第31話怪物
ああ……殺しをすると心が痛む。
私は夕食後一人で月を眺めながら考えていた。
だけど仕方がない、人々を守るののが勇者の仕事なんだから、人を襲うのが人であれば魔物と同じく殺さなねばならない。
神殿に勇者として迎えられてからは魔物だけでなく、人も殺した、殺人鬼や山賊、彼らは利益の為に無辜の民を殺す悪だった。
今まで人を殺すのは何度かあったが、今回は堪えた。
彼等とて好きで人ならざる者になったわけじゃない、飢えに苦しみ人の肉を口にしてしまったのだ。
その結果が瘤だらけの怪物の様な姿になり、知性は失われ言葉も通じない。
彼等は悪くない、私が迅速にアルカノイドを倒せなかったからだ。
そして魔王領に近ずく程、食人鬼とかした者に出会った、魔物や魔族との戦いは無く、元人間達をこの手にかけ続けた。
仲間達も助けられないならと、割り切ってくれているが……
「ダイナ……眠れないのか?」
「キース……」
「食事もあまり食べてなかったが……」
キースが心配してくれている、勇者である自分に期待するものは多いが心配してくれる者は少い。
当たり前だ勇者とは強く、人々の剣にならなければならないのだから。
「大丈夫だよキース……」
「…………」
キースは答えない、安心させる為に笑みを浮かべたが失敗だったか?
「本当に平気なんだ……勇者って怪物みたいなものなんだよ、私は呼吸するだけで空気中の水分を吸収する……直接水を飲まなくても何日も生きれる……食事だってそう腸内細菌を利用する事により僅かな量で平気なんだ………」
身体を改造されたことは話したが、具体的な事を話すのは初めてだったな。
「マーシャさんに聞いたよ、君も身体を弄ったんだよね?」
「そうだ、必要だったからそうした……」
「そうか……私にはそこまでする価値は無いよ?」
「そうは思わない……」
キースが本気で言っているがわかる。
自分には勇者としての価値しかないと思っていた、魔物や魔族を殺すただの剣であろうとした。
「前にも言ったが……魔王を倒して勇者を辞めてからがダイナの本当の人生だ……」
「キース……そうだね……」
魔王を倒したら私の気持を彼に伝えよう。
勇者を辞め、ただの女になることが出来るのなら……
私はそう誓った。
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