第18話 動き始めるアキラ
最近なんだけど、アキラの周囲が騒がしいみたいだね。まあ、騒いでいるのはアキラ本人なんだけど……
「いいか、夏季休暇が終わったら俺はクウラの奴を必ずぶちのめす。今のうちに俺の派閥に入っておいた方が身のためだぞ! それにクウラの奴は学園卒業と同時にローカス家から放逐されるから貴族じゃなくなるんだからな!」
なんて言って下級貴族の子たちを半ば脅しながら自分の作った派閥に入れてるんだ。
僕は派閥なんて関係ないから普段通りにしてるんだけど、また周りの貴族の子たちの何人かはアキラの派閥に入ったようだよ。
まあ、普通に話す程度の間柄の子たちばかりだけどね。
僕に謝罪してから仲良くなった子たちはアキラの脅しにも屈せずに僕と仲良くしてくれてるんだ。それを見たレミー嬢やサーフくんもその子たちとは仲良くするようになったよ。
で、グレータくんなんだけど、最近になってアキラと一緒に剣の稽古をしてるようだよ。
と言っても放課後に三十分だけみたいなんだけどね。二人とも王都にある屋敷から通っているから迎えが来てるんだ。
だから一日三十分だけの稽古になるみたいだけど、ティリアさんいわく
「アレは稽古じゃなくてじゃれ合ってるだけ」
らしいよ。どうもグレータくんはアキラに忖度していつもワザと敗けてるみたいだ。
アキラはスキルのランクに胡座をかいて今まで稽古なんてしてこなかったから、スキル【剣鬼】で多少は稽古をして来たグレータくんの方が強いんだって。
【剣神】スキルを授けた神様もきっと呆れているだろうね。
でもそんなアキラも少しは焦りがあるのか、ユルナが探ってきた所によると、ローカス侯爵邸にとある騎士が通ってるらしいんだ。
王国一の使い手と言われる聖騎士団の団長であるコーライ・スペリオル伯爵が、父上に頼まれてアキラに剣術指導をしているそうだよ。
僕も夏季休暇後に負けないように訓練は続けているんだけど、ウカウカしてられないね。
箱庭に居る剣(拳)
ちなみにティリアさん、レミー嬢、レイラ嬢も一緒に稽古をしてるんだ。
サーフくんとロートくん? うん、何故かあの二人は商人ハニワ、経営者ハニワ、細工職人ハニワ、採掘職人ハニワに弟子入りしてるよ。日替わりで師匠をかえて修行してるみたいだ。
いや、ロートくんは良いと思うけどサーフくんはそれで良いのかとご両親に聞いてみたいよね。
で、アキラなんだけど派閥に入ってくる貴族の子たちを常に
その第三王子殿下なんだけど…… どうやら陛下も頭を抱えている王侯貴族至上主義らしくて、アキラを呼び出して意気投合してしまったとか……
で、どうなってるのかっていうと…… 今、僕は二年生に絡まれてます。と言っても十歳の子供たちなんだけどね。
「お前がスキルランク☓のクウラか? 生意気にも兄であるアキラ殿を卑怯な手を使って敗北させたらしいな。そんな卑怯者はこの王立学園には相応しくない! 今すぐ退学しろ!」
って僕に言ってきてるのはこの王国の宰相閣下の三番目のご子息であるナッカンさん。父親である宰相閣下は既にこの三番目のご子息の思考を正しいものにするのを諦めてるとか聞いたよ。後ろでふんぞり返ってる第三王子殿下と三番目同士、仲良くなったんだね。
ちなみに宰相閣下の爵位は子爵位だよ。国王陛下のご学友でもあった宰相閣下は、一人目と二人目のご子息の教育には成功されたけど、三番目のご子息の教育には失敗したみたいだね。
ツラツラとそんな事を考えていたらナッカンさんがキレたよ。
「おいっ!! 上級生が喋ってるのに無視するとはいい度胸だなっ!! 決闘だっ!!」
この王立職能学園では名誉を守る為の決闘は容認されてるんだけど、今のどこに貴方の名誉を傷つける行為があったのでしょう? って質問したい気持ちを抑えて僕はナッカンさんに言ったんだ。
「止めておきましょう。意味もない決闘です」
そこに口を挟んできたのは第三王子殿下の隣に立っていたアキラだった。
「臆病者めっ! ナッカン先輩が怖くて断るのだなっ!! みんな見たかっ! クウラの奴はこんな臆病者なんだっ! コイツについててもいい事なんて何も無いぞ!」
ここぞとばかりに吠えるアキラに僕は言ったよ。
「兄上、何をバカなことを仰っているのです。僕は派閥なんて作ってないんですよ。みんな、仲の良い友人だというだけです。兄上も派閥なんて作らずにみんなと仲良くなるように行動すべきじゃないでしょうか? 高位貴族としてそれが正しい事だと思います」
だけど僕の言葉はアキラに届く事はない。そして、ナッカンさんが行動に出た。
「ついてこい! ランク☓! これから私と決闘してもらうぞ!! ここに居る全員が証人となる!」
そう言ってさっさと歩き出すナッカンさん。一瞬だけど無視して箱庭にでも行こうかな? って思ったけどこれ以上付き纏われるのも面倒なので、この際だから決着をつけておこうと思ったよ。
僕の近くにいた友人たちも心配だからとついてきてくれてるしね。
ナッカンさんは職員室に向かうと中に入り、二年生の担任だろう先生を連れてきたんだけど、ロール先生も後ろからついてきていた。
「クウラよ、正統な理由によって決闘を申し込んだとナッカンは言ってるが本当か?」
ロール先生が僕に聞いてきたので僕は正直に答えたよ。
「先生、僕にとっては正統ではないですが、ナッカンさんにとっては正統な理由になるんでしょうね。僕がスキルランク☓持ちなので学園を退学しろと強制して来られたので、無視していただけなのですが……」
僕の言葉は二年生の担任の先生も聞いていて、その瞬間にナッカンさんの頭に拳骨が落ちたよ。
体罰反対!! ってつい前世の癖で言いそうになるけど、ここは違う世界だし力加減をちゃんと分かっておられる先生のする事なので僕は黙っていたんだ。
「このバカ者っ!! あれほどスキルランクは目安だと口を酸っぱくして教えてやっているのにまだ分かっていなかったとは!? それも下級生相手になんて事を言ってるのだっ!!」
うん、やっぱりこの学園の先生方はまともな方ばかりだね。ロール先生は第三王子殿下やアキラを睨みつけているし。
けれどもそこで第三王子殿下がしゃしゃり出て来たんだ。
「待つのだ、アルム・サイバン伯爵よ! これは王族としての命令だ! ナッカンとランク☓との決闘を命ずるぞ、ロール・クルーガ子爵も良いな?」
ロール先生はそこで言ったよ。
「良いでしょう、第三王子殿下。但し条件があります。クウラ・ローカスが負けたら退学というのは分かりましたが、勝った場合には? 命令をされた第三王子殿下が責任を取って退学されますか?」
うん、やっぱり安定のロール先生だよ。僕が決闘する事は決定事項なんですね……
「フンッ! 何でこの僕様が退学になるんだ。この決闘を申し込んだナッカンが退学するから対等な条件だろう? まあ、仮にも二年生が一年生に負ける事はないけどな。それと、決闘のルールは学園のルールではなく貴族ルールに則って行うぞ」
「ほう? 互いに真剣を使うと言うのですな? それならば先に神への誓約書を二人に記入してもらいましょう。それと、この決闘を定めたのは第三王子殿下だという誓約書に第三王子殿下ご自身のサインをいただきますよ」
うん、ロール先生、抜かりはないようですね。
「フンッ、それでそちらの気が済むのならサインぐらい幾らでもしてやろう! さあ、決闘場に向かうぞ!」
こうして、僕とナッカンさんの決闘が決まったんだ。ロール先生を見た瞬間に決定事項になる事は分かっていたけどね……
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