第16話 女の子って難しい

 それからみんなも一緒に僕の箱庭に招待したんだ。箱庭にはセバスとユルナも居て、二人をみんなに紹介したよ。


 箱庭を訪れた四人は珍しそうにキラキラした目で周りを見渡している。

 サーフくんとロートくんはハニワたちに案内されて加工場に向かったよ。


 で、今はレミー嬢とティリアさん、レイラ嬢とでお茶会をしてるんだけれども、何故かユルナもそこに加わっていて……

 妙な緊張感があるのは何でかな? さっきまであんなに仲良さそうに話していたのに……


 僕がレイラ嬢の後ろに立つセバスを見ると、セバスは首を横に振ったけど、どういう意味なの?


 今ここで余計な事を言うなって事なのかな?

 

 実際には緊張感があるのはティリアさんとレイラ嬢だけで、レミー嬢との間には緊張感の欠片もなさそうだけど、ユルナが小声でレイラ嬢に何かを言う度にレイラ嬢の方の緊張感が高まっているのが分かるんだ。

 何をレイラ嬢に言ってるんだい、ユルナ。僕は気になって仕方がないよ。


 そして…… 遂にレイラ嬢からティリアさんへと禁断の質問が飛んだんだ。

 僕には寝耳に水なんだけどね。


「あの、ティリア様…… 唐突にこのような事をお聞きする無礼をお許し下さいませね。ティリア様はクウラ様を愛しておられるのではないですか? そして、今回の夏季休暇のご招待はご両親にクウラ様をご紹介する為のものなのでは?」


 そのレイラ嬢の言葉に固まる僕、レミー嬢、ティリアさん……


 しかし復活が早かったのもティリアさんだった。


「レイラさん、誤解なく聞いてちょうだいね。私は私に勝ったクウラくんを好ましくは思っているわ。勝った事に驕ることなく鍛錬を続けているその姿勢にもね。でも、愛しているのかと問われると良く分からないわ。だって私はこれまで恋愛など経験した事がないから…… それと、もう一つなんだけど、今回のご招待はクウラくんを両親に紹介するというのは合っているけれども、お付合いする為とかじゃなくて、私に勝った人という事で紹介するつもりなの。その際にうちの両親がならば嫁になんて言い出す事が分かってるから、クウラくんの婚約者であるレイラさんにも一緒に来て貰おうと思ったのよ。既に婚約者がいると知ったらうちの両親も無茶を言ったりしないと思ったからなの。誤解を招くような形になってしまってゴメンね……」


 おお! 好ましくって、僕を? まさか、ツンだけじゃなくてデレまで体験出来るなんて!!


 って思ってたらレイラ嬢がティリアさんに謝り出したよ。


「ご、ごめんなさいね、ティリア様。ワタクシったら早とちりをしてしまって…… てっきりクウラ様を我が物にしようと画策しているのかと気が急いてしまって……」


「いいのよ、レイラさん。そう思われても仕方ない行動を私が説明もせずに取ってしまっていたんだから」


 そこでどうやら両者にあった妙な緊張感は無くなったようだよ。良かった。

 まあ、僕も好ましいと言われて悪い気はしないけど僕はレイラ嬢一筋だし前世で暮らしてた日本では一夫一妻制だったからね。


 その時にユルユルという感じでユルナが立ち上がって僕の方にやって来て言ったんだ。


「クウラ様、少しお話がございます。内密なお話でございますので部屋でお話させていただきたいのですが」


「うん、分かったよ、ユルナ。それじゃ僕はちょっと失礼するね。みんなはユックリしててよ」


 そう言って僕はユルナと一緒に自分の部屋へと向かったんだ。  

 部屋に入ると早速ユルナから質問が飛んできたよ。


「クウラ様、ティリア様を第二夫人として婚約者となさいますか?」


 いきなりだね、ユルナ。それは無いよ。


「ううん、それは無いよユルナ。僕は生涯を共にするのはレイラ嬢だけと決めているからね。それに、僕は前に言ったように前世の記憶があるんだ。その前世の世界では一夫一妻制だったからね。僕自身の倫理観がそうなってるのもあるよ」


「そうですか…… (優秀なお子様を多く残していただくチャンスだったのですが…… 成人後にはまた違うお気持ちになるかも知れませんね。それまで待ちましょう)畏まりました、クウラ様。それではその旨をレイラ様にもお伝えして安心させてあげて下さいませ」


 何やら少し微妙な間があったけどそう言うユルナに僕は頷いて了承したんだ。


 それからみんなの所に戻ったんだけど、サーフくんとロートくんが興奮冷めやらぬ様子で女子たちに話をしていたよ。


「凄いんだよ、レミー嬢!! この箱庭では各種宝石類だけじゃなくて、金属鉱石や貴金属まで採掘されているんだ! そして、それらをハニワくんたちが加工したりしてるんだよ! 王都で一流と言われる細工加工師であるローバック親方(ランクW)の細工よりも更に繊細な加工がされてるんだっ!! あっ!? クウラ様!! これらの独占販売権を是非ともロートの商会に、お願い致します!!」


 と僕を見つけて土下座しだすサーフくん。その横にはロートくんが既に土下座していたよ……


「ちょっ、ちょっと待って、サーフくんにロートくん。そんないきなり言われても…… 販売するのはもちろん構わないし、ロートくんの商会でって思っていたけど、製造元を聞かれたらどうするの?」


 僕の疑問にロートくんが答えてくれたよ。


「フフフ、クウラ様、ご安心を。謎の加工師クウレイーラの登場ですよ。そして、仕入先は明かさないのが商人としての鉄則です! 僕は例えどんな拷問にかけられようともこの箱庭について喋る事はありません!!」


 いや、もっと自分の身を大切にしようよ。危ない時は遠慮なくこの箱庭について喋ってもいいからね。僕はその旨をロートくんに伝えたんだけど、サーフくんも、ロートくんも首を横に振って、


「いいえ! 神かけて誰にも漏らしません!!」


 って言うんだよ。まあ、レイラ嬢の護符タリスマンを身に着けてたら危険もそうそう無いだろうけど。


 そして、レミー嬢にティリアさんは早速レイラ嬢の案内で細工職人ハニワの元に三人とも笑顔で向かって行ったよ。

 うん、本当に仲良くなってくれて良かったよ。


 楽しい時間はあっという間に過ぎて、みんなが寮に戻る時間になったんだ。今は護符タリスマンを身に着けているからそれぞれの部屋に戻れるんだけど、サーフくんとロートくん、それにティリアさんは相部屋らしいから一旦は僕の部屋に来てから転移を使う事に決めたんだよ。

 まあ、ティリアさんはレミー嬢の部屋からでも良いんだけどね。


 で、翌日なんだけど、ティリアさんのツンが激しくなってきたんだ。


「クウラくん、今日の実技授業は私はレミーさんとするから、クウラくんは別の人とやってね」


 とか、魔法の授業でも何故か僕をチラ見しながらも話しかけてこないっていう状態なんだよ。

 いったいどうしたんだろうね?



 (実はユルナからの助言により、押してダメなら引いてみろ作戦を決行中のティリアだった……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る