第9話降伏勧告

私達はシテーピ草原を目指した、幸い魔物との小競り合いはあったが、村で受けた大規模な襲撃は無かった。

夜襲を警戒してずっと野営だったから、次の街ではモニカに昼食の予算を増やしてもらっている。

「明日には魔王軍本体と戦う事になる、皆で生き残るよ!」

私の激励に仲間たちは頷いた、このパーティーなら勝てる私はそう信じていた。



「なんじゃと!」

魔王軍のテントの中で四天王ハガと四天王スプライトの部下コーラが話していた。

コーラは鬼女と言う種族で、赤い髪の筋肉質の女性だった。

「降伏勧告をしたあと、人間達が降伏しない場合はハガ様とアキュラ様を含めた全軍撤退していただきます……」

「そのまま儂のインセクト軍団で攻めるのではないのか!?」

「征服から目的を絶滅に変更し、アルカノイド様を総大将にインヴェイド・エリアン・スピシーズが出陣します」 

「あの女が儂の後任じゃと?スプライトならともかく納得できん!」

「魔王スカーレットノヴァ様の勅命です」

彼女は書面をハガに渡した。

「……わかった下がれ…」

「はっ」

彼女は敬礼をするとその場を後にした。

「コーラ、使いご苦労だったな」

「アキュラ様!」

アキュラは彼女に労いの言葉を掛ける。

「次はスプライトがでると思っていたが?」

「それが絶滅作戦なら、アルカノイド様が適任だと魔王様がご指名になられて…」

アキュラは同士スプライトの事を思い浮かべる、彼女は人類絶滅に否定的だった。

支配してこそ戦争の意味があると魔王に進言していた。

「こちらが優勢だが、おそらく降伏しない」

「何故でしょう?勇者が生きているからですか?」

アキュラはため息をつく。

「それもあるが……アルカノイドの存在を知る者は人間側には少ないだろうからな……」

「アルカノイド様はそれ程強いのですか?」

「アルカノイドの二つ名は―――だ……」

それは五十年前にこの世界に現れた災害の゙名だった。





私達は街で少しばかり豪華な食事を摂っていた。

最近は保存食ばかりだったから、より美味しく感じた。

「明日、王国軍と合流後に魔王軍との戦闘に入る」

「作戦は?」

「王国軍に囮になって貰い、大将の暗殺でしょう」

クーンの問にモニカが答えた。

最前線では虫の魔物に襲われてると言う、魔王軍のイセンクト部隊なのは確かだ。

「そうだね……大将のはほぼ四天王ハガで間違いない、ハガさえ倒せば虫は統率を失う」

「相手の場所はわかるのか?」

「モニカの探知能力なら問題ないだろう、必要なばあいはキースにもサポートしてもらう」

「わかった…任せろ」

打ち合わせを終えると私達は再び歩き出す。

もう少しで目的の草原が見えてくるはず、そうすれば王国軍の本陣はすぐそこだ。

「あれが王国軍の本陣ですね」

モニカが指を指し示すと無数のテントと軍馬、そして兵士の姿が見えた。

「神官の私が先に行って話を通してきますね」

モニカが話をしに行って暫くすると、兵士が迎えにきた。

「勇者様、お持ちしておりました、テントを用意してありますので案内します」

案内されたテントは四人で使ってもゆとりがあった。

四人?キースと一緒に寝る?

『まぁ…四人一緒なら男女の間違いもないだろしって…』

男女の間違い?私は何を考えているだ。

私は頭を振り考えを否定した。

「勇者様、この辺りの水質は悪いのでエールになりますが宜しいですか?」

この辺は水質が悪いから水が飲め無いのか、確かに水質の悪い地域では水代わりにエール飲む、アルコールにより細菌感染のリスクが少なくなる。

「エールでお願いします」

幸いこのパーティーに飲みない人は居ない。

私やモニカは生水程度では体調を崩さないが、キース達が飲みにくいだろう。

「わかりました」

兵士はそう言うとエールの入ったジョッキを運んできてくれた。

一口飲んでみる、最近になり喉越しなるものがわかるようになった。

エールも悪くない、いや、皆で飲んでいるから悪くないのか?

「戦いは明日以降になるだろから……」

私が今日はゆっくり休もうと言おうとしたら、頭上から声が響いた。


「魔王軍四天王ハガである!人間どもよきくが良

!」

私達は直ぐ様テントを出て、空を見上げる。

空には魔族の老人の顔が映し出されていた。

「魔王スカーレットノヴァ様は降伏を許された!これが最後通告である、降伏の意志あらば明朝までに白旗をあげよ!無ければ総攻撃をかける、よく考えるのだな!」














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