第7話大衆

「魔王軍の仕業にするだって?村を焼くにしても自分達で背負わないと!」

「ダイナ……大衆と言うものは貴方が思っている以上に勝手な物なのです、幸いここに勇者パーティーが来ている事は誰も知りません」

「モニカ…」

「勇者パーティーが居たのに村が壊滅した、これは大衆に非難されます、彼等は勝手なものです

勝手に期待し失敗すれば非難し、成功しても口だけです、聖剣さえ使わなければ勇者がここに居た痕跡は残りません」

モニカの言い分も解る、勇者である自分達がいて村が壊滅、しかも逃げる時に焼き払うとしれたら……

「聖剣を使う……汚れ役をするなら私がやる!」

この身は既に汚れている、今更人の評判など!

「俺がやるぜ……」

「キース!」

「俺が勇者の意向を無視して、逃げる為に村を焼き払ったことにしな……」

「責任は貴方が取ってくれるというのですか?」

モニカはキースに問いかけた。

「但し責任をとるのは魔王討伐が終わってからだ……」

「責任をとるのは魔王討伐の後ですか……」

モニカは一瞬だけ苦虫を噛み潰したような顔をした、彼女はキースを追放したいらしい。

「ああ、誓いを守れてねぇからな……それで良いならやるぜ…」

誓い?私を護ると言うこと馬鹿な、私は勇者何だから護られる必要はないのに!


「出てこい!勇者!」

何処からともなく声がした。

「俺は魔王軍レッドキャップだ!せっかくよお!パラサイト部隊を用意したのに無視して帰るのかよ!!」

どうやら声の主は襲撃の主犯らしい、魔王軍と自ら名乗っている。

態々呼びかけているということは、こちらの位置は特定されていない。

「モニカ魔物の位置を割り出して!」

「もうこの村は終わりです、村ごとレッドキャップとやらを焼いた方が得だと思いますが?」

言い方はあれだかモニカの意見は正しい、汚染された土地を焼き払う方が効率がいい。

だが故郷を焼き払われた人の気持ちを考えるとこの方が良いはずだ。

「モニカ、これは私の心の問題なんだ」

「………」

「信徒は助けられたといったね?焼け野原になった村を見て信徒の信仰は揺らがないかい?」

モニカは私の言葉にため息をつく。

「既に位置は把握しますが罠ですよ?」

「それでも頼む…」

「村の墓地の方に魔物の反応があります、その中の一つ大きな反応、先程呼び掛けてきた魔物でしょう…」


「シャインスパーク!」

私は結界が解かれると同時に墓地に向かって聖剣を放つ、光の清流が虫と不浄を消し去る。

墓地まで一気に進む、小さい虫がたかって来るだけで大きな魔物が来ない。

墓地の入口で一見無事に見える、村人が助けを求めてきた。

「勇者様!助けて下さい!」

私は聖剣で両断する、切断面から無数のハエの魔物が飛び出してくる。

「プラーミャ!」

キースが火炎魔法でハエを焼き払う。

「ダイナ!聖剣はレッドキャップとやらに取っておけ!」

クーンが魔物を寄生された人間ごと粉砕する。

相手はこちらの心を抉ろうと生きた人間のような演技をする、このパーティーには騙される者は居ないが、私は憤りを感じた。

魔物の群を倒しながら墓地に到達する。

「ようやく来たな勇者!」

赤い帽子を被った魔物が待ち構えていた、バッタの様な姿で二本足で立っている。

「俺は魔王軍…!?」

「興味ないから!」

私は奴が喋り終わる前に斬撃を放つ、魔物は真っ二つになる、私は手柄に興味はない故に魔物であれば名を聞く必要はない。

「酷えな、名乗り位させろ」

さっきのは身代わりか、死体は残っている部下を犠牲にして、私の実力を測ったのか?

地中から無数の遺体が這い出てくる、ゾンビかと思ったが違う。

虫が遺体を喰っている、虫が遺体を動かしている。

虫達は遺体を喰いながら襲ってくる、羽根の生えた虫は空中から、羽根の無いものは地面を這って向かってくる。

私とキースは火炎呪文で虫を焼き払うが数が多い。

「モニカ!敵の本体は!」

モニカは魔物の探知能力にも優れている。

「地中に居ました」

モニカはそう言うと地面に手を当て魔力を流した、すると私の前方の地面が割れ大きな百足が現れる。

「また、お前か!俺の分身をぶん殴った神官だな!」

喋る百足は帽子は被って無かったが、頭頂部が赤くなっていた。

百足はモニカを睨みつける、余所見をするとは余裕だな……

私はジャンプし上空から聖剣を振り下ろす。

レッドキャップは無数の腕で受け止める、奴の皮膚は鋼鉄の様な手応えだった。

『想定内だ……』

私は密接した状態から闘気を込める!

聖剣が私の闘気、生命エネルギーに反応し斬れ味が上がる。

「あっ?」

レッドキャップがトボけた声をあげる、奴の手に罅が入った、そこからは一瞬だった。

魔物は両断され緑の体液が辺りに飛び散った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る