第27話光と闇
私達がアルカノイドを倒した事により人間達の士気は向上していた。
残る四天王は先見のアキュラと泡沫のスプライトの二人、ハガとアルカノイドに勝ったとは言え油断は出来ない。
特にアルカノイドはマーシャさんの犠牲無くしては勝てなかった。
そしてアルカノイド放った外来種の性で人々の生活は困窮していた。
作物は枯れ、水路には恐るべき生命力の水草ナガエツルノゲイトウが棲息しており。
船を使った物資の移動が出来ないでいる。
魔王の支配地域までは船を予定していたが、陸路への変更を余儀なくされていた。
今、モニカはその打合せに出掛けている。
私達、三人はナガエツルノゲイトウの駆除作業を手伝っている。
一旦川から引き揚げたあとに乾燥させ、魔法で燃やす、この水草地面でも生きられる上に葉片から再生するという、とんでも無い代物だ。
アルカノイドが人類絶滅の為に選んだ植物はどれも生命力が強い。
水路を塞ぎ、作物を枯らし、毒で人を殺す、短期決戦に持ち込めて本当に良かった。
王国軍からも十分な物資の補充を受けれたし、軍隊を見る限り食料不足は起こってないようだ。
『飢えて死ぬ人がいなければ良いが…』
私はそう思うが実際は無理だろう。
アルカノイドは人類を確実に絶滅出来るよう、計算し行動していた。
私に出来ることは一日も早く魔王を倒し、人々が営みに専念できるようにするしか無いのだから。
「陛下このままだと……辺境特に魔王軍の支配地域に隣接する村で餓死者が多数でます…何卒御慈悲を……」
大臣が沈痛な面持ちで進言したが、王は首を横にふる。
「彼等には犠牲になってもらう…」
「陛下!」
「王国軍の兵糧、そして勇者達の支援物資…余裕は無いのだ……」
「彼等も国民なのですよ!見捨てれば反感を受けます!」
大臣は王を諌めるが王は言う。
「言葉を慎め!見捨てるのではない、助けられ無かったのだ!例の水草のせいで食料の運搬が出来なかった事にするのだ……」
「陛下……敢えて辺境への水路の駆除を後回しに……」
「言うな……魔王軍打倒は何よりも優先される…」
スプライトは魔王城に側近の鬼女コーラを呼び出していた。
「貴方に任務を与えます」
「はっ!スプライト様」
彼女は期待していた、アルカノイド軍が敗北したとは言え人間達も疲弊している。
上司のスプライトは魔王城の護りの要、つまり自分が代理で軍を率いれると思うのは当然の帰結だった。
「貴方に国境の巡回を命じます、人間と遭遇した場合は全て殺しなさい…」
「こちらから攻めるのでは無いのですか?」
「貴方としては前線に出たいのでしょうけど…気がかりなことができてね…」
「いえ、スプライト様の御命令であれば不服はありません」
だがコーラは内心疑問に思った、勇者を探せでは無く、人間に遭遇したら殺せという。
「これが今回支給の備品の目録です」
コーラはスプライトから渡され目録に目を通す。
「こ、これは対人装備に解毒剤まで?勇者相手ならともかく唯の巡回……では?」
「万が一勇者にあったら逃げなさい、貴方は…いや貴方とその部隊はこのあとも必要なの…戦後も……」
コーラは戦後と言う言葉に引っ掛かりを覚えた、勝利の後では無いのかと…
『魔族に救世主が居ないのは、人間より完成された種だから…』
スプライトはかつてアルカノイドと交わした言葉を思い出していた。
『でもね…救世主が居ないと救われない程不完全で、弱いから追い詰められた時の人間は本当に凄いの!それはここの人間も同じだから油断しないでね…』
あの時は聞き流した、異星とは言え人に造られたもの故の評価だと。
たが、魔王から生き残る為には我が子すら喰う事があると聴いてから胸騒ぎがした。
「何だこれは……」
コーラが国境付近の村を訪れるとまるで盗賊の襲撃をうけたかのようだった。
火災の跡が彼方此方にある、だが妙なのは極端に死体が無いということだった。
「コーラ隊長生き残りの子供がいました!」
隊員が衰弱した魔族の子供を抱き抱えてきた。
「容態は?」
「回復魔法をかけたので生命に危険はありません……人間に毒を盛られたようです…」
「間違いなのか?ここは辺境とは言え魔王様の支配地域で人間が毒を盛るだと?」
「この者が言うには井戸に毒を入れられ、苦しんでいるところを人間に襲われたと…」
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