第10話決戦前夜

当然の事に陣中は騒然とした。

あの魔王軍が降伏勧告をしてきたのだ、お互いに絶滅するまで殺るしかないと思っていた、私には信じられなかった。

『奴隷にでもするき?』

魔族は人間を下に見ている、命は助かっても尊厳は破壊されるだろう。

「勇者様!先程の件で軍議をしたいとの事です!」

「わかりました」

私は兵士に連れられ軍議が行われるテントに向かう、中には既に最高責任者を始め各部隊の小隊長が集まっていた。

「結論から言うと降伏はできない、私には決めれるのは戦線の後退であって降伏する権利はない……」

降伏の決定が出来る者は国王だ、早馬を走らせても間に合わない。

「玉砕覚悟で仕掛けるしか……」

「それしかないな…」

「魔族は信用ならん…罠かも知れん…」 

どうやら戦う方向に成りそうだ。

「大将殿、私に作戦があります」

「勇者様何か妙案があるのですか?」

「明け方に焚き火をして下さい、敵はそれを総攻撃の前の食事の準備と思うはずです」

「囮になれと?」 

「私達パーティーが敵の大将首を取ります、それしか勝機はありません」

沈黙が訪れる、死にたくないないのはわかる、それでもやってもらはないと。

「若者と負傷兵は非難して下さい、ある程度の人数が居ないと囮だと気づかれます」 

「わかった…囮は引き受けよう」

「大将殿、ありがとうございます」

良かった囮を引き受けてくれた、これで奇襲の成功率があがった。

「勇者様、一つ提案があるのですが」

私に参加者の一人が提案してきた。

「何でしょうか?」

「モニカ様から伺ったのですが、キース殿は凄い魔術師だとか?ぜひ我軍と供に囮役に参加してほしのです」

「四天王相手に戦力を分断しろというのですか?」 

「勇者様の心配もわかりますが、敵の主戦力の魔蟲は魔法が有効です、魔術師の手が足りないのです」

「ふむ、モニカ様はあの若さで神官第5位だ、その彼女が言うのだからキース殿も凄い魔術師なのでしょう」

「モニカ様が実力を認めているなら心強い!勇者様ぜひキース殿をこちらに!」

こういう事だったのか!

モニカが報酬の前渡しとして、神官の位を上げる事を望んだのは!

以前のモニカの位は第6位、それでも同世代より一つ上だった。

第5位になるとここまで影響力があるのか、私は世の中の事を知らなすぎた。

私は彼らの要請に了承するしか無かった。


「すまない、キースも四天王との戦いに参加したかったんでしょ?」

仲間の所に戻ると事情を説明し、彼と二人きりにしてもらってキースに頭を下げた。

私はキースも供に大将首を取り、手柄を挙げたいと考えてると思って居たからだ。

「気にすんな囮も重要な役だ!ダイナが勝てればそれでいい…」

私が勝てば良い?

それは勇者が居れば魔王討伐が成るということなのか?

「俺はダイナが心から笑える日まで死なねえからよ、ダイナも死ぬなよ…」

「……え?」

私は頬に熱が帯びるのを感じた。

そうだった、彼は私を一度も勇者と言う象徴ではなく、一人の人間としてずっと観てくれていた。

 

 

「落ち着けハガ……夜明けまではまだ間がある…」

 ハガはテント内で落ち着き無く、ウロウロしていた。

「アキュラは納得しておるのか?ここまで来てあの女にかわれとは!?」

あの女とはアルカノイドのことだ、彼女はその生まれ故に魔王軍内でも嫌うものは多い。

「仕方あるまい…魔王様が決めたことだ、それに手駒を温存出来ると考えれば得だろう?」

「そうだがな……よりにもよってアルカノイドとは……」

「とにかく少し休め、人間達が何かするなら夜明け間際だろう」

「そうじゃな、夜明けまでは待ってやると言った手前打って出れんしの……」

「ハガ様!人間達の陣から多数の火が視えます」

伝令が人間の動きを伝えて来た。

「降伏するつもりはないようだな……」

態々火を起してこちらの注意を引いている?

降伏するつもりなら白旗を篝火で照らすはず。

「アキュラよ、撤退前に少しぐらい遊んでも良いのではないか?」

「深追いはするなよ、勇者が到着してるのかも知れん…」









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