第25話 (閑話)五百年前の英雄
私の名前は
【召喚された時】
「おおーっ!! 其方はまさしく英雄に相応しいスキルじゃ!! 剣聖ならば邪神を一刀両断にしてくれようぞ!!」
「何と!! 其方のスキルは神聖魔法じゃとっ!? その聖なる魔法ならば邪神を滅してくれようぞっ!!」
訳も分からずに私たちは神授の儀式とやらを受けさせられて…… って言っても知合いは同じ会社に勤めている
「陛下に申し上げます。この者はスキルランク
なんて司祭らしい人が言っちゃってくれちゃって、私だけお城から放逐されちゃったの。金貨五枚だけ渡されてね。
その時に一緒に召喚された人たちは全員が王様たちにかなり抗議してくれたんだけど、私は授かったスキルを使って自分自身を
「私なら大丈夫。それよりもこの国はなんか怪しいから、みんなも一刻も早く抜け出してね。私は一足先に抜けて隣国でみんなを迎える手筈を整えておくから」
って伝えてとっとと出ていってやったのよ。花も綻ぶ二十歳の乙女を役立たずっていう国なんかには居たくなかったしね。
それから私は乗合馬車に乗って、三日四晩かけて隣国にたどり着いたの。銀貨五枚の精算は中々の痛手だったけれども、隣国に入るのにまた銀貨二枚取られたのはもっと痛手だったわ……
身分証明をアッチで作っておけば良かったって思ったけれども、それが元で足取りを捕まれるのも嫌だったから必要経費だと諦める事にしたの。
この隣国は王国みたいね。私たちを召喚したのは確か帝国だって言ってたわ。ちょうど帝国との仲が険悪な状態で、だけど和平条約を結んでいるから大っぴらには戦争なんか出来なくてって状態らしいわ。
平成十二年、日本産まれの私には帝国だろうが王国だろうが違いは分からなかったんだけどね。
取り敢えず王都を目指そうかと思ったんだけど、王都まで行くのはかなりな路銀が必要だって言われてしまって、この何とか男爵さんが治める領地の領都を目指す事にしたの。
もちろんだけど、この街で身分証明は作ったわ。一番自由がきくっていう商業組合でね。
商人たちは何処の国に行くのも組合員の身分証明があれば入国料を取られないんだって。
自分の国に違う文化の物をもたらし、自分の国の文化を違う国に紹介してもらう為だって聞いたわ。
で、領地に着いたんだけど私には秘策があったの。それは授かったスキル【鑑定・かんてい・カンテイ・kantei・KANTEI】を使って商売をする事よ。
と言っても主に使うのは【鑑定】ね。
あの帝国の司祭はスキルランク
あの時に聞いた説明によれば、この世界のスキルランクの最高はSSって聞いたわ。それよりも上のランクである私の【鑑定】ならば分からない事は何もないわよ!!
そうと決まれば売込みよ!!
と意気込んで商業組合に行ったんだけど…… はい、ダメでしたーっ……
「鑑定? フッ、そんなもんが役に立つ訳ないだろう。せめて、神眼とは言わないが魔眼ぐらいは持ってないと、超精巧な贋作は見抜けないぞ」
って鼻で笑われてしまった……
グヌヌヌ、私の【鑑定】は神眼(ランクSS)よりも上なのにーっ!!
仕方なく私は自分の他の【かんてい・カンテイ・kantei・KANTEI】をじっくりと調べる事にしたんだけど……
何コレ、ヤバくなーいっ!!
艦艇を呼び出すって何よ? 同音異義語ってやつ?
でも…… 背に腹は替えられぬ!! だわ! 私は冒険者組合に行って先ずは登録。それからナンパしてくる冒険者を適当にあしらい、薬草採取をひと月ほど真面目にやってランクを上げながら講習も受けて、身付スキルを得たの。
何故かランクAの【剣聖】【拳聖】【賢者】が身に付いたんだけど……
そんな事は正直に言えないから、剣技、拳技が身に付いたって組合の教官には言っておいたわ。
そこからはダンジョンや魔物討伐の依頼も受けていたけど、決してDランクより上に上がらないように注意はしてたの。
なぜって? だってCランクからは組合からの依頼要請を断れないって規則があったから。
私はみんなと合流して、絶対に日本に帰るんだから。そんな規則に縛られたら自由に動けなくなるでしょ。
そうして半年が過ぎた頃に、やっとみんながこの街にやって来たのよ。
「サクラちゃん! 無事だったか!!」
ワタルくんが真っ先に街の外でオークを討伐してた私に気がついて走ってきてくれる。
「スメラギさん、お久しぶりでーすっ!!」
これは女子高生のショウコちゃんだ。
「サクラちゃん、オジサンは心配してたんだよ〜」
と言葉だけだと怪しいけど、顔を見れば自分の娘を心配してたような顔で言ってくれるタカオさん、御年四十五歳。パパと同い年なんだよね。
「ハア〜、あたしゃ何の心配もしてなかったよ、サクラちゃん」
天然パーマで見た目はちょっとキツそうだし、口調もアレだけどホントは優しいミツキさん。
ワタルくんは剣聖、ショウコちゃんは神聖魔法、タカオさんは超級属性魔法、ミツキさんは重力魔法のスキルを授かってるの。
それにこの半年でみんな凄い身付スキルを手に入れてたよ。
まあ、私も実は凄いスキルを手に入れてるんだけどね。
その晩、合流記念に私たちは話合いをした。どうやら日本に戻るには邪神とやらを退治しないとダメらしいんだけど、私を含めて五人ともがせっかく来たんだから楽しもうよという話に。
それはね、邪神を倒して戻ったら召喚される前の時間軸に戻されるから。つまり、こっちで三十歳までの十年間過ごして邪神を倒しても、日本に戻るとピチピチの二十歳なの!
そりゃ楽しまなきゃ損だよねってみんなの意見が一致したのよ。
で、私とショウコちゃんと、タカオさん、ミツキさんは身付スキルを暴露しあったの。
私がラノベ作家(ラブコメ)で、ショウコちゃんがラノベ作家(恋愛・ロマンス)で、タカオさんがラノベ作家(ファンタジー)で、ミツキさんがラノベ作家(BL)だったのよ。
私はこれまでにこの街で培った人脈を駆使して、先ずはみんなに一作目の第二話までを執筆して貰って、そして男爵様の奥様とそのご子息(十三歳)にお見せしたの。
それが、この世界の後の世で禁書とされる出版物の始まりだったのよ。
あ、禁書にされたのは日本に戻ってから知ったんだけどね。その辺の事はまた今度、機会があれば話をするわ。
今回はここまで、それじゃ、またね〜……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます