第15話 学園での評価が変わった

 僕の学園生活がすっかり様変わりしてしまった。何故か同じクラスの女子や別のクラスの女子たちから注目を浴びて良く話しかけられるようになったんだ。

 それに、男子の中にも僕に話しかけてくる子が増えてきたけど、レミー嬢やサーフくんは否定的なんだよね。


 まあ、僕もそれまで批判してきた子たちと直ぐに仲良くなるつもりは無いんだけど、人ってさ自分の目で確認してそれを反省して謝れるでしょ?

 だから僕は僕に話しかける際に謝罪から入ってきた子たちとは仲良くするつもりでいるんだ。

 楽しく学園生活を送りたいからね。


 だけどグレータくんはどうやらアキラの軍門に降ったようだよ。まあ、貴族の子は知ってるだろうけど、僕が学園卒業と同時にローカス侯爵家から抜けるからね。

 それを知っててそれでも謝罪して僕に声をかけてくれる子たちは良い友人になれると思ってるんだ。


 そんな中、ロートくんが僕にコソッと話しかけてきたよ。


「クウラ様、この間お預かりしました宝石類は全てが売却できました。クウラ様の口座に代金は振り込んでおりますので」


 そう、僕はロートくんに頼んで箱庭で採掘される宝石類をロートくんの実家である商会で売って貰っているんだ。手数料は取られるけど、売上の一割と良心的なんだよ。

 いっぺんに沢山出すと市場価値が急落してしまうから、少しずつだけどチリも積もればで僕の口座には白金貨五枚分のお金が入ってるんだ。

 金貨一枚で庶民の人が半年暮らせるんだけど、白金貨は金貨十枚で一枚になるから僕って結構な小金持ちだよね。

 

「クウラ様、この前のお話どおり、細工された物も売りに出せる事になりました。先ずは見本として何点かお持ちいただけますか?」


 続けてロートくんがそう言うので、僕は放課後に部屋に来てほしいって伝えたんだ。


 そうそう、寮の生活も変わったよ。何故か今まで王都の屋敷から通ってた女子の多くが入寮したんだ。そして、何故か僕の部屋の前に立っている事が多いんだけど、僕を見ると会釈してそそくさと去って行くんだ。

 逃げなくてもいいのにね? そんな不思議そうな顔をしてる僕にレミー嬢とサーフくん、ロートくんは諦めた顔をしているんだけど何でだろうね? 


 僕の部屋に入って暫く待っていたらティリアさんもやって来たよ。


「遅れてゴメンね。先生に呼ばれて木刀について聞かれてたから」


 ティリアさんがそう言いながら中に入り、そしてレミー嬢が魔法を使って遮音してくれた。


「さあ、これで中の音は外に漏れませんわ。サーフ、後はよろしくね」


「うん、任せてレミー嬢。永久の闇によりてその目を眩ません、【暗夜】」


 サーフくんが唱えた魔法は僕たちには影響がないけれども、中をもしも覗いている人が居たら真っ暗で何も見えない状態にする魔法なんだ。


 ここまで何でするのかって? 今日は僕の婚約者レイラ嬢をみんなに会わせる為にだよ。

 夏季休暇中にってティリアさんが言ってたけど、その前に会っておいても良いじゃないかって思ってね。

 この部屋で会ってからこの四人には箱庭も紹介する予定だよ。


 僕はレイラ嬢を迎えに箱庭に入る。そこには天使が居たよ。ユルナの隣で静かに緊張した面持ちで立っているレイラ嬢だけど僕を見て微笑んでくれる。


「迎えに来たよ、レイラ嬢。さあ、僕の大切な友人たちに会ってくれる?」


「はい、クウラ様。皆様と仲良くなれると良いのですが……」


 不安そうなレイラ嬢に僕は安心するように微笑んで言ったんだ。


「大丈夫だよ、レイラ嬢。レイラ嬢の可憐さにみんなはメロメロになるよ! それに、細工した宝石類も用意してくれてるんでしょ?」


 そう、レイラ嬢は細工職人ハニワに習って宝石細工を始めたんだ。その中で出来の良い物を今回は四人にプレゼントする予定なんだよ。

 ちゃんと護符になってるからね。みんなが喜ぶのは間違い無しだよ。


「さあ、みんなが待ってるから行こう。と、その前に言っておかないと。レイラ嬢、今日は天使みたいに美しいよ。僕は幸せ者だね、レイラ嬢と婚約出来てるなんて」


 笑顔でそう言うとレイラ嬢の手を取って寮の部屋に戻ったんだけど、何故かレミー嬢がレイラ嬢を見ていう。


「まあ! レイラ様、お顔が真っ赤ですわ! 体調がよろしくないのでは? 直ぐにコチラにお座り下さいませ!」


 えっ! 僕が手を繋ぐ前はむしろ青いぐらいだったのに、そんなに急に体調って変わるのかな?

 だけどレイラ嬢はレミー嬢にお礼を言いながら体調不良については否定したんだ。


「あの、皆様、初めまして。ワタクシ、クウラ様の婚約者でレイラ・ハマースと申します。ご心配いただき恐縮なのですが、体調が悪い訳ではございません。ちょっとコチラに来る前にクウラ様のお言葉をいただきまして……」


 と恥ずかしそうに俯くレイラ嬢。うん? 僕が何か言ったのかな? 普通に思ったままをレイラ嬢に告げただけなんだけど。

 けれどもその言葉にレミー嬢とティリアさんは納得したように頷いているよ。


「なるほど、そのお言葉で良く分かりましたわ。初めまして、レイラ様。わたくしはレミー・グラシアと申します。ハイヒット侯爵家の隣の領地の伯爵家の者でございます。以後、よろしくお願いいたしますわ」


 続けてサーフくんが挨拶をする。


「初めましてレイラ嬢。僕はサーフ・ビレインと言います。ビレイン男爵家の者で、レミー嬢と同じくハイヒット侯爵領の西隣に領地があります。余談ですが、グラシア伯爵家はハイヒット侯爵家の東隣になります」


「そうなんですのね、よろしくお願いいたします、レミー様、サーフ様」


 続けてティリアさんが挨拶をしたよ。


「私は庶民だから難しい言葉では挨拶を出来ないけれど、名前はティリアよ。ビレイン男爵領の隣の子爵領で両親が剣術道場を営んでいるわ。よろしくね、レイラさん」


「はい、クウラ様からお聞きしております。今回は夏季休暇中にご招待いただき有難うございます。ティリア様もかなりお強いんだとクウラ様から聞いております。よろしければワタクシにも稽古をつけていただけますか?」


「私で良ければ都合がいい時に稽古を見てあげるわ」


 その返答に嬉しそうに頷くレイラ嬢。続いてロートくんが名乗りを上げた。


「レイラ様、僕はサーフくんの従兄弟でロートと言います。ビレイン男爵領にて両親が商会を営んでまして、この王都にも支店がございます。何かしらご入用の物がございましたら是非とも僕にお声がけをよろしくお願い致します」


「まあ! クウラ様からお聞きしております。いつもお世話になっております。これからもどうかよろしくお願い致しますね、ロート様」


 と互いの挨拶も終わり、レイラ嬢は大切に持っていた四つの箱を四人それぞれに手渡したんだ。


「あの、コチラはお近づきの印として、皆様へのプレゼントですの。どうか受け取って下さいませ。拙いワタクシの手による宝石細工で申し訳ありません……」


 少し気恥ずかしそうにレイラ嬢から箱を手渡された四人はレイラ嬢に断りを入れてから早速とばかりに箱を開けた。


「まあ!! 素晴らしいですわ!!」

「えっ! こんな高価なもの貰っても良いの?」

「うわっ! これは凄い! そこらの細工職人顔負けじゃない?」

「こっ、これはっ!? レイラ様の手による物ですか? 売れますっ!! クウラ様! これならば高値がつきますよ!!」


 上から順にレミー嬢、ティリアさん、サーフくん、ロートくんの言葉だよ。

 そんな四人にレイラ嬢が護符としての役割と、僕の箱庭に来れる転移について説明をしてる。


 良かった、これなら四人とレイラ嬢も直ぐに仲良くなれるね。いや、もう仲が良いね。


 僕は安心して五人を見守っていたんだ。  


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