第17話 売上が凄いです
みんなを箱庭に招待してからおよそ二週間が過ぎたんだけど、レミー嬢やティリアさんはレイラ嬢に会いに良く来てくれてるんだ。
サーフくんとロートくんは僕が一緒の時に来てくれるんだけど、二人とも加工済の宝石類や貴金属を見てあ~でもないこ〜でもないと話合いを始めるから僕は案内だけしてレイラ嬢と一緒に魚を捌く練習をしたり、お肉を捌く練習をしてるよ。
そしてロートくんの商会の王都支店で、取り敢えず加工済の宝石類を売り出したんだよ。
先ずは様子見という事で五点だけなんだけど、かなり強気な値段をつけてたみたいで、僕の口座には現在、白金貨が二百八十枚ほど入ってるんだ……
いくらで売ったのか聞くのが恐ろしいよ。それでも次はいつだってお客からの催促が凄い事になってるらしくて、ロートくんの商会の王都支店ではウハウハ状態でありながら、支店長である
「頼む! ロート、このとおりだ!! 俺の頭で良ければ幾らでも下げるし、販売手数料が売上の一割で高すぎるならば
って土下座したそうだよ…… うん、どうしようこの事態は想定外だよ。
「しかもねクウラ様、王都の細工加工師の親方でもあるローバックさんが探りを入れてきてるみたいなんです。僕はほぼ学園に居るのでまだ接触されては無いですが、荒くれ者みたいな弟子たちを使ってうちの商会従業員を脅して仕入先を聞き出そうとしてるみたいなんです。まあ、従業員は僕が仕入れてきてる事は知らないので無駄な努力なんですけどね」
それはそれでロートくんが危険じゃないか! 僕はロートくんに話をしたんだ。
「ロートくん、
僕の言葉にサーフくんも賛成する。
「ロート、ここはクウラ様に甘えておこう。もしもロートが捕まってクウラ様にご迷惑をかける事になったら大変だからな」
サーフくんからもそう言われてロートくんは素直に頷いてくれたんだ。だから今日の放課後にロートくんの商会に向かう事にしたんだ。
あ、ロートくんの商会って言ってるけど、ロートくんのご両親が経営してる商会って意味だからね。短縮してロートくんの商会って言ってるだけだから。
放課後に向かう事になったロートくんの商会へと、何故かレミー嬢とティリアさんもついてきてる。それならばと僕は箱庭にレイラ嬢を迎えに行って、レイラ嬢も一緒に行く事にしたんだ。
箱庭にずっと居るのでたまには外に出て気分転換するのもいいかと思ってね。
レイラ嬢も喜んでくれてるよ。誘って良かったよ。
「ワタクシ、商会へ行くのは初めてですわ」
「僕も初めてなんだ。楽しみだね」
僕とレイラ嬢が手を繋いで歩き、その後ろからみんながついてきてるけど、ロートくん? 道案内してくれないと僕とレイラ嬢は場所を知らないんだよ。僕の指摘に慌ててロートくんが前に来てくれたよ。
「失礼しました、クウラ様、レイラ様」
そう言うと早速コチラですと案内を始めてくれたよ。
だけど、そのロートくんの前に厳つい顔をしたオジサンたちが立ち塞がったんだ。
オジサンたちは三人で、一人は僕たちの後ろに回ったよ。そしてロートくんの前の二人のうち、一人のオジサンがロートくんに質問をしてきたんだ。
「僕たち、少し聞きたいんだが。この先にあるカッシール商会のロートという子を知らないかな?」
どうやらロートくんの顔はバレてないようだね。僕はそのまましらばくれるようにロートくんに目配せしたんだけど……
「僕がロートですが、何かご用事でしょうか?」
おーいっ!? ロートくん? ダメじゃないか!!
「ほう、君がロートくんかい。実はオジサンたちは君に聞きたい事があるんだよ。ここでは何だからそこの茶店にでも入って話を聞いてくれないかな?」
そう言うオジサンたちに、ロートくんは
「いえ、申し訳ないのですが今からコチラのローカス侯爵家のご子息、ハマース伯爵家のご令嬢、グラシア伯爵家のご令嬢、ビレイン男爵家のご子息を商会にご案内する所なのです。ですのでオジサンたちの用件はここで聞きます。何でしょう?」
そう返事をしたらオジサンたちの態度が一変したよ。
「そ、そうかい。貴族の方のご案内中だったのか、それは邪魔をして悪かったよ。なに、オジサンたちの用事は大した事じゃないんだ。また今度会った時に教えてもらう事にするよ…… それじゃまた!」
そう言うとそそくさとその場を去って行ったよ。
「助かりました、皆さん。お陰で無事に切り抜ける事が出来ました」
ロートくんがそう僕たちにお礼を言うけれど、確実に狙ってやったんだろうね。勝算があったから自分がロートだと名乗ったんだろうけど、相手がもしも高位の貴族の雇われだった場合には今の手は通用しないよ。
僕の考えと同じだったのだろう、レミー嬢がロートくんに意見をしていたよ。
「ロート、今回は職人たちの親方とはいえ庶民相手だったから
レミー嬢の言葉にロートくんは
「はい、分かっております、レミー様。けれども次回は無いですからね。次からは僕も転移で移動するようにしますので。それと、レミー様にお願いがございます。支店長である僕の従兄からのお願いですので、商会についたらお話します」
ってちゃんと考えてる事をレミー嬢に話してたよ。
「? 分かりましたわ。それじゃ、商会に向かいましょう」
それからは何のトラブルもなく商会にたどり着いたんだ。カッシール商会王都支店は店構えも大きくて、三階建てだった。三階部分が住込みの従業員と支店長の住居になってるんだって。一階と二階が店舗になっていて、一階は庶民用の商品を置いて二階は貴族用の商品を置いておるそうだよ。
僕たちは三階の住居部分に案内されたんだ。そこで待っていたのは……
「ようこそっ!! お越しくださいましたっ!! 金の卵を産っ! 間違えたっ!? クウラ・ローカス様、レイラ・ハマース様!! 私がこのカッシール商会王都支店の支店長であります、ラックスです!! それで、今回は如何ほどお持ちいただけたのでしょうか? 十ですか? 二十ですか? いえ、何点でも構わないのですが! あればあるほど助かりますのでっ!!」
今、この人金の卵を産むって言ったよね? 僕がジト目で見ていたらロートくんがラックスさんの後ろに回って膝カックンして頭を低い位置にしてから後頭部を叩いていた。
あ、ピクピクしてるけど大丈夫かな、ラックスさん?
「クウラ様、レイラ様、従兄が大変失礼いたしました……」
そう頭を下げるロートくんの顔に免じて僕もレイラ嬢もラックスさんを許す事にしたよ。
「ありがとうございます!! それで、その〜、今回はどうなんでしょうか?」
商魂たくましいというか、直ぐにそっちが気になるのは凄いよね。僕はアイテムボックスから十の加工済宝石類と八つの貴金属を取り出して手渡したんだ。
「おっ、おおーっ!! 十八点もの商品を!! ありがとうございます!! このラックス、全てを明後日までに高額で売りさばいてみせますので!! あ、それでロート、グラシア伯爵家のご令嬢はどちらの方かな?」
「
「おお、大変失礼いたしました。実はですね、王都の中で貴族の方々からの圧が凄くてですね、それで、グラシア伯爵家の御用達店と名乗らせて頂ければと思いまして…… あ、この王都支店だけでなく、ビレイン男爵領にある本店も含めてのお願いになるのですが、ご両親に一度ご挨拶にお伺いさせていただく事をお頼み出来ないかと思いまして……」
「それならば、
えっとレミー嬢。いくらなんでも僕なんかにそこまでの権限は無いんじゃないのかな? 僕はそう言ってみたのだけど、レミー嬢からの返事は
「あら? クウラ様にお伝えするのを忘れておりましたわ。
あ〜、それは有り難いけど、陛下の了承もなく大丈夫なのかな?
「極秘裏に陛下にも報告済だそうですわ」
「クウラ様ーっ!! お願いしますっ!! 僕の店を守って下さいーっ!!」
そこまでの会話でラックスさんがそう言ってきたから、僕としてもロートくんの実家だしという事でレミー嬢にお願いして、カッシール商会はグラシア伯爵家御用達店と名乗る事になったんだ。
それから二日後の事だよ。ロートくんがコソッと僕に話してくれたんだけど。
「クウラ様、先日は有難うございました。それで、あの時にお預かりした商品、十八点全てが売れましたので、今回は十八点中、十七点の商品は手数料を取らずにそのままクウラ様の口座に振り込んでいるとの事です。僕の両親からの指示だそうですので、どうか後でご確認をお願い致します」
それから僕は口座を確認してみたんだけど……
白金貨の上、黒金貨が入ってます。白金貨五百枚の価値がある黒金貨が二枚……
僕って今すぐ学園を卒業しても働かずに生活できますよね?
僕はやっぱり怖くてあの十八点の商品を幾らで売ったのかはロートくんに聞けなかったんだよ……
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