うつらうつら
二月に突然姿を見せる暖かい一日が、わたしは好きだ。
ぴんと張り切った寒さに慣れてしまったわたしの両目は、雲ひとつなくて境界が曖昧な空とじんわり右のこめかみを照る日差しに、瞼の重さに負けてしまう。川沿いを歩いてみれば、去年の秋頃には黄色と薄緑色をごちゃ混ぜにしたようだった優しげな木が、くるんと丸まった枯葉を数枚残して、裸のまま立っている。何もかも開けっぴろげにしてしまったような、まるで変わってしまったよう。つんとした空気を残しながら。洗濯後のシーツのような、大掃除をした後の、広くなって少しだけしゅんとする部屋のような。そばにあった木製のベンチに腰掛けた。足元をうろちょろしている鳩の首元が、エメラルドに反射してちかちかする。お節介な暖かさにまだ慣れずぼんやりしてくるのにまかせて、また次の春が来るのかしら、全部すっかり無かったことにして、なんて、まどろみうつらうつらした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます