第3話 次男になりました
父上の言葉に司祭は頷く。まるで父上が何を言うかを分かっているかのようだ。
「聞きましょう」
「有り難い。実は私は大きな罪を犯してしまっているのだ。そう、その大きな罪とは…… 今は亡き妻に頼まれて、本来ならば嫡子である子を次男としてしまった事なのだ! ここに私は懺悔をしよう。私が犯した過ちを今、この場で正し、今日まで次男として育ててきたアキラをこれからはちゃんと嫡子としてしっかりと育てて行く事を神に誓う。神は私の許しがたい罪をお許し下さるだろうか?」
突然の父上の宣言に僕はまた呆然となってしまった。隣で僕の手を握ってくれてるレイラ嬢も呆然としている。
その時に司祭が何かを唱えた。すると、父上の頭頂に稲妻が当たった。
「ち、父上! だ、大丈夫です…… か……?」
だけど稲妻が当たった父上は平然とその場に立っていたんだ。それを見て司祭が言う。
「ローカス侯爵殿、神は貴方をお許しになられた。これからはちゃんと子の順位を守り、育てていきなさい。王国の書記官殿、この事は神がお認めになられた事です。ですのでそのように記録を正しい形にされる事を教会として望みます」
「はい、司祭殿。戻り次第すぐに取り掛かります」
そして、僕はその日から次男として育てられる事になったんだ。
翌日、ハマース伯爵家には婚約破棄を申し入れたと父上に言われて更に落ち込む僕。
アキラには婚約者候補が多く申し込みしてきて、今はしっかりと選んでいる段階なのだそうだよ。
そんな落ち込む僕の部屋にユルナとセバスの二人がやって来たんだ。
セバスが言う。
「クウラ様、もはや諦められましたか? それならばユルナの持つ手紙はお渡しできませんが……」
言われて僕はユルナの手元を見ると、何とレイラ嬢からの手紙を僕に向けて見せているユルナが居たんだ。
そうだ、レイラ嬢はどんな僕でも一緒に居てくれると言ってくれた。スキルがダメだからって落ち込んでいられない。僕はその思いからセバスをキッと見て言った。
「諦めたりしてないよ、セバス。僕はこれまで以上に鍛えて強くなって、レイラ嬢を守れる人になるんだ!!」
「その意気や良しでございます、クウラ様。ユルナ、クウラ様にその手紙をお渡しするのだ。それから、コレは私からの宿題にございます。暫くはこの本を読み通して下さいませ」
そう言うとセバスは五冊の分厚い本を机に置き、ユルナはその上にレイラ嬢からの手紙を置いて部屋から出ていった。
僕は先ずはレイラ嬢からの手紙の封を切り、読み始めた。
【クウラ様、婚約破棄の件をお父様から聞きました。お父様は直ぐにアキラ様への婚約の打診をしたそうです。ですが多くの婚約者候補が目白押しのアキラ様からの婚約は無いとワタクシは確信しております。なので、来年までお待ち下さいませ。ワタクシのスキルが良くても悪くても、必ずやクウラ様との婚約が復活できるように取り計らいます。ワタクシは今でも、いいえ、今まで以上にクウラ様に心惹かれております。クウラ様しか考えられないのです…… こんなワタクシですが、不安もございます。もしも、ワタクシのスキルがあまり良くないものだったとしても、クウラ様はワタクシを選んで下さるのでしょうか…… はしたない事を書いてしまいました。どうか、この言葉はお忘れ下さいませ。来年、必ずや……】
うん、僕はやるよ! スキルランクが
そう決心した僕はセバスが置いていった本を見る。それは、
【スキル大全集、全五巻の一】
と書かれてあったんだ。過去に現れた全てのスキルを書いてあると言われる最新版で、確かお父様が大切に保管されていたモノの筈。セバスは先ずはコレを読破せよと言ってたっけ? 何の為かは分からないけれども、これまでセバスに与えられた宿題で意味の無かったものはないから、僕は読破すべく一冊目を手に取ったんだ。
「うわっ! 重い! それに一冊が前世で貰った広○苑なみの分厚さだ!」
ちょっと
二時間後、まだ半分も読めていないけれどもユルナがノックして部屋に入ってきた。
「クウラ様、レイラ嬢へお手紙をお出しになりますか?」
ん? あ、そうだ返事を書かないと! すっかりと忘れていた僕は慌ててユルナに言ったよ。
「ご、ごめんよ、ユルナ。少し待ってくれるかな? 直ぐにレイラ嬢への返信を書くから」
「畏まりました。それではこちらで待機させていただきます」
そう言ってユルナは僕の椅子の真後ろに立つ。いや、ダメだよユルナ。その場所だと僕がレイラ嬢へ出す返信を全て読めちゃうよね? 僕が後ろを振り向いてユルナを見ると、不思議そうに聞かれた。
「いかがなさいました、クウラ様? さ、早くレイラ様への返信をお書き下さいませ」
うん、確信犯だね。
「ユルナ、そこに待機されると書きづらいから、アチラの壁まで下がって待機してくれるかな?」
僕がそう言うと残念そうな顔をしながらも従ってくれたよ。
「はあ、クウラ様が年々、賢くなって来られてユルナは寂しゅうございます……」
いや、そんな哀しそうに言っても恥ずかしいから読ませないからね。
僕は今のレイラ嬢への素直な気持ちとお礼を書き込み、封筒にいれて蜜蝋で封を施してから魔力を流した。これでレイラ嬢以外の人が封を切ろうとしたら僕に伝わるんだ。
僕はユルナに返信を渡した。
「コレをレイラ嬢に、よろしくねユルナ」
「お任せ下さいませ、クウラ様。この【闇夜のユルナ】が必ずやレイラ様に手渡しいたしますので」
そう言うとユルナは僕の目の前から消えた。幼い頃から見てるからもう驚かないけれども、初めて見た三歳の時は驚いて泣いちゃったんだよね。レイラ嬢もユルナの特技は既に知っているから、いきなり目の前に現れても驚かないと思う。
詳しい話はまだ教えてくれないんだけど、セバスとユルナは親子で母上に助けられたっていう話だけは聞いていたんだ。
僕が学園に通う前には詳しく教えてくれるって言ってたけど。
それから僕はまたスキル大全集に集中して取り組み始めたんだ。
せめて一巻の半分ぐらいまでは今日中に進みたいからね。
コレを何故、読むのかは読み終わった後に分かる筈だから。
本日はここまで。続きは明日。よろしくお願い致します。
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