第32話異変
夜が明けると私達は魔王城を目指し歩き出した。
可怪しい……魔王軍どころか、魔物すら襲って来ないなんて……
すれ違いで主力部隊が王都に進軍した?
それにしては巡回の兵士すらいないなんて…
(気がついていない訳はない…脅威と認証されていない?)
魔王領で既に何回か戦闘をしている、隠蔽はして来たつもりだが発見が遅れる程度だろう。
魔王軍は無能ではない、何かしらの意図があり泳がされていると考えるのが自然だ。
(それにしても魔界なんて言われていたが……)
魔王領は魔界と言われ恐れられていたが、アルカノイドの汚染をされて無い土地は緑豊かで平穏だった。
人の支配地域、辺境に限って言えばどっちが魔界か分からない、それ程までに辺境は荒れていた。
「敵の気配もないから昼にしようか」
私は休憩を提案した、勇者の力を持ち、改造まで施された私は休憩を必要としなかったが、他のメンバーは違う。
モニカもあの強さで鍛えただけの神官であり、プレーンな人間なのだ。
モニカに結界を貼ってもらい、地面に直接座り保存食を口にする。
本当なら日を使って暖かい物を食べさせてやりたいが、魔王城が近い為控えている。
結界を張ってもらってはいるが絶対じゃない、私や神殿上がりのモニカは何でも無いが二人はどうなのだろう。
そんな事を考えているとクーンが話しかけて来る。
「勇者殿心配はいらぬよ、故郷を滅ぼされてから食うに困る事も多かった不満はない」
クーンの言葉にキースは相槌をうっている。
「それにしても魔族の集落は無人だったな」
ふとキースが疑問を口にする、私はこれまでの道のりを思い返す。
いくつかの魔族の集落があったが全て無人だった。
戦闘の形跡があり血痕や魔族の物らしき骨が残されていた。
内乱による粛清でもあったのだろうか?
だが魔族は魔王による絶対的な支配を受けている、しかも今は人間と戦争中、仲間割れなどするだろうか?
この時勇者達は思いもよらなかった……
魔族の村を襲ったのは飢えて狂人となった人間であったことを……
時同じくして、魔王城では四天王スプライトが鬼女コーラより報告をうけていた。
「スプライト様に御報告します、信じられない事ですが暴徒とかした人間達が魔族を食料にしておりました」
「食料?」
スプライトは顔を顰める。
確かに魔王様から聞いた話によれば、飢えた人間は同族は愚か自身の子供すら食う悍ましい生き物だと。
「本当に魔族を食べていたの?」
信頼のおける部下の報告であっても確認せずにはいられなかった。
「奴らは女子供関係なく、解体し食らっておりました……戦闘中部下の何人かは身体を食い千切られました」
「貴方達正規軍が勇者パーティーでも無い人間に遅れをとったというの?」
「はい……奴らは理性が無く、身体の損傷すら考慮せず向かってきました、拳が砕けても意にかえさず殴り掛かってくるのです……そして首や耳などの露出部分に噛み付いてきます……食う為に……」
想定以上に不味い状況だった、まさか人間達がこれ程までの暴力性を秘めていたとは……
私は魔王様に進言する事を決意する、魔王様は食われた者が悪いと言うだろうが私は違う。
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