第6話夜襲
宿での夕食時、私は久しぶりに果実酒を口にした、付き合いのつもりで呑んだのだが悪くなかった、寧ろ美味しく感じられた。
『酔うことも出来ないか…』
ほんの一瞬だけ気分が高揚するが、獲得させられた耐毒性で平常に戻る。
勇者として必要な機能なのはわかるが、オンオフできれば良かったのにと思う。
私は勝利の美酒という物にも酔うことは出来ないのだろう、そもそも勝利に酔ってはいけない。
勝つのは当然で無ければならないのだから、敗北は無辜の人々死を意味する。
「ダイナ体の調整は必要ですか?」
部屋で休んでいるとモニカが話しかけてきた。
「大丈夫だよ」
「そうですか、不具合があれば言って下さい
…私は信徒の家を訪ねます」
「すまない金策だね?」
「ええ、この先の信徒の懐の具居合が良いとは限りませんから…」
モニカは笑顔で答えるが、内心は笑っていない、彼女は信仰と力と金を信じている。
それ故信徒には優しい、寄付を寄越す信徒には特に優しくする、金額の大小ではなく出来ることをした所を評価してるといった。
だから私が助けた人々の事を口だけと見下している、私は見返りを求めてはいないのだけど。
その割にはキースの事を認めていない、勇者パティーに加入するほどの力を持っているのに。
私はイシュタル様にの信徒家を数件周った、正式な信徒は教団に名簿がありそれを頼りに訪ねた。
皆、金や保存食を分けてくれた。
やはり信仰心のある人間はまともですね。
思ったより金は集まらなかったが、断わるものが居なかったので気分がいい。
「へへ、女がこんな暗い路地に入るなんて危ないぜ……」
裏路地に入ると男が声を掛けてきた。
「何か御用ですか?つけていらしたようです
が?」
「ちょっと付き合って欲し……」
男は最後まで言葉を発することができなかった、モニカが光を放ち男の゙頭をふっ飛ばしたのだ。
「…………マジかよ?いきなり頭を吹っ飛ばすとかないわ………」
頭のない死体から声が聞こえる、先程までの声とは違う声、そして首元からムカデのような魔物が出てくる。
「やはり魔物ですか……面倒ですね…」
モニカは徐ろに手袋を外した。
私は胸騒ぎを覚え剣を手に取り部屋に出る。
「キース!クーン!嫌な予感がする武装してきてくれ!」
私は二人を部屋から呼び出す、他の部屋にも泊まり客が居たはずだが気配がない。
「どうした?」
「敵襲か!」
「外で説明する!」
私は宿の外に出る。
人の気配がない!
路上だけでは無く、民家からも人の気配が突然消えた。
幸い月の光である程度の視界は確保出来ている。
「こりゃあ……周りの人間は殺されてるな…」
「キース?」
「普通の人間でも魔力がある生きてりゃな…」
キースは辺りの魔力反応を見て判断しようだ、残念だが私もどう意見だ。
だが、どうやって?
さっきまで何の異変も感じなかった、ほんの一瞬で人の気配と魔物気配が入れ替わった。
「ダイナ!モニカは一緒ではないのか!」
「大事な用で別行動だ!」
信徒の家に金を貰いに行ったとは言えない、クーンの問には大事な用とだけ言った。
不味いな、私も回復呪文を使えるとはいえモニカほどではない。
モニカは大丈夫だろう、一人なら手袋を外して何とかする。
「私も回復呪文を使えるがモニカ程じゃない!無理をしないでくれ!」
「助けて!!お父さんが魔物に!」
幼い少女が助けを求めてきた、私は思わず手を差し出そうとしたが……
「アゴーニ!」
キースが魔力弾で少女を吹き飛ばした。
「ダイナ!もうそいつは死んでる!」
少女だった肉片からもぞもぞと虫が湧き出た。
私は火炎呪文で死体ごと虫を焼き払う。
「寄生タイプの魔物か……」
私は理解した、寄生した魔物が目覚め宿主である人間を一瞬で殺したのだ。
「どうする!モニカと合流できれば最悪村ごと焼けるが!」
「気配を探ってみたが人の気配はない……」
クーン言う通り近くに人の気配ない、モニカと合流次第キースの魔法で村ごと焼くか聖剣でふきとばすしかないのか……
「弱いが数が多い!」
クーンは素早い斬撃で、小さな虫を的確に倒している。
「操ってる奴を倒さねぇときり無いぞ!」
キースが虫を焼きながら言う、私も虫を倒しながら気配を探るが距離があるのか感知できない。
「!!」
不意に私達を光が包み込んだ、これはモニカの結界魔法、虫達は私達を認識出来ず周りを飛んでいる。
「生き残りを助けていて遅れました、取り敢えず結界を張ったので暫くは大丈夫です」
モニカが駆けつけ結界を張ってくれた。
生き残りを助けて居た、嘘は言ってないがおそらく信徒だけだろう。
モニカは勇者パーティーではあるが、庇護は信徒優先、それ以外は余裕があればと言う考えだ。
村が全滅しなかっただけでも喜ぶべきだろう。
「生き残りは避難させ結界を張りました、キースに村ごと焼き払ってもらい、魔王軍の仕業にしましょう……」
私はモニカの提案に絶句した、村を焼き払うのは仕方がない、魔王軍の仕業にするという部分にだ。
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