第21話 依頼主にはまだ手を出せない

 ゼルガの答えは……


「貴様の名を聞いておこうか? 名を教えてくれたなら依頼主を教えてやろう」


 だったから、僕は素直に教えておいたよ。


「僕の名はクウラ・ローカスだよ、ゼルガ。さあ、依頼主は誰かな?」


 するとゼルガがクックックッと笑い出したんだ。


「愚かな…… いくら強くともまだ子供か…… 十年以内に死するクウラ・ローカスに依頼主を教えてやろう。今回の依頼主はこの王国の隣国、マースカキン帝国の帝王だ。何でも帝王の第二王子の婚約者にとデッケン子爵に次女をよこせと言ったら断られたらしくてな。その腹いせらしいぞ。マースカキン帝国では昔から我ら悪魔族との契約があってな。時折このような依頼を我らは受けておるのだ。普段は秘密裏に事を運ぶのだが、今回は派手に潰せと言われたのでな、魔物たちを集めて侵攻したのだが…… このような結界があるとは聞いてなかった。まあ、我ら悪魔には効かぬが魔物たちには良く効いたわ。さあ、我は素直に答えたぞ、逃げさせて貰おうか」


 そう言うゼルガに僕は首を横に振ったんだ。


「クククッ、やはりそうか。ならば一つお前の知らぬ事を教えてやろう。今さっきお前は我に名乗ったであろう? 悪魔に名乗るという事はだな…… その身を呪ってくれと言っておるようなものなのだ。事実、我はお前の名を確認した瞬間にお前を呪い始めた。その呪いを解けるのは我のみだ。ここで我を殺すと呪いは解けずに十年以内にお前は死ぬ…… それでも良いのか? 今なら我と契約を結べば呪いを解いてやるぞ(フフフ、と言っても契約内容は魂を我に捧げる事になるのだがな)」


 僕はその言葉をアッサリと無視してゼルガの心臓、右の手の甲を棍でしっかりと叩いたよ。


「バッ、バカなことを…… 我が死んでも、呪いは、解、け、ぬ、…………」


 サラサラと崩れるゼルガを見ながら僕は言う。


「悪いけど僕の名は対外的にはクウラ・ローカスだけど、本当はクウラ・ハイヒットなんだ。君たち悪魔の事は五百年前の英雄たちが書き残した書物で知っていたからね。真の名を名乗ったりしないよ」


 僕はこの場にいる誰にも聞こえないようにつぶやいてから、傷つき倒れている街長や兵たちを治療したよ。

 一応、中級属性魔法持ちだからね。水魔法のヒールが使用出来るんだ。街長なんかは感激して感涙までしているよ。


「ウオオーッ、クウラ様ーっ! 我らを助けて頂いたのには感謝致しますが、その御身に悪魔の呪いを受けられるとはーっ!! 一体、私はどうしたら良いのだーっ!?」


 いや、あのダーン男爵、僕は呪われてないですからね。慌てて僕はダーン男爵に釈明したんだ。


「あのですね、ダーン男爵、僕は悪魔の呪いは受けて無いんです。ほら、僕は学園を卒業すると同時にローカス家から除籍されますから、今は父上のお情けでローカスの姓を名乗れてますが、実は既にローカスからは除名されているんですよ…… 学園卒業までというのは父上の見栄のためらしいですよ」


「ハッ!! なっ、何ですとっ!! クウラ様のように素晴らしいご子息を放逐されると? 馬鹿な! 何故そのような事をっ! いや、だからこそ呪われずにすんだのだから良かったのか?」


 真実はまだ言えないから苦しい言い訳だったけど、どうやら信じてくれたようで良かったよ。

 それからまた吹き出すような事をダーン男爵が言い出したんだ。


「そうだっ!! 確かクウラ様はレイラ様とご婚約なされているとお聞きしました。ならばハマース伯爵家に婿入りなされるという事ですなっ!!」


 それにも慌てて違うよと返事をする僕。それからレイラ嬢の事情についても説明をすると、今度は


「なんとッ!? レイラ様のご両親までもがそんな非道をっ!! グヌヌヌっ! お二人にはかなり爵位が落ちてしまいますが、私でよろしければ夫婦養子としてお迎えいたしますぞっ!!」


 なんて言い出しちゃうんだ。良い人だから逆に下手な言い訳を言うと面倒になるなんて事もあるんだねぇ……

 それでも僕がハイヒット侯爵になる事は隠しておかないとダメだから、曖昧に笑って誤魔化しておいたよ。ザ、日本人の美徳だね。ちょっと違うかな?


 落ち着いたダーン男爵がその時に気がついたみたいだ。


「おお! 魔物たちが居なくなっている!」


 そう、悪魔三体を倒したら魔物たちは正気に戻ったのか、それぞれが一目散に自分たちの縄張りへと走っていってたんだ。

 まあ、怪我の治療中だったから気がついたのが今なのも仕方がないよね。

 そして僕は箱庭に入って貰ってたみんなを迎えに行ったんだ。


「クウラ様! お一人で残られるなんて!! どれだけ心配したとお思いですか!!」


 ってレイラ嬢とレミー嬢から怒られるし、サーフくんとロートくんは二人で師匠であるハニワの所に修行に行ってたし……

 レイラ嬢とレミー嬢には素直に頭を下げて謝ったよ。


「心配かけてごめんね、二人とも。でもあのままだとダーン男爵たちも街も滅茶苦茶にされてしまってたから……」


 僕の言葉に二人ともそれ以上は怒らなかったから助かったよ。


「無茶は絶対にしないで下さいね」


 って念を押されてしまったけどね。で、サーフくんとロートくんだけど、修行を終えて戻ってきて僕を見た瞬間に、


「あっ、クウラ様、お早いですね。ロート、採掘師匠には今回の修行は延期になりましたって言ってきてよ」


「そうだね、サーフ。僕が師匠に言ってくるよ」


 って全く僕の事を心配してない様子だったよ。その理由を聞いてみたら。


「ハハハ、クウラ様、何を仰っているんですか、既にこの箱庭に居る剣(拳)技けんじゅつハニワ、剣(拳)師けんしハニワ、剣(拳)輝けんきハニワ、剣(拳)星けんせいハニワ、剣(拳)真けんしんハニワとの稽古で負け無しじゃないですか。それもハニワクウラで。そんなクウラ様がそこらの魔物に遅れを取ることなど絶対にあり得ませんから」


 っていう返答だったよ。戻ってきたロートくんも一緒にダーン男爵の前に出ると男爵が


「いやはや、クウラ様のスキルのスキルランクが☓だと言うのは何かの間違いではないですかね?」


 なんて核心を突くような事を言ってたけど、またまた笑って誤魔化しておいたよ。

 街の宿に戻ってから僕はやっと自分の能力値を確認してみたんだ。すると…… 




【基礎情報】

名前:クウラ・ハイヒット(ローカス)

年齢:九歳

性別:男

種族:人族

称号:ハイヒット侯爵(予定) ・デビルスレイヤー

位階レベル:185


【身体能力】

体力:218,500

気力:2,111,800

魔力:1,258,800

器用:152,000

物攻:109,700

物防:109,700

魔攻:2,101,000

魔防:2,101,000


【神授スキル】

スキルランクD【剣技】【体術】

スキルランクC【中級属性魔法】

スキルランクX【空間・くうかん・クウカン・Kuukan】【鑑定・かんてい・カンテイ・Kantei】


【身付スキル】

スキルランクA【剣聖】【拳聖】【賢者】

スキルランクS【三ケンの思考】【三ケンの動作】 スキルランクSS【前世の知識】



 うん、確実に人外になってるね……


 これはティリアさんの実家で多分だけど腕試しを求められるだろうけど、本気を出さないようにしないとね。

 五分ごぶから八分はちぶぐらいの力で対峙するようにしようと心に誓ったよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る