第8話

転職活動

 仕事が一段落ついてまかないの時間になった。


 ホール担当の石井は当然のように梨花の隣だ。


 うんざりしてまかないのロールキャベツの味がしなくなる。


 煮崩れたロールキャベツは見た目を気にしなければ味は一品である。美味しい美味しいはずなのに、味がしない。


 なんだかんだと話掛ける石井に気のない相槌を打って、食事に専念する梨花だった。


昼休みスマホで転職サイトを開く。転職活動はバーに通いだしてから始めたばかりだった。


 オファーは来ていない。そっと大きなため息をつく梨花であった。


 今の職場の立地も給与お福利厚生も良すぎて人間関係以外悪いところを探すのが無理だった。条件が合わない。贅沢を言っているわけではないのだが、他の人とはうまくやっているし石井さえいなければと呪う梨花であった。



 石井を呪いながらバーに寄って愚痴をこぼす毎日。


 重い木製の扉を開いていつものバーに入店する梨花。


 いらっしゃいませと迎える五木。


 終電を過ぎ、客はいない。梨花一人だ。


 イツキの指し示す席につく梨花は、おしぼりで手を拭きながらボトルを眺めた。


 チョコレートが置かれる、店からのサービスである、特別な。


 チョコを一粒口の放り込みカクテルをお任せでオーダーする、疲労回復スペシャルを作って下さいと五木に任せた。ユニークな注文に吹き出した五木はかしこまりましたと氷を砕き出した……。

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