第19話女勇者と魔術師

私はキースの脇で横になるが眠れない、考えてみると父以外の男性と二人きりというのは初めてだ。

「キース…」

私は彼の名を呟く胸が高鳴る。

自分のこの気持ちは何なのだろう、生命の危機に対して子孫を残そうという本能なのか…

まさか恋?わからない

「う…ここは?」

「キース?気がついたんだね」

「ダイナ怪我は?」

キースは本当に私が大事なんだ、怪我をしたのはキースの方なのに、私は用意していたコップに魔法で水を出す。

「食べるものは見つからなかった、取り敢えず水だけでも…」

「ありがとうよ…」

「キースはマーシャさんからアルカノイドの事を聴いていたの?」

「もしも、あったら逃げろってな…」 

流星の侵略者アルカノイド、五十年前に星の英雄に倒された厄災にして魔王軍四天王……

「ダイナ心配するな!」

「うん…」

「厄災だろうと魔王だろうと、ダイナが心から笑える時まで俺がいるからよ!」

これが恋なのだろうか?

ここには監視役のモニカは居ない、一度くらいしてみても良いよね。

「キース…私は勇者として今日まで生きて来た、だからこういう時…普通の女性がどう誘うかわからない…」

「ダイナ?」

「だ、抱いて欲しい……せ、性行為をキースとしてみたいんだ……訳あって純潔は失ってるが…行為はしたことがないんだ…」

くっ、凄く恥ずかしい!

したことがないのに非処女とか引いてないかな?

「……あ」

キースは私にキスをして、ゆっくりと押した。

「キースに任せるから……好きに……」 

私はキースに全てを見せた、見た目は魔法や整形で取り繕っているが、洞察力のあるキースは分かってしまっただろう。

比較対象がないので違ってるのかも、しれないが想い人とするのがこんなにも熱く、激しい物だとは知らなかった。

体を預けて、はっきりした私はキースが好きなのだと。



翌日、私は朝早く起きて狩りに出かける。

キースの寝顔を観ていたらムラムラというのか?

端的に言うと性行為をしたくなってしまった、早朝から……

『早朝からしたくなるとか……普通なのか?』

キースを襲う前に私は小屋をでるしかなかった。

兎か鹿が居れば良いが、辺りを見回すがこれまで虫しか居なかった。

枯れた倒木を割ると中に幼虫がいた、私は生のまま齧る。

「悪くないな、何も取れなかったらキースと食べよう」

私は特殊な訓練を受けているので平気だが、普通の人は加熱しないと病気になる可能性が高い。

キースと食べるとするなら焼いてから食べないとね。


「キース兎が捕れたよ、食べよう」

「すまねぇ…寝過しちまった」

私が帰るとキースは起きていた。

私は兎を解体すると木の枝に刺して、囲炉裏の火でじっくりと焼いた。

焼けた肉を二人で食べた、肉質は良いが塩がないのが残念だ。

「これからどうする?」

「今日1日滞在しよう、モニカが生きていれば此処に来るから、彼女は私が何処にいるかわかるから…」

「監視されてるのか?」

「うん…私の体わかったよね?改造のあと…その過程で純潔も……」

「ああ……勇者の力だけじゃ駄目だったのか?」

「わからない……何か焦っているようだった……私もより強くなれるならと同意したんだ…」

「そうか……辞めたくなったら言ってくれ…」

勇者を辞めたくなったらか、私が辞めたいと言えば人を殺してでも辞めさせるだろう。

「それはないよキース、そんな事を言ったら君は……」

「わかってるって!ダイナの人生は魔王を倒して初めて始まるんだ!」

魔王を倒したあとの人生……

「考えた事も無かった……」

「勝ってから考えればいいさ…」

さてモニカが来るまで何をしようか?

鍛錬?カロリーの低い兎肉と虫しか食べて無いからやめたほうがいいかな?

うーん、恥ずかしいけど、こんなチャンスめったにないから思い切って誘って……

「キースさえ良ければだ……」

「勇者様ー!!」

モニカの呼ぶ声が聴こえた…

もっとゆっくり来ればいいのに……



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