第11話 アキラだった……

 実技授業から僕をバカにする人は居なくなったけど、何故か僕の周りにはレミー嬢とサーフくんしか居ない…… 

 もっと友達を作りたいなぁ……

 

 あ、因みにサーフくんは実技授業で対戦した前の席の女子、アーミア嬢(子爵家)に負けたよ。負けた後に荒事は得意じゃないって頭をかいてたよ。


 それでもたまにティリアさんが僕たち三人のところにやって来て、話をする。

 って言っても主にレミー嬢に話しかけているんだけどね。


「レミーさん、貴女あなたの剣技は素晴らしいけれども誰に学んだのかしら?」


 が初めての会話だったけど、レミー嬢もちゃんと律儀に答えていたよ。


「ティリアさん、わたくしの剣技はお祖父様に学んだものですわ。お祖父様は正騎士団に若い頃に所属されておりまして、その時に学んだ正騎士団の剣技をお祖父様なりに改良なされたと聞いております」


「そうなのね。それで…… あら、ごめんなさい、ついね…… 私は庶民だけど親が剣術道場をやっていてね。幼い頃から両親に仕込まれたものだから、剣術にとても興味があって」


「まあ! 王都でですの?」


「いいえ、デッケン子爵領よ」


「アラ? サーフのご両親の隣の領地じゃない」


「ホントだね、レミー嬢。ティリア嬢がそんな近くにいたなんて知らなかったな」


「サーフくん、嬢はやめてちょうだい。私は貴族の子じゃないんだから」


 何故かサーフくんも自然に会話に入っている。良いなぁ。僕もそんな風に話をしたいよ。何とか会話に混ざろうと試みたけれども、僕には対人センスが無いみたいです……


 落ち込んでいたら今日もティリアさんがやって来て、今日は僕に話しかけてきたよ。


「クウラくん、聞いた? 明日の三クラス合同実技授業は、各クラスで勝ち残った者たちで対戦するそうよ。貴方、隣のクラスのアキラくんに嫌われてるようだけど、大丈夫? アキラくんは【剣神】を授かったって聞いてるけど」


 僕を心配してるふうに聞いてきてくれたティリアさんに僕は家の事情だから詳しくは言えないとお断りをいれてから、


「兄上と対戦するとは限らないし、大丈夫だよ、有難うティリアさん」


 とお礼を言っておいたんだ。すると、ティリアさんが顔を少し赤くしながら


「べっ、別に貴方の事を心配してる訳じゃないわ。私は貴方をライバルだと思ってるから、こんなとこで負けてしまってやる気がなくなってしまい、剣術の腕を錆びつかせてしまわないかと思っただけよ」


 と少しツンツンしながら言ってきたんだ。おおっ! これが前世で噂にきいたツンデレのツンなのかな? デレは無いだろうけどね……


「ハハハ、僕は強くなりたい理由があるから、兄上や他の誰かに負けたとしても鍛えるのを止めたりはしないよ」


「そ、それなら良いけど…… とにかく、頑張りなさいよね!」


 そう言ってティリアさんは去って言ったよ。


「クウラ様…… 何と罪作りな……」


 サーフくんが何かブツブツ言ってるけどどうしたのかな?


「クウラ様、わたくしが愚考いたしますに、ご婚約者が既に居られる事を早めに発表されるべきかと思いますわ。私たちのような一部の貴族はクウラ様がハマース伯爵家のご令嬢レイラ様とご婚約なされている事を知っておりますが、明日の三クラス合同実技授業の後にクウラ様にアタックしてくる女子が多くなるかと存じますので」 


 レミー嬢は何を言ってるんだろうね? 僕なんかスキルランクバツを授かってるって知られてるんだからアタックしてくる子なんていないでしょ。


「レミー嬢、何を言ってるの? 僕なんかスキルランクバツを授かったハズレだと思われてるし、容姿もそんなに良くないからアタックなんてされる訳ないよ」


 僕が心の中の思いをそう打ち明けると、サーフくんとレミー嬢が言う。


「むっ、無自覚だ……」

「無自覚ですわ〜……」


 いや、僕はちゃんと自覚してるよね。二人がおかしいだけで。そんな僕の思いをよそに二人はコソコソと話を始めたんだ。


「これはダメですわ、サーフ。わたくしたちでどうにかしないと」

「そうだね、レミー嬢。先ずはクウラ様の許可を得て、クウラ様に婚約者が既に居られる事を僕たちで広めよう」

「そうですわね。その手でいきましょう。よろしいですか、クウラ様?」


「僕にレイラ嬢という婚約者がいるって事をみんなに話すのは別に構わないよ」


 事実だしね。来年にはこの学園で堂々と会えるしね。それにレイラ嬢も寮に入るって言うから放課後も一緒にいられるようになるんだ。早く一年が過ぎないかなと僕は楽しみにしてるんだよ。


 もちろんだけど今でも僕の箱庭でお互いの都合があった時に会っているけど、やっぱり毎日顔をみたいよね。

 そんな事を思っている僕をよそ目に二人は何やら話しあっていたけど、決まったらしく頷きあってたよ。


「さあ、それではクウラ様。次の授業は魔法学ですわ。魔法訓練場に参りましょう」


 言われて僕もそうだったと気がついて慌てて立ち上がったよ。気づけば僕たち三人以外に誰も教室に残ってなかったからね。



 そして翌日。今日は一限目から合同実技授業なんだ。クラス対抗みたいな雰囲気で何だかワクワクするね。

 おっと、視線を感じるからそちらを見てみたら入学式の時に僕を睨んでいたポッチャリくんがまた睨んできてるよ。

 いったい何だろうね? 僕は取り敢えずスルーしておく事にしたよ。

 

 クラスの実技授業で勝ち残った八名(一クラス十六名)がそれぞれのクラスの前に出ているんだけど、意外にもポッチャリくんも居たよ。あんなにポッチャリなのに勝ち上がるなんて凄い事だよね。

 相変わらず僕を睨んでいるけれど。


「よーし、今日は三クラス合同実技授業だ。各クラスで勝った者たちが前に出ているな。対戦相手は先生たちで決めてあるからな。ルールは各クラスで行ったルールと同じだ。その前に、自分のクラスの者は分かるだろうが、せっかく一年生全員がこの場に集まったんだから、一人一人自己紹介をするように。先ずは一組からだ」


 という先生の言葉に一組の十六名が自己紹介を始めたよ。で、次が二組の僕たちだけど、僕の自己紹介の時に三組からはヤジが飛んできたんだ。


「オイオイオイ、二組は腑抜けばかりかよ? スキルランク☓持ちに負けるなんてどんなバカだ?」


「ランク☓が勝ってるなんて不正行為でもあったんじゃないか? 先生にワイロでも送ったのか?」


 けれどもここでロール先生の一喝が飛んだよ。


「よーしっ! 今言った者たちは勝ってるようだな。それでは自分の目でクウラの実力を確認するがいい。クウラに負けたら一週間の停学処分とするからな」


 ちょ、ちょっと先生、そこは有無を言わさず停学処分にするところでは? なぜに僕を巻き込むんですか?


「ちょっと待ってくれ、ロール・クルーガ子爵。次期侯爵としてここは俺に預からせてくれ。俺の弟の事だからな」


 って! えっ? ポッチャリくんがアキラなの? 嘘だぁ! アキラはあんなにポッチャリしてないよね? あ、でも神授の儀式いらい会ってないから…… よーく見たら目から鼻にかけてのラインはアキラ…… なのかなぁ…… 自信がないよ。


「ほう? どこで先生の爵位を知ったのかはおいておいて、アキラ・ローカスがクウラの相手をすると?」


「そうだ、兄としてこの情けない弟がどんな不正をして勝ったのかは知らないが思い知らせる必要がある。もちろんだが、俺が負けたら一週間の停学処分で構わない」


「良かろう。三組のネギル先生。少し対戦相手は変わりますが構いませんか?」


 三組の担任の先生が頷いたよ。こうして、僕はすっかり様変わりしたアキラと対戦する事になったよ。さては授かったスキルにかまけて鍛錬を一切してないな、アキラ。そんなんじゃいくら良いスキルを授かったとしても僕には勝てないよ。


 僕が気合を入れてる間に三組の自己紹介が終わっていたよ。三組の人たち、聞かずにゴメンね。

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