第13話 刀神というスキル
同時に踏み込んだ僕とティリアさんの木剣と木刀が激しくぶつかる。木だけど火花が出そうな勢いだよ。
それにしても同い年で僕の振った木剣を受け止める事が出来るなんて、凄いよティリアさん。
僕はセバスやユルナから同年代どころか大人にもそうそう引けは取らないってお墨付きを貰ってるんだけどね。
「くっ! さすがね、クウラくん」
鍔迫り合い状態ながらも僕に声をかけてくるティリアさん。いやこの状態で声を出せるティリアさんがさすがだよ。
「私の本気を受け止められたのは今までに父しか居なかったけど、ここにも居たなんて。正直に言って驚いているわ!」
そう言いながら大きく飛び下がるティリアさん。そして、油断なく木刀を構えたままに語りだした。
「私の授かったスキルはランクSSの【刀神】よ。刀を手にした私は無敵になれる筈。そう信じてこれまで鍛錬に励んできたけれども、まさかその私の一撃を受け止めるなんて。クウラくん、ホントはランク☓じゃないんでしょ?」
いきなり確信を突いてくるなぁ…… でもその事はセバス、ユルナ、レイラ嬢にしか言えないから。まだ、レミー嬢やサーフくんにもあかしてない秘密だからね。
「僕の授かったスキルはランクDが二つ、ランクC が二つ、ランク☓が一つだよ。もちろんだけど身付スキルは別にあるけどね。そちらのランクもAだとだけ言っておくよ」
本当は人が見たら☓に見えるスキルがもう一つ増えているけどそれは内緒だよ。それと身付ランクは本来人にいう事じゃないからね。その人の努力の結晶だし。それを持っていると言ったのは僕なりにティリアさんへの敬意からなんだ。
「そう…… そこまで教えてくれるのね。でも、私も負ける訳には行かない。父と共に作り上げた秘剣で勝負に出させて貰うわ!!」
そう言うとユラユラと木刀を揺らし始めたティリアさん。
「秘剣【眩惑刀】」
ユラユラと揺れる木刀を目にしていた僕の目は同じくユラユラと揺れてしまっていた。
しまった! 見つめちゃダメなヤツだったよ。もう遅いかも知れないけど僕は両目を瞑った。
するとユラユラと揺れていた視界も暗黒になり落ち着く。
「目を閉じた状態で私の攻撃を避けられるかしら?」
その声と共に風切り音が聞こえる。僕は……
その攻撃をアッサリと躱した。
「なっ! まさか心眼まで会得していると言うのっ!?」
驚くティリアさんの気配に隙を見出した僕はその胴に向かって木剣を振る。けれどもそれは受けられた。慌てずに返す木剣で背中側を攻める僕。それも躱される。
「まさかここまでの鍛錬を積んでいるなんて…… でも私も負けないように鍛錬を積んできたわ!!」
ティリアさんが居合の構えを取ったのを感じ取る僕。居合は確かに必殺だけど、弱点もある。僕は前世で読んだ本でそれを知っている。
居合の達人たちが声を揃えて言う居合の弱点は、間を外される事。
ここっていう瞬間に間を外すと居合は意味を成さなくなるんだ。
僕はティリアさんが間を計っているのを感じ取り、それを待つ。
そして、ティリアさんが抜く動作を始める一瞬前にティリアさんの目の前に踏み込み、その小手を切った。
利き手手首に色濃く赤色が付着するのを見たティリアさんは自ら宣言する。
「参りましたっ!!」
「この勝負、クウラの勝ち! よって一年実技首席はクウラとなった。しかし、夏季休暇後と年度終わりにもう一度三クラス合同実技授業を行う。今回破れた者たちもこれから精進するように!! これにて本日は解散!!」
ロール先生の言葉に三クラスから賞賛の声が響いた。
「スゲーッ! 誰だよ、ランク☓なんてクウラくんを馬鹿にしたヤツは!」
「貴方でしょ! 私にはクウラくんが凄いって分かってたんだから!」
「いや、貴女も馬鹿にしてたよね?」
何だか騒がしいけど僕は目の前で項垂れているティリアさんに声をかける。
「凄かったよ、ティリアさん。紙一重の差で僕が勝てたけど、次はどうなるか分からないね。お互いにこれからも頑張ろうね」
僕の言葉にハッと顔を上げたティリアさんの頬は赤く染まっていたけれども、それでも
「ええ、そうね。今回は負けてしまったけれども次回はこうは行かないわよ」
といつものティリアさんに戻っていてホッとしたんだ。
そこにレミー嬢とサーフくんもやって来ていた。
「クウラ様、明日からの学園生活の覚悟はよろしいですか?」
レミー嬢がそんな事を言ってきたけど、覚悟って何?
「えっと…… ひょっとして僕なんかが首席っていうのは気に入らないって挑戦者が相次ぐとかかな?」
僕の疑問系の返答にサーフくんがため息を吐きながら言う。
「ハァ〜…… 違いますよ、クウラ様。恐らく婚約者が居られても貴族社会では第二夫人、第三夫人が当たり前ですからその座を狙って女子たちから猛アタックが始まるという話です」
うそ、それは無いよ〜、サーフくん。僕はハズレスキル持ちだってバレてるんだよ?
「クウラ様…… そのハズレスキルを授かっていても一年生の首席となられたクウラ様は、もはや女子たちからしたら物凄く高評価であり、好評価なんですよ」
高評価に好評価って…… まさか、そんなぁ?
とその時に会話に入ってなかったティリアさんが僕に声をかけてきたんだ。
「その、クウラくん。もしも良かったら夏季休暇中に婚約者さんと会わせて貰えない? それと、婚約者さんもご一緒にうちの道場にも遊びに来てくれたら嬉しいんだけど……」
それも良いね。レイラ嬢のご両親の許可は直ぐに取れるだろうし、いいね。
「うん、分かったよティリアさん。ティリアさんが良いならレイラ嬢と一緒にお邪魔させて貰うよ」
僕の言葉にホッとした顔をするティリアさん。心なしかその表情には憂いが見えるけれども……
「レミーさんもサーフくんも都合が合えば良かったら一緒にどうかな?」
そう二人にも声をかけるティリアさん。二人は
「もちろん、
「うん、僕も隣の領地にはご挨拶したいと思ってたから、お邪魔させて貰うよ」
と快諾していたよ。それで、僕は今日この後に箱庭でレイラ嬢に話をしようと思って先に寮へと戻ったんだ。
後に残った三人が困ったような顔をしていたのを気がつかずにね……
箱庭でレイラ嬢に話をすると、
「こっ! 婚前旅行ですわっ!? も、もちろんワタクシも行きたいのですが…… クウラ様、ワタクシの両親が何と言うか……」
って言うので僕が今から話をしてくるよと言ってレイラ嬢のご両親に会いに行ったんだ。
二人ともレイラ嬢にはもう関心がないのか、
「うむ、クウラくんが一緒ならば構わないよ。何ならもうクウラくんと一緒に住んでも構わないのだが……」
なんて言い出す始末。僕は学生の身だけどそれならばと思い、
「分かりました。婚前ではありますが、レイラ嬢は僕と一緒に暮らして貰います」
そう言ってレイラ嬢の身を僕の預かりにする事にしたんだ。念書も書いて正式にそうしたんだよ。
僕からその話を聞いたレイラ嬢は寂しそうにしながらも、それでも喜んでくれた。
「これで、良かったんですの。最近は家庭教師の方も来られなくて…… 一日中、部屋に篭っておりましたので…… それで、ワタクシはクウラ様の寮の部屋に住めばよろしいのですか?」
ブッ! いや、それはダメだって、レイラ嬢。
「ううん、レイラ嬢が良ければこの箱庭で暮らさない? 家庭教師としてセバスとユルナに来てもらうし、ここならばレイラ嬢のスキルも育てられると思うんだ。どうかな?」
既に箱庭内には僕用の屋敷も建てていて、快適なつくりになっているから。
それに、ハニワたちも居るしレイラ嬢も退屈せずに済むと思うんだ。
もちろん、僕が一緒に時々外にお出かけもするつもりだよ。
レイラ嬢は嬉しいですわと言って今日から僕の箱庭で暮らす事を了承してくれたんだ。
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