第12話四天王

私は聖剣を開放した反動で片膝をついていた。

息は荒れ、心臓の鼓動も速い。

『隙を付いたつもりだったが直前で防がれた?』

薄暗いうちから気配を消し、遮蔽物のない草原でモニカの結界の中で隙を伺っていた。

私に対する殺意を感じ、そこに目掛け聖剣を放ったが倒すには至らなかった。

大きな魔力反応が二つ、四天王で間違いない。

「一人は多分無傷だ…ここに真っすぐ一人向かってくる…」

一つの反応が弱まっている、虫の統率が乱れたことから推測するにハガの反応だろう。

「敵は一人か……私が一人で相手をしよう」

「私は大丈夫だよ」

私は呼吸を整え答える。

「何、少し間モニカの結界ないで休んでくれ…こういう時の仲間だろ?」

「すまない…」

私は彼女の提案を受け入れ、モニカの結界で休む事にした。

「認識阻害の魔術を使っているのか、気配はするが見えないな…」

私は結界内からクーンの様子を伺う、何かあれば

すぐ駆けつけられるように。

「そこか!月光!」

クーンは闘気剣を放った。

何だ?クーンが闘気剣を放つより前に虚空から強力な斬撃が放たれた。

斬撃はクーンの闘気を切り裂き消滅させる。

虚空から男の姿が現れる。

「お前は!!」

男の顔を見たクーンが叫んだ、以前魔王軍に故郷を滅ぼされたと言っていたが…

「勇者は隠れてるのか、想像とおりだな…」

男はつまらなそうに呟く。

一見、覇気のない男に視えるが本質は違う、強い私は一目見て理解した。

「勇者、近くにいるんだろ?四天王先見のアキュラだ、出てこなくていいからそのまま聴いてくれ……俺達は撤退するから追撃はやめろ…」

一瞬、脳が理解を拒んだ、撤退するから追撃するな?

アキュラと言う男は命乞いをしにきたというのか

「逃げるのか?」

クーンの問いかけにアキュラは顔もあわせず。

「降伏しなかった時点で人間の絶滅は確定した、無駄なことはしたくない」

「どいうことだ?」

「俺達が帰ったあと……新任がくる、そいつが人間を絶滅させる……どうせ死ぬなら後の方がいいだろ?」

つまり次に軍を率いて来るものが、確実に勝利するので戦いたくないというの?

「私達は勝つよ…お前にも!次に来るやつにもな!」

「お前は……あの時のつまらねえ剣技を使う連中の仲間だったか?」

「つまらないか、今一度試してみろ!」

クーンは一瞬でアキュラの後にまわりこむと、彼女の剣技で高威力の桜花を叩き込んだ。

「くっ」

男は振り向きもせず、クーンの剣をうけとめていた。

だが、彼女は冷静に次の一手を打つ。

彼女の持つ最速の風牙、私は決まったと思ったがアキュラは既に魔法障壁を展開しており、ダメージを与えられない。

私はある仮説を立て、確認するするために結界から飛び出すと死角から剣を放つ!

私の不意打ちは躱された、私の姿を見ずに!

『まさか未来が見えている?』

伝説の中には未来視の魔眼なるものが登場する、この男は未来が視えているというのか。

「勇者か……想像と違ったな…」

「四天王アキュラをここで倒す!モニカ、クーン行くよ!」

魔王城前に一人でも多くの四天王を倒しておきたい、逃がす訳にはいかない。

「仕方ないか……」

アキュラは刀を両手で持ち、構えをとる、やる気になったようだ。

「!!」

突如強烈な魔力の波動が発生した。

『ハガが居た地点で魔力が増大している!』

「あの野郎……」

アキュラはそう呟くと構えを解いた。

「逃げるのか!」

クーンが仇に向かって叫ぶ。

「そうだ!ハガが撤退しない以上戦う意味はない…俺は時間稼ぎ来ただけだ…」

魔力の発生場所をみると、山のように多いな物体が此方にむかってくる。

それは真っ黒で巨大な虫の様だった。

「虫のキメラ?」

その巨大な物体は様々な虫の特徴を持った、虫の合成獣といった見た目だった。

カマキリの様な目が私達を睨んだ。

「儂は魔王軍四天王魔蟲のハガ!」

「ハガ?」

降伏勧告をしてきた時と姿が違う。

「驚いたか!これぞ儂の切り札インセクトロードじゃ!!」








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