第29話食人鬼

私達は拠点を被害の少なかった、ヤマと言う街に構えた。

勇者で有ることを隠し、魔王の支配地域までの準備を進めていた。

先の戦い以来魔王軍に動きは無いが、念には念を入れた。

「魔王城までのルートは決まりました」

モニカはテーブルに地図を拡げ説明する。

「だいぶ歩く事になるね…」

地図のルートの殆どは山道だ、恐らく馬車は使えない。

「いくつか村が在りますが、避けた方が良いでしょう…」

「モニカ?」

「魔王城に近づく程食料不足が深刻です…」

モニカの言いたいことは分かった、食料に余裕が無いのだ、村に立寄れば食料を補充するどころか求められるだろう。

「はっきり言います、食料に余裕がありません」

「そうだな…飢えた者は気の毒だが…兵糧の管理は大事だな……」

「クーンさんの言う通りてす、最悪野盗となった農民との戦闘もありえます」

「魔王城まで補充なしで行けるのか?」

キースがルートの距離を見て尋ねた。

「ギリギリですね、途中可能であれば虫や獣等を採取し節約したいところです」

顔見る限りキースもクーンも虫を食べる事には抵抗がないみたいだ。

考えてみればキースはマーシャさんの弟子で、クーンも幼い頃魔王軍に故郷を滅ぼされている。

私が思ってるより過酷な人生だったかもしれないな。

「出発は明日の朝食後、今日は早く休んで下さい」

モニカの言葉に頷いた。

朝食後、朝早く出発する。

これから全て野営だ、魔王倒すまでベットで寝れないだろう。

ルート上に村はあるには有るが、食べ物を求められても応えられない。

私達はひたすら歩く、飲水は魔法で空気中の水分を集められるから心配ない。

幸い、アルカノイド討伐後は驚くほど魔王軍の動きがない。

国境に近づけば時期衝突すると思ったが拍子抜けだ。

異変は昼食の片付けをしている時に起こった。

「妙な気配がする…」

クーンが険しい顔をしていっ

私も妙な気配を感じていた、魔物か?それにしては人間の様な気配が混じっている。

「うあぁぁ」

「あうあうぁ」

「肉……」

うめき声を上げながら野盗らしき者達が現れた。

だが、様子がおかしい目は獣の様にギラギラし、口からは涎を流し、腕や足に腫瘍らしき大きな瘤がついている。

「人間なのか?」

私の疑問に答えたのはモニカだった。

「この者たちは手遅れです…」

「手遅れ?」

「ええ、手足に出来た瘤……これは人を食べた後遺症です……」

人間が人間を食べた?そんな話聞いたこともない、そもそも女神の過去に食料に困った事など…

いや一度だけあった!

五十年前の厄災、アルカノイドの進行!

厄災戦の時も今回と同様の進軍をし飢饉を起こしたという。

「五十年前の厄災戦の記録に有りました、極限の飢えで人の肉を食べる者がでたと、ですが結局死ぬのです、人肉を食べた副作用で肉体は汚染され体中に瘤ができ正気を失って死ぬのです…」

「そうか……」

私は聖剣を抜く、彼等を楽にしてやる為に……











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