第26話暗雲
私達はアルカノイドに勝った。
沢山の偽善者を出しながら、中でもマーシャさんの奮闘が無ければ私の剣は躱されただろう。
マーシャさんの亡骸はキースが埋葬した。
取り敢えず私達の仕事は終わった、神殿にもどり皆の自分の部屋で休んでいる。
私は一人夜風にあたっているとキースが現れた。
「勝った奴の顔には見えないな…」
「私はアルカノイドを倒していない…彼女は自決したんだ…」
私は皆の祈りの力を束ねて、聖遺物を打ち砕いた。
その瞬間アルカノイドから体が崩壊した、永い時の中で希望としていた。
『救世主の遺骨を失い…彼女は絶望した…』
何故女神イシュタルが何もしなかったのか、彼女は故郷の人に望まれその様に生きただけだ。
敵ではあったが邪悪ではない、彼女が自決したのを感じとって初めての理解できた。
「彼女もまた望まれたんだ……私と同じ様に人々に……」
「ダイナは優しいな…昔から変らねぇな…」
「私が優しい?」
「俺の事を思って才能無いって言ったんだろ?」
「そんな事もあったね…」
キースは私が冷たいたいどをとったのに、真意に気づき本当に護りに来てくれた。
「まだ、魔王を倒したあとの生き方わからないけど……私の側に居て欲しいキース…」
私は魔物を倒す、勇者と言う機械だった。
そんな私がこんな事を言うなんてわからないものだな……
魔王の支配地域、その奥に魔王城がある外見は人の感覚で言えば不気味と感じるデザインだ。
だが、それとは裏腹に内装は豪華であり並の人間の城ではかなわない美しさだった。
その魔王城の王座に魔王スカーレットノヴァは座していた。
姿は魔族の青年といったところだが、その赤い瞳は鋭利な刃物の様に鋭かった。
目の前には美しい魔族の女が頭を垂れている。
四天王泡沫のスプライトである。
「面を上げよ」
スプライトは顔を上げる、その顔には焦りの色が見える。
「御報告します、アルカノイドは戦死……エイリアン・スピーシーズも壊滅しました……」
「そうか……相手は勇者か?」
「初戦は星の魔術師の奇襲だったようですが、止めは勇者が聖遺物を打ち砕いたのが決めててした……」
「相手の被害は?」
「星の魔術師マーシャは絶命しましたが、勇者パーティーは被害なしです…」
「そうか、星の魔術師の助力があったとは言え、あのアルカノイドを倒すとはな…」
魔王はアルカノイドの死を惜しむような口ぶりではあったが、本心は別の所にあるのをスプライトは知っている。
『異星の救世主との戦いを魔王様は望まれた…』
アルカノイドは他の四天王とは違う。
現行の人類を滅ぼし、異星の人類を復活させ、異星の救世主を王に据えた国家を作る。
それを条件に魔王軍に参加していたのだ、それ故事情を知る者からは疎まれていた。
魔王は異星の救世主の力に興味を持ち、戦いを望んだのだ。
「奴が真に我の部下であればな?此度の戦いでの一番の功労者であろうよ」
魔王は恐ろしい笑みを浮かべながら言う。
アルカノイドの軍が一番人間を殺した、これからでるであろう餓死者も数に入れれば、歴代の四天王でもトップだろう。
『皮肉なものね、人間に一番敬意を持っていた者が、最も人を殺したなんて』
アルカノイドは異星とは言え、現行人類と似た種に創造された。
それ故に宿敵である星の英雄、魔術師に敬意を抱き、現行人類も絶滅はさせるが好意はあるという思想だった。
「スプライトよ…もしも、我が勇者に倒されたら人間共は何をすると思う?」
スプライトは一瞬質問の意図を計りかねたが、考え答える。
「有りえぬことですが……そうてすね復興と外来種の駆除でしょうか?」
「それが一般的な回答であろうな…」
「他にあるでしょうか?」
スプライトの問に魔王はククッと笑い答える。
「アルカノイドが言っておったよ、もしも自分が途中で倒されたら人間どもが進軍と略奪にくるとな!」
「は?」
スプライトは破顔する人間が略奪しに来る?
あり得ない事だと彼女は思った。
「ハハッ、お主でもその様な顔をするのだな」
「御冗談を……人間が略奪に来るなど…」
「奴は人間を我軍で最も理解していた、人間は生存の為なら何でもやると!奴の星の歴史では弱った我が子を他者に殺させ!仇討ちの゙大義のもと他者を殺し、我が子と相手を塩漬けにして保存食にしたという」
私は驚愕した追い詰められた。
人間が我が子と同族を喰らう、そんな事実は確認されていない。
この世界は女神の加護により常に豊作であった。
争いにより生産数が落ちることは勿論あった、しかし食料備蓄よりも生存者数が少なかったのだ。
それ故にこの世界の人間は飢餓状態を知らないのだ。
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