第9話 学園に入学
僕は九歳になり王立職能学園に入学した。この学園は貴族の子息はほぼ全員が入学する。十四歳の成人までの間に学び、卒業後の進路を決めるんだ。庶民の中にもこの学園に入学する人は多くいるけれど、その人たちは王国の職員になりたいという強い意思をもった人が多い。
勿論だけど嫡子は経営学が必須科目になってるんだよ。次男、三男は騎士科目を学ぶ者が多いかな。
僕は経営学と騎士科目、それに魔法科目を学ぶ予定なんだ。
アキラ? アキラの事は分からないね。ずっと顔を合わせていないからね。
入学前に父上の書斎で久しぶりに父上に会った時も居なかったからね。その時の父上の会話がコチラです。
「久しぶりだな、クウラよ。息災でいたか?」
「はい、父上のお陰を持ちまして……」
「そうか、お前もアキラと同じく王立職能学園に通う事になるが、寮に入ってくれるのだな?」
「はい、父上。私は寮生になって卒業後はローカス侯爵家より抜ける事といたします」
「そうか…… 残念だが、アキラもそう望んでいる。だが、お前が望むならば侯爵家筆頭の権限でアキラの補助としてこのローカス侯爵家に残る事も可能なのだが……」
「いえ、父上。アキラ兄様が望まないのならば私は単なるお荷物となってしまいます。なので、やはり卒業と同時に抜ける事と致します……」
「ムウッ、仕方あるまいな…… それよりも一つお前に聞きたい事があるのだが……」
「何でしょう?」
「セバスもユルナがお前の学園入学と同時に我が家を辞すると言ってきておるのだが、お前が何か言ったのではないよな?」
「父上、私はセバスともユルナとも何ヶ月も会っておりません。二人が何故、私が学園に入学するタイミングでこの家を辞するのかは私にも分からないのです(嘘だけど)」
「そ、そうか…… お前には関わりがないのだな……(困った…… あの二人が居なくなってしまうとこの侯爵家の領地運営と経済状況が悪化してしまうのだが……)」
「はい、父上。私はあずかり知らぬ事にございます。それでは、明日より入寮いたしますので準備がございますからこれで失礼いたします。卒業まで面倒を見ていただき感謝致します、父上」
「う、うむ、それは貴族として当たり前の事だからな。これにてもう会う事も無いだろうが、息災でな、クウラよ」
「はい、有難うございます、父上。それでは失礼致します……」
みたいな会話をしたんだけど、セバスとユルナは一足先にハイヒット侯爵領に向かい、僕を迎え入れる下準備をしてくれているんだ。
僕が卒業して、直ぐに侯爵家当主となるのではなく、一年は今の代官の手伝いとなるからなんだけど、その代官も僕が来るのを心待ちにしてくれているらしいし。特に準備は必要が無いんだけどね。
まあそれを父上に言うつもりも無いしね。そもそも、あの二人にほぼ全てを丸投げしていたのは父上だし、辞められたら困るならばもっと給金を上げるべきだったよね。
そんな会話を父上としたのが入寮一日前のことで、勿論、その時にアキラはその場には居なかったよ。
だからアキラの事は全く僕には分からないんだ。
今日は入学式だ。さすがに今日はアキラに会うだろうと思っていたら、僕の目にはアキラらしい人物が見当たらなかったよ。いったいどうしたんだろうね? やけにポッチャリした少年に睨まれたのだけ不思議だったんだけど。
入学式が終わりそれぞれのクラスが発表されたよ。僕のクラスは一年二組。この王立職能学園では入学試験などないから一年のクラス分けは本当にランダムなんだ。僕たちは教師に指示されてそれぞれの教室に向かった。
「よーし、ようこそ王立職能学園に。私がこの一年二組を担当する、ロールだ。入学式で学園長も言ってたがこの学園において爵位は関係ない。この一年間の成績で次の二年からはクラス分けを行うからな。優秀な者は二年特組になる。みんな特組を目指して頑張るように。それでは、今から自己紹介をしてもらおう。私から見て右端の君からだ。家名は名乗っても名乗らなくても構わない」
先生に言われて女の子が立ち上がった。
「
それだけ言って座るレミーさん。続く男の子も家名を名乗る。どうやら貴族の子は家名を名乗った方が良いみたいだね。
庶民の子の中には貴族の子とそうじゃない子をしっかりと見て聞いてる子が多いみたいだから。
みんなの自己紹介が終わり、いよいよ僕の番になったよ。僕は立ち上がり自己紹介をしたよ。
「僕はクウラ・ローカスです。侯爵家の者ですがこの学園を卒業したらローカス侯爵家から抜ける事になります。この一年間皆さんよろしくお願いします。仲良くしてくださいね」
僕の自己紹介に貴族の子の多くは失笑し、庶民の子はホッとした顔をしている。親の爵位だけで言うならば僕が一番上だけど、この学園では爵位は関係ないって話だからね。僕は仲良くなれる子とは仲良くしたいと思ってるよ。
貴族の子たちが失笑したのは僕のスキルランクが
でもレミーさんともう一人、サーフくんは失笑せずに僕を見て頷いていたんだけど? サーフくんはビレイン男爵家だと名乗っていたけど……
まあ良いや。後で本人たちに聞いてみよう。自己紹介が終わると明日からの授業の説明がロール先生からあって本日は終わりになった。
僕は寮に向かう事にしたんだけど、僕に声をかけてくる子がいたよ。
「おい、スキルランク
取り巻き三人を連れたこの子は確かグレータくんだったかな? ハーグレイ伯爵家だったよね。取り巻きの三人は男爵家だった。
僕はその言葉を無視して立ち上がり寮に向かおうとしたんだけど、どうやら無視したのがダメだったみたいでグレータくんが僕の前に立ちふさがって怒ったように言い出したよ。
「おいっ!! バツのくせしてこのスキルランクBを授かった俺様を無視するとはいい度胸だなっ! 明日の実技授業で痛い目に合わせてやるからな! 覚悟しとけよ!」
って言うだけ言って去っていったよ。まあ、明日の実技授業は先生の指名で対戦相手が決まるから君と当たるとは限らないんだけどという僕の心の声は届かなかったみたいだよ。
そんな僕に更に声をかけてきたのは、レミーさんとサーフくんだった。
「クウラ様、大丈夫ですか? あのバカは放っておいて下さいませ。些事は
「クウラ様、この学園に居られる間は僕とレミー嬢が常にお側についておきますのでご安心を」
いや、ちょっと待って二人とも。何で僕を様づけで呼ぶの? 僕にはその理由が分からないんだけど……
「詳しい事は寮で話しましょう、クウラ様」
というとレミーさんとサーフくんは僕を促して歩き出したんだけど。二人も寮生なんだね。
あ、この学園の寮は男女三年までは男女共生なんだ。四年からは男女別に別れるんだよ。だから僕の部屋に集まろうって話になったんだ。
さて、どんな話が出てくるのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます