第12話 アキラとの対戦
三クラス合同実技授業の内容は各クラス八名の生徒が先生たちの決めた組み合わせで対戦する形だったんだけど、元々僕の対戦する相手はアキラではなく、一組の子だったようだ。
でも三組のアキラと対戦する事になったので、急遽、アキラと対戦する予定だった二組のハワさん(庶民)と、僕と対戦する予定だった一組のナルーダくん(男爵家)が一回戦で対戦する事になった。
総勢二十四名がそれぞれ戦って終わりではなく、勝った生徒は次戦もあるそうで、一年生での一番を決めるんだって先生が言ってたよ。
こうして、三クラス合同実技授業は始まり、参加しない生徒も自分のクラスの生徒を応援したり、対戦の様子をよく見て後日レポートを出すようにと宿題まで出されたんだ。
だからみんな必死に見ていたよ。
僕のクラスのレミー嬢は三組の僕にヤジを飛ばしてきた男子(自己紹介を聞いてなかったから名前が分からないんだ……)に圧勝してたよ。
そして、ティリアさんもまたもう一人の男子に開始五秒で首チョンパしてた……
何故かティリアさんが荒れてる様子だけど、どうしたのかな? 僕はサーフくんに聞いてみたんだ。
「サーフくん、ティリアさんの機嫌が悪そうだね」
「はい、レミー嬢からクウラ様に婚約者が居られる事を聞いてからあの様子です」
「えっと…… 僕なんかに婚約者がいる事がティリアさんの不機嫌の原因?」
「いいえ、それとは違うと思いますよクウラ様……」
何故か理由を教えてくれないサーフくんだけど……
でもきっとそうだよね。ティリアさんは世間ではスキルランク☓を授かった無能って思われてる僕なんかが生意気にも婚約者がいるなんてって怒ってるんだろうね。
そうこうしてる内に対戦は進んで、僕たち二組はレミー嬢、ティリアさん、それにアーミア嬢が勝ち残ってるよ。八名中、僕を含めて五名が男子なんだけど、男子は全員が負けてしまったよ。
一組は男子二名、女子三名が勝ち残っているんだ。
三組は女子二名が勝ち残っているね。
そう、いよいよこれから僕とアキラの対戦なんだ。僕は木剣じゃなく手甲を選んだよ。
いくらアキラが鍛錬をしてないからって同じ土俵で勝負するほど僕は馬鹿じゃないからね。
僕の身付スキル【拳聖】で対戦する事にしたんだ。アキラは木剣を手にしているよ。
「クウラよ、今日まで弟としてお前を見ていたが不正をしてるとなるとそうもいかん。俺は公正な人間としてお前を裁かねばならない」
「キャーッ! アキラ様、格好いい!」
「アキラ様、そんなクズヤっちゃってーっ!」
驚いたよ。ポッチャリなのに人気があるなんて、アキラは僕が思ってたよりも凄いんだね。まあ、三組の女子だけがアキラに声をかけて、一組と二組の女子は白けた顔をしてるけど……
「兄上、僕は不正なんかしていません。自分なりに一所懸命に鍛えた結果でここに立っています」
言われたままだと肯定してると思われちゃうから一応反論はしておかないとね。多分、聞いてはくれないだろうけど。
「フッ、愚かな…… お前がいくら鍛えようともスキルランク
「アキラよ、お前は後で生徒指導室に来い。授業が滞るから今は見逃してやろう。クウラ、準備はいいな? それでは始めっ!!」
偉そうに先生をフルネームで呼んだりするから生徒指導室に呼ばれるんだよ、アキラ。今の先生の言葉に少し、ううんかなり動揺してるね。これはチャンスだね。
僕は先生の言葉と同時にアキラの目の前に飛び込んだ。多分だけど僕の動きが見えていたのはレミー嬢にティリアさん、アーミア嬢も見えてるかな?
それと目の前にいるアキラ。くさっても【剣神】スキルはランクS。僕の踏み込みにたたらを踏みながらも何とか対応してきたよ。
「卑怯だぞ! クウラ! 身体強化魔法を使用するとは!?」
いや、使ってないよ、アキラ。何を言ってるのかな? 僕の手加減をした突きを木剣で裁きながら大きく後ろに下がって叫ぶアキラ。
そしてロール先生に向かって言う。
「おい! 失格だろう? コイツは魔法を使ってるんだからっ!!」
だけどロール先生は言う。
「アキラよ、馬鹿かお前は。クラス単位の実技授業の時にネギル先生から説明があっただろうが。この実技訓練場では魔法は一切発動しない。例えランクSSのスキルを持っていたとしてもだ。だから今の踏み込みはクウラの純粋な体術だ」
先生の言葉にアキラの動きが止まる。僕はチャンスと見てアキラの後ろに回り込み、その背中を大きく平手打ちしてやった。
アキラの背中に色濃く赤色が付着する。その位置はちょうど心臓の真裏だった。
「それまで! クウラの勝ちだ!!」
ロール先生の勝利宣言を聞いても僕は油断せずに開始位置まで戻る。そんな僕をハッとした顔で見てアキラはまた叫ぶ。
「貴様ーっ!? クウラ、卑怯だぞ! 俺が呆然としている隙をついて攻撃してくるとはっ!」
この言葉にはロール先生も呆れている様子だ。
「アキラよ、対戦の最中に集中を欠き呆然とした
お前が悪い。お前は魔物相手にも卑怯だぞと叫ぶつもりか? お前の言い分はとても馬鹿げたものだ…… お前は負けたのだ。早く開始位置に戻りなさい」
その言葉に頷く先生たちに二組、一組の生徒たち。アキラはそれを見て開始位置まで戻る。
そして……
「食らえ、クウラーっ!!」
技も何もなく僕に向かって大上段から木剣を振りかぶって振り下ろしてきた。僕は油断してなかったから、【拳聖】の技である化勁でその攻撃を地面へとそらした。
盛大に大地を叩いたアキラはその衝撃で木剣から手を離す。
「くっ、グワッー! い、痛いっ! クソッ、何で避けたクウラの癖にっ!!」
この言葉がアキラの評価を決定付けたみたい。三組の生徒たちからもクスクスと笑い声が聞こえる。
「ねえ、見た? 普段から【剣神】だから誰にも負けないなんて威張ってたのに、スキルランク☓持ちにあんなに簡単に負けるなんて、クスクス」
「ポッチャリだけど良いスキルを持ってるからチヤホヤして上げてたのにあんなに弱いなんてね、クスクス」
手の平返しが凄いクラスだね。僕はそう思いながらも一応はまだ少し残っていた兄弟としての情からアキラに忠告をしたんだ。
「兄上、どんなに良いスキルを授かろうとも鍛えなければスキルの良い効果は発揮されません。今からでも遅くはありません。学園に在学されてる間に己を律して鍛え直して下さい」
「クッ、うるさい! お前の言うことなぞ俺が聞くかっ! 覚えておけ、クウラ!」
捨て台詞を吐いて実技訓練場から去ろうとしたアキラをネギル先生が捕まえる。そして、ズルズルと引きずられながら生徒指導室、別名【恐怖指導室】へと連れていかれたようだった。
「離せーっ、俺は侯爵だぞ!!」
「はいはい、君はまだ侯爵家の子息っていうだけで貴族では無いからね。だから大人しくついて来なさい」
そんなやり取りが聞こえたよ。
それから、対戦は進み僕は次戦でも勝つ事が出来て、その次も勝っていよいよ決勝だ。お相手はティリアさんだった。レミー嬢を破り勝ち進んだティリアさんは僕を見てこう言ってきたんだ。
「クウラくん、木剣で相手をしてくれるかしら?」
ティリアさんからそう提案された僕は頷いて木剣を手にした。ティリアさんはロール先生から最初に受け取った木刀を手にしている。
「有難う。私も本気を出すからクウラくんも本気できてね」
うーん…… この気迫。アキラなんかよりもよっぽど【剣神】らしいんだけど……
そう言えばティリアさんの神授スキルを聞いた事がないね。僕は気を引き締めたよ。
「よーし、二人とも準備はいいな? 他の生徒もよく見ておくように! それでは始めっ!!」
ロール先生の開始の合図で僕たち二人は同時に踏み込んだんだ。
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