第4話 ローカス侯爵家の秘事
あれから一週間が過ぎたよ。僕はやっとスキル大全集の最終巻を読んでいる。
第一巻には無かったけれども、第二巻にはスキル【空間】についての記述があり、第三巻にはスキル【くうかん】についての記述が、第四巻にはスキル【クウカン】についての記述があったから、この第五巻にはスキル【Kuukan】についての記述があると思うんだ。
やっぱりセバスの宿題に無駄なモノなど無いと第二巻で【空間】についての記述を見つけた時にわかったんだ。
そこで分かった事をここに記しておくね。
【スキルランク
異世界より召喚されし英雄の一人が所持していたスキルについていたランク。
このランクは他に得たスキルランクをワンランク〜ツーランク下げる事が分かっているが、その後その英雄が行方不明となった為に詳細は分からず仕舞いである。
【空間】
スキルランクはD
スキルランクBの空間魔法の劣化版
メリットは魔力を消費しない
デメリットは全ての技が空間魔法の五分の一
[例]
【空間魔法】でのアイテムボックスのサイズが五十立方メートルならば、スキル【空間】の場合は十立方メートルになる。
【くうかん】
スキルランクはC
魔力を消費しない
【クウカン】
スキルランクはB
魔力を消費しない
どうかな? 中々の優秀スキルだと僕は思うんだ。でも、最後の【Kuukan】にどんでん返しをされそうで怖いけどね。
さあ、集中して第五巻を読むとしよう。
最後まで読んだけど……
無い! 無いよ! スキル【Kuukan】についての記述が!
見落とした? ううん、そんな筈は無いよ。一ページずつちゃんと確認しながら読んだから見落としてる筈は無いんだけど……
破れてるページも無かったし……
そう考え込んでいたらセバスが部屋にやって来たんだ。ノックの音の後に、
「クウラ様、セバスにございます。そろそろ、全てを読み終えたかと思いますが、どうでしょうか?」
そう聞こえたので僕は渡りに船と返事をしたんだ。
「ちょうど良かった、セバス。呼びに行こうかと思ってたぐらいなんだ。入ってよ」
僕の言葉に扉を開けて失礼しますと入ってきたセバス。
僕の書き記したメモを見て、満足そうに頷いている。
「さすが、クウラ様です。私の意図をしっかりと理解なさいましたな。さて、それでは何か問題がございましたか?」
僕の声の調子で分かるセバスはとても優秀な執事だと思うんだ。
「うん、実はね…… 」
こうして僕は自分のランク
「遂にアレの封印を解く時が来たようですよ、メリエ様……」
呟くようにそう言うとセバスは僕を見て腰を落として目線の高さを合わせて言ったんだ。
「クウラ様に申し上げます。コレはローカス侯爵家の秘事にございますので、例え旦那様と言えどもご内密にお願い致します。お誓いいただけますか?」
えっ! 何? ローカス侯爵家の秘事って? 旦那様って父上だよね? 父上が現侯爵なのにその父上にも言っちゃいけないってどうゆう事なの?
僕の疑問を正確に読み取ったセバスが教えてくれたよ。
「ああ、そうでした。クウラ様にもアキラ様にもまだお話してないのでした。このローカス侯爵家は亡くなられたメリエ様のご実家で、今の旦那様は婿養子でございます。更に申し上げるのならば、現在の侯爵位は空位となっております。それでもローカス侯爵家がお取り潰しにならないのは、クウラ様かアキラ様が成人なされるまで、旦那様が後見人となって見守ると王国に申請を出しているからなのです」
し、知らなかったよ。母上がいつも父上をたてていたから、てっきり父上が侯爵だと思ってたんだけど…… ん? でも教会では司祭が普通に父上をローカス侯爵って呼んでたよね?
「クウラ様の考えている事が分かりますぞ。対外的には事実とは違いますが、慣例として配偶者や後見人をその侯爵家の爵位で呼ぶ事が普通なのです」
それから更に真剣な顔になったセバス。その目には怒りすら浮かんでいるようだけど…… 僕が威圧されてるみたいで縮み上がっちゃうよ。
「失礼しました、クウラ様。しかし、秘事をあかす前にもう一つの秘密をお話しておきましょう。双子となっておりますが、実はアキラ様はメリエ様のお子様ではありません。旦那様が家事見習いとして入っていた子爵家の令嬢の誘いにのり、産まれたのがアキラ様なのです。なので、実際にはご兄弟ではございますが、クウラ様とアキラ様は双子では無いという事実をお知らせしておきます」
なん、何だってーっ!? でも、母上はアキラにも分け隔てなく愛情を注いでたよ?
「クウラ様、メリエ様はそういうお優しいお方でございました。しかしながら、旦那様が物心ついたアキラ様を連れて一時期、旅行に行かれたのを覚えておられますか?」
僕はその時には母上と一緒に居られる事が嬉しくて喜んで二人を見送ったのを覚えていたから頷いた。
「その時にどうやら旦那様はアキラ様の生母である子爵家ご令嬢に会わせて、真実をアキラ様に伝えたようなのです。それからのアキラ様の態度の変化をクウラ様も不思議に思っておられたでしょう?」
確かに、旅行から戻ったアキラは母上にも会いに来なくなってしまい、僕は独り占めできて嬉しかったんだけど、母上が悲しんでいたのを思い出したよ。それに、僕の事も兄上と呼んで慕ってくれていたのに、段々と距離をとって五歳の時には僕を呼び捨てで呼び始めたんだよね。
何がアキラをこうも変えたんだろうって不思議だったけど、セバスによってその理由がやっと分かったよ。
「そして、旦那様はクウラ様とアキラ様が学園に入学されるタイミングでアキラ様の生母と再婚なされるおつもりです。その際にクウラ様を学園卒業までは面倒を見ると宣言され、実質は侯爵家より追放される心づもりのようでございます。これらはユルナが調べてますので間違いない情報でございます」
まさかそんな事を父上が考えていたなんて。しかも母上の実家なのに乗っ取ろうとしているだなんて…… でも今の僕に出来る事は無い。僕は自分の無力を知って情けなくなったんだ。
「クウラ様、亡きメリエ様はこうなる事も予期しておりました。コチラはメリエ様から託された手紙でございます。男の私で申し訳ございませんが、代読させていただきます」
そう言うとセバスは母上からの手紙を読み始めた。
【愛しのクウラへ
この手紙をセバスが読んでいるという事はアキラについての事実をクウラも知ったという事なのね。私は何とか兄弟二人が仲良くこの侯爵家を治めてくれたらと願っていたのだけれど…… 力が及ばずにゴメンねクウラ。そんなクウラには私からプレゼントがあるわ。このローカス侯爵家なんかはスパッツやアキラにくれてやりなさい。実は陛下にお願いして私のもう一つの爵位、ハイヒット侯爵の跡継ぎをクウラにしてあるわ。この爵位は私の兄様が亡くなられた時に王国の貴族たちには内緒にして、陛下が私に与えて下さったの。領地は信頼のおける兄様の代からの者たちと、私の代になってからの者たちが治めてくれているから。そして、クウラの事もちゃんと知らせてあるから、学園を卒業したならばセバスに聞いてハイヒット侯爵領に行きなさい。レイラちゃんもちゃんと連れて行くのよ。
クウラ、苦労をかけてしまうけれども、貴方ならきっと大丈夫。レイラちゃんと幸せになれるわ。母はそれを知っているからね】
僕は母上からの手紙を読んでもらって泣いたよ。こんなにも愛してくれた母上がもう会えないという悲しさと、先を読んで動いてくれていた母上からの深い愛情に涙が止まらなかったんだ。
そんな僕を見てセバスが言う。
「さあ、クウラ様。時間は有限です。早速、ローカス侯爵家の秘事についてお話いたしましょう」
そう言うと涙目のセバスは僕にローカス侯爵家の秘事を語り出したんだ。
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