温い

ねっとりと首元にまつわりついた軀をのけぞって、スマホに意識を移してうつ伏せになった彼女から、女の臭いがした。温く酸い刺すような女の臭い。意識がとたんに暗み、遠のくほどの生の臭いに僕は明らかに嫌悪し仰け反った。直後に、その臭いを拒絶しながらも、もう一度覗きこむように、その正体を明らかにするように、すんと息をする自分の生温い拗れを、ちょうど幼子が好奇をもって触り動くそのすべてを、微笑を湛えて懐かしむように、温い部屋の空気に澱んだ。

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