴らしいでしょう!!」
サーフくんが説明という名の自慢を終えた時にレミー嬢からツッコミが入ったんだ。
「サーフ、全て先々代のハイヒット侯爵様の指導を受けたお陰でしょう。うちの領地でも勿論だけど実践させて頂いております」
なんと伯父上が指導してたなんて。それは凄いね。僕は誇らしい気持ちになったけれども、最初の指導はともかくとして、それを続けてまた伯父上の指導した時よりも発展させているだろうビレイン男爵家も素晴らしいと思うんだ。
僕はレミー嬢にツッコまれて落ち込んでるサーフくんに言ったよ。
「始まりは伯父上からの指導かも知れないけれども、それを継続しより良くなるように発展させて来たのはビレイン男爵領だよね。僕はそれが素晴らしいと思うんだ。もちろん、グラシア伯爵領もだよ」
僕の言葉にサーフくんもレミー嬢も嬉しそうな顔になり、
「有難うございます! クウラ様!!」
「有難う存じます、クウラ様!」
ってお礼を言われたんだけど、僕としては逆に伯父上の指導を守ってくれて有難うって言いたいよ。
こうして、楽しい昼食も終えて僕たちは今度は全員で観光に行ったんだ。
とても、とても楽しい時間を過ごせたよ。
前世の僕が体験出来なかった修学旅行ってきっとこんな感じだったんだろうね。今世で体験出来て嬉しいよ。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、いよいよハイヒット侯爵領へと向かう事になったんだ。サーフくんのお陰で箱庭を経由して直ぐに行けるからね。
僕は母上の産まれた故郷にワクワクしながら行く事になったんだ。
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