第2話 スキルランク☓!?

 僕はアキラとは別々に馬車にのり、貴族街にある教会へと向かっていた。僕の馬車には父上が一緒に乗っている。

 スパッツ・ローカスが父上の名前だ。僕は嫡子だから僕の方の馬車に父上が乗っている。けれどもホントは僕とアキラが一台の馬車に乗っていけばいい話なんだよね。

 でもそれは母上が亡くなってからアキラに拒絶されたからこうして別々に乗って、父上は嫡子の方に乗るというスタイルが確率されてしまったんだ。


「クウラよ。セバスによりかなり鍛えられていたな。お前には期待しているぞ」


 馬車の中で父上にそう言われたけど、スキルを授けて下さる神様の気持ち次第なので、僕は返事に困ったよ。


「は、はい。父上」


 結局、こう言うしか無かったんだけどね。


 教会に着いて馬車を降りた僕を婚約者で一つ年下のレイラ嬢が待ってくれていたんだ。ハマース伯爵家長女のレイラ嬢は今日も可憐で見事なカーテシーで挨拶をしてくれたよ。


「スパッツおじ様、クウラ様、アキラ様、ご無沙汰しております。本日は遂にクウラ様とアキラ様がスキルを神様よりお授かりする日ですね。ワタクシもお見守りさせて下さいませ」


 年齢よりも言葉を無理して丁寧に言おうとして少し変だけど、それもまた愛嬌だよね。父上がレイラ嬢に返事をする。


「よく来てくれたね、レイラ嬢。今日はクウラの晴れ舞台だ。しっかりと見ていて欲しい」


 僕もちゃんと挨拶を返すよ。


「レイラ嬢、今日はわざわざ有難う。良いスキルを授かれるといいんだけど…… でも今日の為に必死で努力してきたから、見ててね」


 僕に続いてアキラが言う。


「フンッ、伯爵家だと長女でも暇なんだな。わざわざ見に来るなんて……」


「「アキラッ!!」」


 僕と父上の声がハモったけど、アキラは気にせずにそのままお付きの侍女と一緒にいつも一緒に遊んでいる下級貴族の子たちの元へと行ってしまった。


「ゴメンね、レイラ嬢。気にしないでね」

「失礼したね、レイラ嬢。アキラは後でちゃんと叱っておくよ」


 僕と父上の言葉に首を横に降るレイラ嬢。


「いいえ、ワタクシが悪いのです。本来ならば関係ない子供が来るのは場違いなのですから」


 うんうん、ホントに可愛いよ僕の婚約者は。こんな娘と一緒になれるなんて、ホントに今世は幸せになれそうだよ。


 僕たちは手を繋いで一緒に教会へと入っていったんだ。そして、いよいよスキルを授かる儀式が始まったんだよ。

 ここは貴族街の教会なので、来ている子たちはみんな貴族の子供ばかりだ。下級貴族から名前を呼ばれて司祭の前に行くんだ。

 そうそう、カレイド王国では国教として想像神ヌルイエ様を信仰する想像教を認めているんだけど、王国制としては珍しく、信仰は自由にしていいという法律があるんだ。

 なので、庶民たちは創造神様や、大地と豊穣の女神様、海神様を信仰する人も多くいるんだよ。

 さすがに貴族は国教指定の想像教を信仰しているけどね。


 初めに名前を呼ばれたのは騎士爵の子供だった。女の子だけど、授かったスキルは


「ウム、パーセナー騎士爵の次女、マユリが授かったスキルは、スキルランクE【生活魔法】、スキルランクD【身体能力向上】、そしてスキルランクC【騎士の心得】じゃ! これからも精進するのじゃよ」


 司祭の言葉に見守っていたパーセナー騎士爵が喜んでいる。マユリ嬢も嬉しそうな顔をしているよ。

 まあ、こんな感じでスキルランクとスキルを司祭がみんなの前で発表するのは五十年前に不正をした貴族がいたからなんだって。

 授かったスキルは五つだったそうだけど、その全てがスキルランクEだったのを、国に申請する際に五つのうち二つをスキルランクCと偽ってたらしいんだ。それによって、優秀な人材だと思った当時の宰相閣下が雇入れたらしいんだけど、実際に仕事をさせてみたらあまりにも酷くて、それで教会で鑑定にかけられて嘘がバレたそうだよ。


 それからは司祭がこのように発表して、王国から派遣されている書記官が記録していく方針になったんだって。コレは庶民の方にも書記官を派遣して、有用なスキルを授かった庶民には将来は国の為に働かないかと打診したりもしてるそうだよ。


 信仰の自由だったり、優秀ならば庶民からも騎士や王国の財務官などに雇用したりと、カレイド王国は他に聞く国々よりも先進的だと思う。


 おっと、そんな事を考えていたら遂に僕の番になったよ。最後はアキラなんだ。長兄からという決まりがあるからね。

 僕は気持ちを落ち着けて司祭の前に立った。


「ウム、ローカス侯爵家の嫡子、クウラが授かったスキルは、スキルランクD【剣技】、スキルランクD【体術】、スキルランクC【中級属性魔法】、スキルランクC【鑑定】、ンン? な、なんじゃ、コレは……」


 順調に発表していた司祭が戸惑っているよ。何、何があったの?


「ンン、ゴホンッ! まあコレも神の思し召しであろう。見たままを素直に言うぞ。クウラの授かりし最後のスキルはスキルランクバツ【空間・くうかん・クウカン・Kuukan】じゃ。このスキルは初めて聞くスキルじゃ。しかしながらスキルランクバツは五百年前の文献に残っておる。残念じゃがクウラよ、そなたの授かりし他のランクのスキルもこのバツスキルによってワンランクからツーランク下のスキルとなろう……」


 ガーンッ!! えっ、何? 何で? さっきまで幸せな気分だったのにこんな事ってある?

 スキルランクバツって何なの? 僕は戸惑い、オロオロしながら司祭の前に立っていたんだけど、乱暴に押しのけられてしまった。

 

「邪魔だ、退けよ!」


 アキラによって司祭の前から退けられた僕は顔を伏せて父上の元に向かう。そこには心配そうな顔をするレイラ嬢もいた。

 穴があったら入りたいってこういう気持ちなんだね。父上は僕にこう言ったよ。


「クウラよ…… お前が我が子である事に変わりはないからな。だが……」


 だが…… 何でしょう父上。そこで言葉を止めないで欲しいです。

 その時だった。司祭の大声が辺りに響いたんだ。


「オオッ!? ローカス侯爵家次男、アキラの授かりしスキルは、スキルランクA【上級魔法】、スキルランクA【弱点看破】、スキルランクS【剣神】、スキルランクS【防御の結界】、スキルランクSS【知識神の導き】じゃっ!! 五つ授かり、その全てがランクA以上とは…… そなたは神の愛し子であろうな!! これからもしっかりと精進するのじゃぞ!!」


 勝ち誇った顔で僕を見るアキラ。僕は悔しくて、悲しくて顔を伏せてしまう。そんな僕を心配してなのかレイラ嬢が僕の手をギュッと握ってくれて、小声で僕に言ってくれたんだ。


「クウラ様、ワタクシはどんなスキルを授かろうともクウラ様とこの先も一緒に居たいです…… なので、ワタクシなどは何の力にもなれないかも知れませんが、どうか安心して下さいませ」


 僕の沈んだ気持ちはコレだけで上向きになったんだ。僕は顔を上げてアキラを見たよ。

 でも、その時だった。父上が司祭に言葉をなげかけたんだ。


「司祭殿、今から私の懺悔をここに居る者たちを証人として聞いていただけるか?」


 突然の父上の言葉に呆気に取られていたのは、僕とレイラ嬢だけだったよ……

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