【仮】赤い服を着て、久しぶりに友だちと会ったら泣かれた。
.
色にこだわるなら、与えるイメージも覚えなさいね。
久しぶりに高校時代の友だちである草薙と会うことになった。
別々の大学に進学して、お互い忙しかったから草薙とは高校卒業以来会ってなかった。
だから会えるのを楽しみにしていた。
「おっ。今日の俺のラッキーカラーは赤か」
ニュース番組でやっている星座占いを見て、俺は赤いTシャツにジーパンとラフな服装で出掛けることにした。
草薙に会うのだから、洒落た服を着なくて良い。
クローゼットの置くにしまってある洒落た服はいつか彼女が出来た時にとっておこうとしよう。
こうして俺は、待ち合わせ時間に間に合うように家を出たのだった。
「おっ!」
待ち合わせ時間まで十分前。
既に草薙は到着したようで、スマホを弄っていた。
制服で見慣れていたから、私服の草薙を見るのは新鮮だった。
草薙も白いTシャツにジーパンと、俺と似た格好だった。
女と違い、男ならこんなもんだ。
「草薙~」
俺は声を掛けながら草薙に近付く。
気付いた草薙が顔を上げた瞬間、俺と目が合った。
軽く手を挙げて『ヨッ!』と合図する。
元気そうだった。
しかし、
「!?」
俺から視線を少し下に向けて数秒後、草薙は泣いていた。
「草薙!?」
駆け付けるまでもない距離だったから、そのまま普通に歩いて草薙に近付く。
「高橋ぃ……」
俺を呼びながらボロボロと涙を流す草薙。
とっくに成人した男の涙に、周りからの視線が痛い。
「草薙、こっち!」
俺はとりあえず、泣いてる草薙の手を取り移動することにした。
(誤解です。俺は何もしていません。無実です)
何度も心の中で呟いた。
「落ち着いたか?」
「……うん」
適当に目についたファーストフード店に入って、適当に飲み物を頼んで席につく。
休日だけど、まだ混む時間帯ではなかったようでラッキーだった。
少し時間が経つと、草薙は泣き止んで来たから一先ず安心した。
「で? 急に泣き出してどうしたんだよ? 俺に久しぶりに会えたのが嬉しくて泣いちゃった的な?」
「ううん」
首を横に振って否定する草薙。
そこは素直に『うん』で良いと思う。
「じゃあ、なんだよ?」
「高橋、………なんで怒ってるの?」
「はい?」
全く予想外の回答だった。
「怒ってる? 俺が? 何に?」
「僕に」
「草薙に? なんで?」
草薙の泣いてた理由はまさかの俺。
意味が分からない。
全く心当たりがない。
無意識に睨んでたとかか?
「だって……、赤い服着てるから」
「ん~?」
アカイフクキテルカラ。
アカいフクキてるから。
赤い服着てるから。
「は? 赤い服……?」
意味が分からない。
どうして赤い服を着てるから怒ってることになるのか。
「意味分からん」
赤い服を着てるからなんだと言うんだ。
「高橋、知らないの? 赤は“興奮”“怒り”“破壊”ってイメージがあるんだよ」
「イメージ? 赤は確か“情熱的”“力強さ”“アクティブ”とかもあっただろ。なんでマイナスに捉えるんだよ」
「友だちと会うのに赤い服はないよ!」
草薙は赤に対して、そんな嫌悪を抱いてただろうか?
いや、赤じゃなくて赤い服を着た俺に嫌悪を抱いてる?
「悪かったよ。じゃあ、何色の服なら良かったんだ? 参考にしたいから教えてくれよ」
笑い飛ばすことも出来たけど、泣くまでのことだ。
これで喧嘩別れとかになったら嫌だ。
「白とか橙とか……あと、茶色とか灰色とか」
「だから、草薙は白いTシャツなんだな。納得」
「白は“清楚”“清潔”“美しさ”だからね!」
「“シンプル”“無垢”ってのもあるよな」
草薙にとって白はオッケーらしい。
「じゃあ逆にダメな色の服は?」
「黄色と青色、あと紫と黒」
「青と黒はなんとなく分かったけど、黄色と紫はアウトなのか?」
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