第5話思惑

日が暮れる前に村に付くことが出来た。

「飛び込みのお客さんが多いのに予約とは珍しいね?」

「ええ、信徒の方が気を使ってくれまして!」

宿の受付の方とモニカがやり取りをしている、彼女は人との付き合いが上手い。

私も勇者として対外的に問題がないよう教育はされたが、魔物を倒す方が得意なので彼女の存在は助かる。

「これが部屋の鍵です」

モニカはキースとクーンに鍵を渡す。

「ダイナ殿たちは同室か?」

「そうですが?」

「どちらか私と部屋を取り替えるかい?一人の方が色々と都合の良いこともあるだろう?」

クーンが提案してきた。

都合の良い事とは何の事だろうか?

私は通常の女性とは生き方が違うので理解出来なかった。

「大丈夫だよ、私もモニカもイビキとかないから寝れてる」

「ふむ、そういうことでは無いのだがな……モニカはどうだ?」 

「私は仕事上ダイナと打ち合わせがあるので、同室の方が都合がいいです」

監視でしょ?逃亡なんかしないからたまには一人で寝ればいいのにと思う。

「そうか……資金が厳しいのであれば、次から私はキースと同室でもかまわんよ」

「何言ってんだ?クーン冗談はよせよ」

「私は本気で言ってるぞ、二人部屋の方が合計で見れば安かろう?」

「ただの冒険者なら男女で同室でも問題は無いだろう?」

宿の゙状況よってはあるのだろし、付き合いは短いがキースは仲間に手を出すタイプではないと思うが、疲労が溜まった男性が本能から異性を求める傾向がある。

「お金の事は気にしないで!」

何故か、異性を求める傾向があると思った所で普段より大きな声で発言していた。

「良かったなキース!少しは可能性有りそうだぞ!」

クーンがキースの背中を笑いながら叩いた。

何の可能性だろう、私には分からなかったがモニカは察したようだ。

彼女は手袋に手を掛けている、怒りや不快だと思う時にする彼女の癖、不戦の誓いの白い手袋に手を掛けるのだ。



「モニカよ、勇者パーティーに参加し戦闘と金銭方面でのサポートをするのだ」

私は教団幹部そう命じられた、拒否することはできない。

勇者パーティー参加は名誉?とんでも無い話だ、ハイリスクで有りながらリターンが確定してない割りに合わない仕事だ。

「選考理由を教え下さい、何故私なのですか?」

帰って来た答がまた下らない、勇者を監視するのに女だと都合が良いとのことだ。

勇者ダイナがどの様な扱いを受けていたか、私より上のランクの神官は知っている。

彼等は勇者が逃亡、もしくは自分達の都合を悪い事を言わせないように監視しろと言うのだろう。

「お受けしますが……お願いがございます」

「何だ?」

「私の位を一つ上げて欲しいのです…」

神官の位が上がれば神殿での待遇と信者へ請求できる金額が変わる。

同じ回復呪文を掛けての治療でも、高位の神官の方が多くの謝礼を請求できる。

これは大きい断われない以上、このくらいは前払いで貰わないと割りに合わない。

調子に乗るなとの声もあったが、私は位を勝ち取る事ができた。

会計を任されたが、蓋を開けてみればかなりシビアな予算だった、ダイナに予算を増やすよう王国に言うが財政難の一点張りだ。

最悪、信徒の家を頼らなければならない。

そんな中予想に反して、有力候補を倒し想定外の二人が勇者パーティーに加わった。

剣士クーン、故郷を滅ぼされた復讐が主な動機共感は出来ないが一定の理解はできる。

自分の物を奪った者を消し去りたい、魔王軍を許さないよくある話だ。

だが、キースあの魔術師はダイナを護る事が目的だという。

勇者に助けられ感動し、憧れ力に成りたいと言う者はいるが殆どの者が口だけだ。

金や食料を提供すれるものですら少数だというのに、このキースと言う男は勇者パーティーにまで入り込んだ。

『ダイナは数年前に助けたと言っていたが…』

当時からそれなりの魔法が使えていたという話だが、たった数年で魔術協会のエリートを倒すまでの力を身につけるなど異常だと感じた。

奴の師匠は魔術協会を出入り禁止になった、曰く付き魔術師マーシャという女だった。

出入り禁止処分を受けている魔術師の推薦状を持った奴が何故試合に参加出来たのか?

奴の師匠が強者であるからだ、強すぎるから追跡出来るように除名処分ではなく、魔術協会への出入りの制限に留めたという話しだ。

それ程の人物の弟子、戦力としては期待できるが厄介なことに私と対立する可能性がある。

何故なら彼はダイナの生死が重要であり、私は勝利出来れば、彼女は死んでも良いと思っているからだ。









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