第8話 レイラ嬢のスキルの真実

 僕は泣いてるレイラ嬢の両手をとって優しく握りしめたよ。


「レイラ嬢、泣かないで。レイラ嬢の授かったスキルは凄いものなんだよ。僕が今から説明するから泣きやんでくれないかな?」


 僕が心からの声でそう言うと、まだ少しグズつきながらも泣きやんでくれたレイラ嬢。そんなレイラ嬢に僕は声をかける。


「先ずはおめでとう。レイラ嬢が授かったスキルはとても凄いものなんだ。あの司祭には分からないだろうけどね。今から、僕のスキルで僕の見ているレイラ嬢のスキルの説明を、レイラ嬢にも見えるようにするからね。今から見せるのは僕が作ったものじゃないからね。それは神様に誓うよ」


 そう宣言してから、僕は僕が見ているレイラ嬢のスキルの説明を空間を支配してレイラ嬢にも見えるようにしてあげたんだ。



【生活保護魔法】

 スキルランクd

 生活に関するありとあらゆる事を保護する魔法を使用出来るが、全てを使用するには成長させる必要がある。

 成長させる為には使って使って使いまくるのが一番である。

 今は授かったばかりなので、【支援金(返済必要なし)】しか使用出来ない。【支援金】は一回につき銀貨一枚が出てくる。使用制限があり、一日二回しか使用出来ない。


【家政婦の隠密】

 スキルランクd

 物事の重要な局面に誰にもバレずにその場に居られる能力。使えば使うほど成長し、スキル【家政婦シリーズ】を得ていく。


【スキルランク小文字の説明】

 極まれに現れるレアスキルで、ランク表記が小文字の場合、そのスキルは成長するスキルである。

 成長する度にランク表記が上がっていく。

 【e→d→c→b→a→s→ss】 

 小文字表記のスキルは有用な物が多く、授かった者は神に愛されし者なのは間違いない。

 但し、授かった者を守る為に、よこしまな心を持つ者が見た場合にはランク表記は大文字に見えるようになっている。


 

 どうやらレイラ嬢も全てを読み終えたみたいだ。明らかにその表情が明るくなっている。


「あの、あの、クウラ様、これは本当なのですか? 夢では無いのですね? ワタクシの得たスキルは神様に愛されし証なのですね?」


 期待と不安が混ざった感じでそう聞いてくるレイラ嬢に僕は優しく言ったよ。


「本当だよ、レイラ嬢。レイラ嬢は神様に愛されし者なんだよ。だから、もうそんなに暗い顔はしないで、レイラ嬢は授かったスキルを誇っていいからね」


 僕の言葉に安心したのだろう。レイラ嬢は今度は嬉し泣きを始めてしまった。

 嬉し泣きなら止める事は出来ないよね。僕はレイラ嬢が泣き止むまで待ったよ。


「ワタクシ、でも…… お父様に見限られてしまいましたわ…… これからどうすれば……」


 嬉し泣きが終わったけれどもまた悩み始めるレイラ嬢。そんなレイラ嬢に僕は贈り物として作った護符タリスマンをアイテムボックスから取り出して手渡した。


「さあ、それを悩むのはちょっと待って、レイラ嬢。今日の為に僕が作った贈り物を受け取って欲しいんだ。良かったら直ぐに箱を開けて見て欲しいな」


 僕が箱ごと手渡すとレイラ嬢の目がまた嬉しそうに輝いたよ。


「まあ! クウラ様! ワタクシにですか! 嬉しいです、有難うございます。早速、見させていただきますわっ!!」


 そう喜び箱を開けたレイラ嬢が目を見開いて驚いている。


「あ、あの、こ、コレは、クウラ様…… 価値が物凄くて受け取る訳にはいきませんわ……」


 何とか言葉を絞り出したレイラ嬢に僕は悲しそうな演技をして言ったんだ。


「そ、そんな…… レイラ嬢を思って、きっと喜んで付けてくれると思って、一所懸命に作ったのに…… 受け取って貰えないなんて……」


 そんな僕を見て慌てるレイラ嬢。


「いっ、いえっ、あの、違うのですクウラ様。ワタクシには勿体無いと言いますか…… その…… あまりにも豪華すぎて…… 身につけているのをお父様やお母様に知られますと、せっかくクウラ様が贈ってくださったのに、絶対に取り上げられてしまいますので……」


「ああ、何だ、そんな事を心配してたんだね。それなら大丈夫だよ。ほら、貸して。僕が付けて上げるから」


 そう言ってレイラ嬢から護符タリスマンを受取り、僕はレイラ嬢の後ろに回ってチェーンを首に回して付けて上げた。その瞬間に全ての護符タリスマン全体が光って、見た目はとても安っぽいネックレスへと変化したんだ。


「アラ? こ、コレは?」


「フフフ、見た目が変わっただけで、ちゃんとさっきの護符タリスマンのままだから安心してね。レイラ嬢の心配も分かっていたから、レイラ嬢が手にしている間はその見た目になるようにしてあるんだ。それと、取り外せるのはレイラ嬢自身と僕だけだから、その点も心配しないでね。外した状態でもしも盗難にあっても三十秒でレイラ嬢の手元に戻るようにもしてあるから、その点も安心してね」


 そこまで説明をしてから僕はこの護符タリスマンの機能をレイラ嬢に説明したよ。レイラ嬢はとても驚きながらも喜んでくれた。


 そして、僕はいよいよ考えていた事をレイラ嬢に話したんだ。


「レイラ嬢、もしも生涯を共にするのが僕でかまわないと言うならば、レイラ嬢のスキルの件はご両親には内緒にしたままにしておいて欲しいんだ。そして、僕からご両親に婚約を打診してみるよ。ご両親は多分だけど、ダメスキル同士でお似合いだと思って了承してくれると思うんだ。それから、レイラ嬢が学園を卒業したタイミングで結婚したいと思う。僕のプロポーズを受けて貰えますか? レイラ嬢」


 僕の言葉を真剣に聞いていたレイラ嬢は両目から涙をこぼしながら微笑んで、七歳とは思えない言葉でプロポーズを受けてくれたよ。


「クウラ様、ワタクシでよろしいのであれば、喜んで、レイラ・ハマースはクウラ様に嫁がせていただきますわ。末永く、よろしくお願い致します」


 うん、今の僕はとても幸せだよ。好きな女の子に告白まで出来て、しかも了承までしてもらえて!


 そんな僕の幸せな気分を台無しにしたのはユルナだったよ。


 影からムニョンと現れたユルナは、僕とレイラ嬢に向かって大声で言う。


「おめでとうございまーすっ!! ああ、思えばクウラ様のオシメを変えたのが昨日の事のように思い浮かびます! そんなクウラ様がこんなにもご立派になられて、このユルナ、感動の涙が止まりません!!」


 言いながら目に素早く目薬をさしてたら全てが台無しだからね、ユルナ……


 でもそんなユルナを見てレイラ嬢が朗らかに笑って、


「ユルナ姉様、これからワタクシもクウラ様同様によろしくお願い致しますわ」


 って挨拶をした時にユルナの目から出たのは確かに目薬じゃなくて涙だったよ。


 …… …… 後からユルナに聞いた話だよ。セバスも箱庭に入ってきてたけど、ハニワたちと一緒に隠れて僕とレイラ嬢の様子を見ていて、プロポーズが成功したのを確認してから、箱庭内の畑まで走っていって大号泣していたそうだよ。


 僕はこんな二人に仕えて貰って本当に良かったと思ってるよ。 


 

 ハマース伯爵家への僕からのレイラ嬢への婚約の打診は直ぐに了承されたんだ。こうして、僕たち二人は対外的にも婚約者として堂々と振る舞える事になったんだよ。

 これでレイラ嬢が学園に入学してきても守る事が出来るよ。


 本当は僕が学園を卒業したタイミングで、ハイヒット侯爵家当主に国王陛下から任命される手はずだったけれども、僕は理由を説明して一年、伸ばして貰う事をお願いしたんだ。

 陛下からの了承の返事をいただけた時はホッとしたよ。


 レイラ嬢の卒業と同時に結婚とハイヒット侯爵家当主としての任命を受ける事が決まったよ。

 もちろんだけど、僕が卒業したらハイヒット侯爵領に向かって領地経営に携わる事が条件だったけどね。

 

 


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