第6話

梨花の朝



 憂鬱な気分で目覚まし時計を消した梨花はテレビの電源をつけながら、大きく伸びをした。


 カーテンを開けると眩しい朝日が差し込んでくる前の一瞬の暗さ、冬の朝だ。


 寒いけど換気のために窓を開けてもう一度伸びをして無理やり職場に行く元気を冬のピンとした空気からもらう。


 大きくため息をつくと窓を締め、朝食を作り出した。



 食パンにトマトソースを塗りとろけるチーズを一枚載せる。それを二枚作ってトースターに入れてタイマー三分セットする。


 ドリップ式コーヒーを一枚取り出して、マグカップにセット。


 ポットからお湯を注ぐ。コーヒーのいい匂いがする。


 コーヒーを入れ終わると香りをまず楽しみ一口味見する。アチ、と小さな声で呟いた梨花。マグカップで冷えた手を温めているうちにトースターのベルがチンとなる。


 取り出すと皿にも取り分けることなく、直接トースターからアチアチのピザトーストを取り出し、かぶりつく。野菜取ってないけど、まあいっか。お昼にしっかり野菜を取れば問題ない。サラダがあればいいのだけど、買い物に行く暇がなく渋々コンビニのパンで我慢している。でもコンビニのパンだって悪くない。安価で美味しい。そう己を納得させて、コーヒーを飲み干す。


 パジャマを脱ぎ捨て、適当に乾燥機から服を取り出し、薄化粧をして身支度を整える。髪はきつくお団子に結うとシャッキリと背筋が伸びた。


 いつもの通勤用バッグを持ち、マンションの玄関を出る。


 鍵を締めて、エレベーターホールに向かう。縁起を担いで決めた梨花の部屋は七階だ。ぽんと音を立てて七階に止まったエレベーターに乗り込むと、一階の階数ボタンを連打した。

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