第16話聖遺物

「こんにちは旅の人…」

美しい赤眼の女は橋を渡りきり、私達に挨拶する。

「貴方……右脇に何を埋め込んでるの?」

モニカは女に尋ねる、すると女はニコリと笑った。

「この世界の神官でもわかるのね嬉しいわ!」 

女は全く敵意を持っていない、だけど直感がする剣を離してはいけないと。

「これは御守りのようなものでね、私の故郷の救世主の遺骨が入っているの!悟りを開き全て苦痛から逃れた凄い人なの!」

『救世主の遺骨……馬鹿な!畏敬の念を抱い聖遺物のせいだと言うの……しかし悟りを開き全ての苦痛から逃れた聖人?聞いたことがない…何者なの?』

「ところでこの都市の人を知らない?」

「皆、亡くなったわ、この橋を渡った空き地に埋められてる」

都市の人間が全て亡くなった?

血痕の一つのなかったいったいどうやって?

「お急ぎで無ければ祈って上げて下さい」

彼女は名も告げず、去ろうとする

「私はダイナ、君の名前は?…」

彼女は私の名を聞いても顔色一つ変えない。

人間では無いようだが魔王軍では無いのか?

「アルカノイドです、ダイナさん」

普通に名のった…だが何なんだ彼女の異物感は?

「そうか、悪かったな呼び止めて!行っていいぜ!」

キースがそう言うと彼女は頭を下げて立ち去っていく。

「待っ…」

彼女を呼び止めようした、私の手をキースが掴んだ。

「理由は後で話す、食料は諦めて逃げるぞ…」

「ここはキースの言う通りにしましょう…」

モニカが焦っている、彼女が何だというの。

聖剣は全く反応しなかった。

私達は都市から逃げ出す、もと来た道を戻り都市の外まででる。

「二人ともどうしたの?」

「確かに只者ではないようだったが…」

「師匠が言っていたんだ、もしもアルカノイドと名乗る生き物とあったら逃げろと…」

生き物、確かにそうとしか言えない、人間でも魔族とも本質的に違うのは分かった。

「あの女は本物の聖遺物を持っています、神官の私にはわかるのです……」



私達は食料を求めて近くの農村まで歩いた、昼食を取る以外は全て歩いたのだ。

その回あって、早くに村に着くことが出きたが様子がおかしい。

「この香りプソーでも?」 

甘酸っぱい香りの白い煙が村全体を包んでいた。

よく見ると村人が倒れている。

「モニカ毒かもしれない浄化して!」

モニカが浄化の呪文を唱えると煙が消えた。

私は倒れている人に声を掛けるが返事が無い、生きてはいるが何かの中毒症状のようだ。

目は虚ろで口からは涎を流している。

「酷い事をするわね…」

奥から彼女が現れたのだ。

「アルカノイド……君がやったのか?」

「ええ、痛み無く快楽の内に死ねるように慈悲を掛けたのだけのだけど、気に入らなかった?」

悪びれなく言う、彼女は本気で慈悲を掛けたつもりなのだ。

私達は構える、彼女のやったことを見た以上逃げることはできない。

「逃げるなら追いはしないわ」

「ああ、人間を殺した君から逃げない」

「そう…なら改めて名乗りましょう、魔王軍四天王、流星の侵略者アルカノイド」

流星の侵略者?

彼女がアキュラの言っていた、人間を確実に絶滅できると言っていた人物なのか。

魔王軍の四天王だと言うのに聖剣は何時もの輝きがない。

「イネイ!!」

突然アルカノイドの足元から巨大な霜柱が現れる!

「キース!」

「俺が抑えている内に!」

アルカノイドの体が凍結している!

私は聖剣に闘気を篭める!

「ビッグブロー!」

「マンチニール!」

私が渾身の一撃を放つと同時に、彼女の前に巨木が実現した。

私は構わず斬りかかる!

「ぐっ、この程度!!」

巨木は想定より固いが力で押し切る!

巨木ごとアルカノイドを切り倒す。

「貴方凄い強いのね……」

彼女は赤い血を流しながら呟いた。

「ぐっ!」

私の体に突然激痛がはしる。

『これは樹液か?』

マンチニールと呼ばれた、木の樹液に触れた部分が酷い炎症を起こしている。

私が獲得した毒耐性を貫通している?

「マンチニールは私の故郷でも固く、全体に強い毒を持ってる」

マンチニール?聞いたことがない魔王領独自の植物か?







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