スキルにランクがある世界で、僕のスキルのランクは☓(バツ)でした!?

しょうわな人

第1話 転生させてくれました

 僕の名前は空閑沼くがぬま爽良そうら。今、病院のベッドで十四年という短かかった生を終えようとしてる。


 僕は小学二年生まではみんなと同じように学校に行って勉強したり遊んだり出来てたんだけど、小学三年生の時に、運転中に病気になって亡くなった人の車にはねられて、入退院を繰り返す身体になってしまったんだ。


 はじめのお医者さんからはもって一年と言われた僕の生命だけど、今の担当の先生のおかげでおよそ五年も生きられたのは良かったと思う。

 お父さん、お母さんにはいっぱい苦労をかけてしまったけどね。


 そんな僕も自分でわかるんだ。そろそろお迎えが来るんだって。だから僕は神様にお祈りしたんだよ。


『もしも、物語のように記憶を持って生まれ変われるなら、走り回りたいなあ。元気でいたいなあ。お父さんやお母さんに苦労をかけない身体でいたいなあ……』


『その願い! 聞き届けよう!!!』


 僕の祈りに返事が来たのにはビックリしたよ。僕の幻聴かも知れないけれど、それでも僕はこれでお父さんやお母さんに安心して貰えるかなって思ったんだ。でも、もう声も出せないぐらいに身体が弱っていたから、心の中で必死にベッドの周りにいた人たちに声をかけたんだよ。


『お父さん、お母さん、いっぱい苦労をかけてゴメンね。でも、安心してね。僕は神様にお願いしてどこかに生まれ変われるみたいなんだ。だから、泣かないでね。妹の綾、遊んであげられなくてゴメンね。兄ちゃんは居なくなるけど、でも友だちと仲良くね。看護士さん、いつも痛いっ! ってワガママ言ってゴメンなさい。それでも優しくしてくれて有難う。それから、医師せんせい。僕を今日まで生かしてくれて有難うございました。本当に僕は幸せでした……』


 こうして僕は息を引き取ったんだ。


【 ピッピッピッピッ…… ピーーーーー


「「爽良!」」

「ソラ兄ちゃん!!」

「残念です……」


 だが、皆の顔は何故か悲しみだけでなく希望もあった。それは……】



 後から神様に聞いた話だよ。


『フォッフォッフォッ、家族にはちゃんと知らせてやったからの。我が神力を使ってお主の伝えたい思いをちゃんとお主の声で伝えたからの。それに、最後にはサプライズで、「僕の言ってる事がウソじゃないっていう証明に、僕が息を引き取る直前に僕の身体から光が出るそうだから。それを見たら信じてね」と言葉を付け足して、その通りにお主の身体を光らせたからの。家族だけでなくその場におった者たちはお主が生まれ変わる事を信じたじゃろうよ』


 ってね。これで僕は心置きなく生まれ変わる事が出来るよ。


『お主には地球とは違う銀河系にある世界。地球から見たら異世界じゃな。その世界に生まれ変わって貰う。どの国、どの家に生まれるかは分からぬが、それでもお主が生きていくのに必要な能力はちゃんと与えるでな。安心して旅立つが良い』


 神様にそう言われて僕は頷いたんだけど、そのまま意識が遠のいて、気がついたら僕は異世界ラージアースのカレイド王国の侯爵家嫡男で、クウラ・ローカス五歳だったよ。


 何で僕、空閑沼爽良くがぬまそうらの記憶が戻ったのかって? それはね、母上が流行り病で亡くなった衝撃からだったんだ。

 気づけば泣いている自分が居て、それがクウラ・ローカス五歳だって事も分かっていて……


 二人の意識が完全に融合するまで僕はただただ静かに涙を流していたんだ。それを見た僕付きの侍女であり侍女長でもあるユルナは僕を優しく後ろから抱きしめてくれていたんだ。


 僕はやっと意識の融合がすんで泣きやんだ時には、僕の双子の弟アキラが僕を馬鹿にしたような顔で見つめていたよ。


「やっと泣き止みましたか、兄上。しかしまあ母上が亡くなったぐらいでよくそこまで泣けるものですね。それもいい子ちゃんぶる為だけに」


 そう、双子の弟のアキラとは何故かうまくいってないんだ。それもお互いが幼少だった頃から。もちろん、今も五歳と幼少だけど目が見えるようになってお互いを認識した頃から、互いにこの子とは仲良くなれないと分かっていたようなんだよ。

 亡くなった母上はそれをとても心配されていたけどね。


 それから母上の葬儀は滞りなく終わり、僕は母上との誓いを守るべく、その日からこの屋敷の執事長でありながら僕付きの家庭教師となってくれたセバスに、学業だけでなく剣技、体術、武器術、魔法を教わり、必死に食らいついていったんだ。

 身体が自由に動かせるっていいなと思ったよ。母上が亡くなった悲しみを一時でも忘れる事が出来るんだから。


 この異世界ラージアースでは、七歳になると教会にいき神様からスキルを授けて貰えるんだ。その時に有用なスキルを授けて貰えるように五歳から努力するのは貴族としては普通の事らしいんだ。

 スキルにはランクがあって、一番下がEで順番にD.C.B.Aって上になるそうなんだけど、Aの上が更にあって、S.SSというランクがあるんだって。


 ちなみにランクEの代表的なスキルは【生活魔法】だそうだよ。ランクDの代表的なスキルは【初級剣技】や、【初級属性魔法】になるんだって。


 どのランクのスキルを授かるのかは神様次第なんだけど、一人がだいたい二つから三つのスキルを授けられるのが当たり前なんだそうだよ。


 そして、五歳から研鑽を積むと授かりやすくなるんだって。だから、僕はセバスによって色々な可能性をもって鍛えられてる最中なんだ。

 剣技を頑張れば例えばランクAの【剣聖】は無理でもランクBの【剣鬼】が授かれる可能性が高くなるらしいからね。


 母上が亡くなった悲しみを紛らわす為でもあり、母上との誓い【弱く困っている者を助けられる力を得る】を守る為にも僕は必死になってセバスの教えを学んでいったんだよ。


 双子の弟であるアキラはお付きの侍女や、下級貴族の子たちと遊んでばかりいたらしいけどね。


 そうして僕が前世の記憶を思い出してから二年が過ぎて、いよいよスキルを授かる七歳となったんだ。


 さあ、神様はどんなスキルを僕に与えてくれるのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る