第11話開戦
私達三人は僅かな魔力の残滓を頼りにハガの、居場所を特定しようとしていた。
薄暗い中気配を消しながら進む、大まかな位置はわかるが、やはり相手が動いてからでないと無理そうだ。
負傷兵の避難は済んだだろうか?
「勇者殿…本陣にはキースが居る心配するな」
クーンが小声で話しかけて来た。
顔に出てしまっていたか、いけないな勇者が仲間に心配かけるとは…
「全く…勇者殿は自分の身は顧みないのに人の心配ばかりだな…」
クーンの言う通りだった自分の苦痛は我慢すれば良いだけだ、だが人の苦痛は辛い。
「心配いりませんよ、勇者様が心置きなく四天王と戦えるようにキースに本陣を任せたんですから…」
モニカは微笑みながら言う、私もこれぐらい面の皮が厚ければな気取られないのだがな。
「夜が明けたのう……ふっ」
ハガは朝日を見ながら笑う。
「愚か者共が!降伏すれば生き残れたものを!」
ハガの魔力に反応し、夥しい数の虫が群体を成して飛び立った。
「あれか……」
キースは前方からくる黒い靄を見つけた、魔力で視力を強化し全容を確かめる。
虫だ、様々な虫がまるで意識を持つかのように真っすぐ此方に向かってくる。
キースは魔力を練る、虫達はプラズマで形成された牢獄に囚われる。
「トカマク!!」
キースの呪文を唱える!
プラズマの牢獄の中で爆発が起こり光熱により虫達は消し飛ぶか、生き残りがなおも進む、彼らに知能はなく、恐怖もない、反射しているのだ。
ただ獲物ある方向へ移動し、捕獲し食べる、故に虫達は止まらない。
「取りこぼしは任せた!」
キースは他の魔術師にそう言うと高威力の呪文を連射する。
軍所属の魔術師達はキースの魔力に驚愕する。
これが勇者パーティーに選ばれた者の力!
魔術師達はキースに続けと奮戦する。
「ふむ、中々強力な呪文を使う者がいるのう」
ハガは眩い光を観ながらいう、自分の虫達が次々と消し炭になっているのに余裕があった。
「遊びは終わりにして撤退するぞ!」
「アキュラよ…どうした?」
「あの高威力の呪文……想像だが勇者パーティーの者だろう……潮時だ」
アキュラはハガに忠告する。
ハガは考える撤退すればもう出番はない。
アルカノイドが出陣すれば全てが終わる、彼女は嫌われていたが実力は認められていた。
ハガの中に勇者の首を取る!
最後に手柄を立てるチャンスが現れたと!
そういった野心が生まれてしまった。
「アキュラよ先に撤退しろ!儂は勇者の首をとる!!」
アキュラはこれらの展開を想像する、もし勇者が来ていたら何が起こるのかを……
『これは!』
アキュラの脳裏に浮かんだのは光の激流に咽まれる自分とハガの姿だった。
地面に刀を突き刺し闘気を全開にして叫ぶ。
「ハガ!奇襲だ防御壁を張れ!」
「は?敵の気配なぞどこにも……」
ハガは虫達と繋がって広範囲の索敵が可能であり、今も何も感じない。
『!?』
突如として、草原の真ん中に人間の反応が二つ現れた。
次の瞬間!反応があった地点から光が発生する!
聖剣の魔を滅する光が激流となり二人を呑み込んだ。
「虫が飛び去って行く……」
兵士の一人が尻もちをつきながら言う、彼の全身をカジッていた虫は光が消えた辺りから、彼を食べるのを辞めて空に飛び去っていく。
彼を襲って居た虫だけではなく、全ての虫が統率を失い飛び去っていく。
「成功したのか?」
キースは呟くが何か胸騒ぎがした。
ダイナの魔力反応は感じる生きて入る、だが聖剣を開放したとなれば疲労しているはず。
「すまねえ!俺は勇者に合流する!」
キースは軍所属の魔術師にそう伝えるとダイナの元に向った。
「お、おのれ!」
ハガは体の半分程が溶けていた、不意を疲れ防御壁が間に合わなかった。
アキュラの言葉がなければ、今頃体の全てが蒸発し死んでいただろう。
「殿は務める…撤退し傷を癒やせ、魔王様も責はすまい…」
アキュラは踵を返すと、時間を稼ぐ為に勇者の元に向かう。
ハガは全身が沸騰するほどの怒りに満ちていた、自分が逃げる?
偉大なる魔王軍四天王魔蟲のハガが?
「そんなことは!断じて許させぬ!勇者の小娘が!偉大なる儂の真の姿を見せてくれるわ!」
ハガが叫ぶと虫たちが体にたかり始めた。
ハガの体が虫に喰われて無くなってゆき、そして何かが産まれようとしていた。
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