16.5 一方そのころ リアック、セシアはというと


「ええっ⁉ 依頼人のこともよく知らずに紹介したの?」

「え、うん。そうだけど」


 道路を敷く為に地面を掘っていたリアックはセシアの声に驚いて、持ち上げようとしていたスコップの手を止める。

 リアックの話を聞き、頭を抱えるセシア。

 いったいこいつは何に顔を引きつらせているのだ?


「リアック、そういうのはちゃんと教えなきゃダメ。団長に教わったでしょう?」

「つってもよお、スライムの駆除だぜ?早々面倒なことにはならないと思うんだけどなあ」

「やっぱりリアックは駄目ね。私が様子を見に行ってくるから依頼人が誰なのか、教えて頂戴」

「過保護なお母さんかよ。依頼人はええと、確かチヨ・リーフっていう人だったかな」

「おぅええええええええ————」

「ど、どうしたああああああああ———‼」


 今まで聞いたこともない声を吐き出すセシア。さっきまでぷりぷりして真っ赤だった顔が真っ青だ。


「……見なかったことにしましょう」

「突然心変わりするじゃないか。いったいどんな人なんだよ」

「……私の師匠です。この世界でも指折りの魔術師なんですけど、魔術師の中でもロマン派の狂人と言われている人なんです。私……あの人好きじゃないんです」


 あの誰に対しても世話を焼くセシアがこれほど言う人とは、一体どんな人間なのだろうか。

 もしかしたら、とんでもない所を紹介してしまったのか、僕。

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